マイスターです。
プロスポーツチームと大学との連携事業。
昨日は、Jリーグの事例をご紹介いたしました。
Jリーグは、地域貢献や人材育成に対して、なかなか積極的だという印象があります。
では、日本では特に長い歴史を持つ、プロ野球ではどうでしょうか?
というわけで、試しにちょっと調べてみました。
■「受験生ページ:コラボレーション授業」(産業能率大学)
プロスポーツの公式戦を教材にスポーツビジネスの実際と運営を体験する、日本では全く新しいスタイルの授業がSANNOに誕生しました。それがスポーツ企画プロジェクト。2007年度から新設された、湘南シーレックス(横浜ベイスターズファームチーム)とのコラボレーション科目です。この科目は、プロスポーツビジネスの世界の代表である「プロ野球」にスポットをあて、球団経営の実際を理解し、公式戦(イースタンリーグ)の運営に直接携わり、試合の企画・運営について体験を通して理解します。この授業では、現役監督の田代監督も2回ほどプロ野球の歴史やファームチームの実情など球団マネジャーと共に詳しく解説してくれます。スポーツビジネスやイベント企画・運営に興味がある方なら、見逃せない授業になります。
これが「スポーツ企画プロジェクト」だ!
●監督、マネージャーから、チーム運営とそれぞれの役割を学ぶ
●公式戦でのイベント企画・運営を通して、プロ野球ビジネスの現状を学ぶ
●ゲームのイベント企画、集客方法、スケジュールなどを学生が立案
●8/30(土)の公式戦を学生が実際に運営する
(上記記事より)
まずはこちら。
気づかれたかも知れませんが、昨日ご紹介した産業能率大学は、Jリーグの湘南ベルマーレに加え、野球の湘南シーレックス(横浜ベイスターズのファームチーム)とも連携を行っています。やりますね。
球団経営陣の他、現役の監督も講義を行ってくれるという、充実した内容。
スポーツビジネスそのものです。
■「西武が立正大と連携」(nikkansports.com)
西武は23日、西口の母校でもある立正大の学生を受け入れ、埼玉県所沢市内の球団事務所でインターンシップ(就業体験)を行うと発表した。
期間は24日から9月28日までで、営業部の業務を実習する。球団は今後、埼玉県内にある大学と同様の連携を目指していく方針。
(上記記事より)
こちらはインターンシップ。
「営業部の業務を実習する」とありますね。
球団の営業部って、どんな業務を行っているのでしょうか。興味津々です。
「埼玉県内にある大学と同様の連携を目指していく方針」とのことですから、やはり地域性を重視しているということなのでしょう。
■「大産大とオリックス・バファローズが提携し授業」(iZa!)
大阪産業大学(大阪府大東市)は11日、プロ野球のオリックス・バファローズと業務提携し、今春開設した「スポーツ健康学科」で共同で授業を進めると発表した。授業では球団社員の講義や実際の業務を行い、学生に実践的なスポーツマネジメントを学ばせることが狙いという。
新設される授業は「フィールドスタディー」で、同学科の1年生全員が受講する予定。球場運営や集客マネジメントに関する講義のほか、京セラドーム大阪での公式戦やファンイベントなどで球団スタッフとして仕事に参加する。
また、平成21年度からはAO入試の成績優秀者や経済支援が必要な学生に対し、球団の運営会社「オリックス野球クラブ」から奨学金を与える制度も設けた。
大産大の大槻伸吾教授は「国内で最大のスポーツビジネスであるプロ野球の現場を経験させることで、社会に通用する学生を育てたい」と話し、オリックス野球クラブは「学生のアイデアを球団運営に生かしたい」としている。
(上記記事より)
オリックス・バファローズと大阪産業大学。
球団社員の講義に加え、球団スタッフとして実際の業務に携わるという点が大きな特徴。
しかもこの授業は、新設されたスポーツ健康学科の1年生全員が受講する予定だとのことです。おそらく、新学科の目玉なのでしょう。
実践的な内容を早いうちに経験すると、その後の学びも、意味合いがかなり変わってくるのではないかと思います。
自分のキャリア計画を立てるきっかけになる、ということまで考えると、これはかなり興味深い取り組みです。
こういった授業に加え、球団からの奨学金制度も新設。
ここまでやれば、学生にとって、球団が相当身近な存在になることでしょう。
うーむ、充実しています。
■「産学連携ボランティア」(群馬ダイヤモンドペガサス)
群馬県民球団は、群馬県内の大学機関と連携し、地域貢献事業・スポーツマネージメント・ スポーツ科学等における学術研究の開発と運営を行うことを目的に、今後、進めて参ります。
連携先大学機関(予定)上武大学・高崎経済大学他、県内大学機関。
<連携事例>
1. 地域貢献事業研究と実施:開催ホームゲームにおける各地域への活性化策の研究と実践。
-開催地域商店街とのタイアップによるイベント開催
2. スポーツマネジメント研究と実践:スポーツを通じての運営マネジメントの研究開発と実践。
-後援会組織づくり等を通じてのスポーツマネジメントの研究と実践
3. スポーツ科学研究:スポーツを科学的に分析し、運動能力向上のための取り組みにおける学術的研究。
-スポーツ選手における運動能力向上への分析・リハビリ等への活用研究と実践
4. ボランティア運営の研究と実践:開催ホームゲームにおけるボランティア組織づくりと実践。
-主体的にボランティア組織構築を研究し、より効率的な組織運営の実践による実体験活動促進
※以上のような産学連携を進行することによる実践的学術研究と開発は、大学機関における研究テーマとしても興味深い取り組みであり、 まさに地域を巻き込んだ活動がなされるものであります。
(上記リンクより)
こちらは、北陸を中心とする独立リーグ「BCリーグ」に所属する、群馬県民球団「群馬ダイヤモンドペガサス」。
さすが県民球団。
公式webサイトには、群馬県内の大学機関と連携を進めていくことが、かなり具体的な想定事例と共に謳われています。
地域密着の独立リーグだからこそ、地元の大学との連携にも力を入れたい、といったところでしょうか。
地元商店街との連携や、ボランティア組織の構築・運営など、独立リーグならではの連携もできそう。
様々な展開の可能性がありそうです。
このように、いくつかの球団が、大学との連携を進めていました。
ちなみに、こうして調べていく中で、大学関連のニュースの数が非常に多かったのが、千葉ロッテマリーンズ。
どうやら↓この方が、キーパーソンみたいです。
■「千葉ロッテマリーンズ ボビー・バレンタイン監督が,本学の客員教授に」(千葉大学)
■「千葉ロッテマリーンズ監督 ボビー・バレンタイン氏が経営情報学部の客員教授に就任しました」(城西国際大学)
■「千葉ロッテマリーンズ ボビー・バレンタイン監督の千葉商科大学政策情報学研究科・客員教授就任について」(千葉商科大学)
人気者のバレンタイン監督。
千葉県内の、3つの大学の客員教授を務められており、それぞれで特別講義などを行っています。
(ちなみにロッテが優勝したのは2005年で、3大学の客員教授就任は2006年。「優勝効果」の一環かもしれません)
■「政策情報学部 特別公開講義:『スポーツ・ビジネス』ボビー・バレンタイン客員教授」(千葉商科大学)
↑こちらでは、千葉商科大学で実際に行われた講義(通訳付き)の様子が、ストリーミング配信されています。
誰でもオンラインで視聴することが出来ますので、ご興味のある方はご覧ください。
■「ボビー・バレンタイン客員教授が千葉マリンスタジアムで授業」(城西国際大学)
↑千葉マリンスタジアムで授業が行われることも。
■「在学生の皆さんへ、バレンタイン客員教授から素敵なご案内」(城西国際大学)
↑希望する学生全員を、ロッテの試合に無料で招待するという荒技も繰り出しておられます。
バレンタイン監督、というか千葉ロッテマリーンズは、かなりサービス精神旺盛のようですね。
もともと千葉ロッテマリーンズは、ファンサービスにかなり力を入れている球団だと聞きますが、そんな姿勢が、こうした大学および学生との関係の作り方にも表れているのかも知れません。
またマリーンズは、バレンタイン監督の授業だけでなく、様々な形で大学と連携を行っています。
例えば、↓こちらは千葉大学との例。
■「千葉大学/千葉ロッテマリーンズ,千葉大学/ジェフユナイテッド市原・千葉,連携協力に関する協定を締結」(千葉大学)
■「千葉ロッテマリーンズ/ジェフユナイテッド市原・千葉との主な連携活動の実績」(千葉大学)
千葉大学では,大学憲章の理念のもと,行動規範として「地域と交流を深め,地域文化の形成に寄与する」ことを定めており,今回の千葉ロッテマリーンズ及びジェフユナイテッド市原・千葉と協定した連携内容は,まさにこれに沿うものであり,千葉大学としても発展性のある連携を行っていく所存です。また,千葉ロッテマリーンズ,ジェフユナイテッド市原・千葉はもとより,地域の皆様にとりましても実りある企画の実現を目指して参ります。
なお,現在検討している連携の主な内容は以下のとおりです。実現性の高いものを選んでスタートし,順次連携事業を広げる予定です。
◎千葉大学と千葉ロッテマリーンズとの連携の主な内容
1) 千葉マリンスタジアムの利活用
・ 学生や市民の方々を対象とした千葉マリンスタジアムでの授業,オープンカレッジ(公開講座),カルチャースクールなどの実施
2)連携教育
・ 学生が千葉ロッテマリーンズの運営・サポートに参加するインターンシップ制度
・ 千葉ロッテマリーンズ講師(スタッフ・監督・選手)による千葉大学での講義
・ 公開講座や講演会の開催
3) 研究
・ 千葉大学の教員・研究者がもつ専門知識・ノウハウを使ったゴミ減量やCO2排出削減などに関する企画立案や環境保全効果の評価
・ 千葉ロッテマリーンズが地域社会に与えたインパクト等の調査,今後の展開方向の検討への協力
(上記リンクより)
↓こちらは、選手が大学に関わっている例。こんなところでも、球団との結びつきが生きています。
■「千葉ロッテマリーンズ ズレータ選手が附属病院小児病棟に来訪されました」(千葉大学)
また、千葉商科大学とのプロジェクトでは、球団の関係者が球団経営やスタジアム運営、メディア戦略、地域連携などを講義するそうです。
■「バレンタイン監督『スポーツ・ビジネス』プロジェクト」(千葉商科大学)
プロ野球球団・千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督を客員教授に迎え、「プロジェクト(スポーツ・ビジネス)」を開講します。新しい経営のスタイルとしてスポーツ・ビジネスを捉え、ボビー・バレンタイン監督の選手育成・選手起用方法やリーダーシップ・コミュニケーションの取り方などを通じて、組織、人材育成の実践的手法を会得します。また、マリーンズ球団関係者による球団経営、スタジアム運営、メディア戦略、地域連携などについて、新しい「ビジネスモデル」の観点から学ぶことが出来ます。
(上記記事より)
バレンタイン監督という名前の打ち出しになっていますが、内容的には、球団が全面的に協力するような形のようですね。
城西国際大学とでは、例えば↓こんな形で学生が関わったりしています。
■「千葉ロッテマリーンズ 幕張ベイタウン 優勝パレード」(NPO幕張メディアアソシェイツ 城西国際大学メディア学部)
いかがでしょうか。
これまでご紹介しただけでも、マイスターは、ロッテは様々な形でかなり積極的に大学や学生との連携を行っている球団だという印象を受けるのですが、まだまだあります。
千葉ロッテマリーンズは、バレンタイン監督が客員教授を務める3つの大学以外とも、様々な形でつながっているのです。アグレッシブですね。
たとえば帝京大学では、「スポーツ産業構造論」という授業で、マリーンズの事業部長が講義。
↓帝京大学教授のブログで内容が少し紹介されています。
■「千葉ロッテの改革」(大坪正則 帝京大学経済学部教授のスポーツ経営最前線)
「スポーツ産業構造論」は火曜日3限の授業です。後期はリーグ、球団の中枢に位置する人たちの権限や責任について教えると同時に、隔週、実例研究としてゲストに講義をしてもらっています。今日は千葉ロッテマリーンズの荒木重雄事業部長に来てもらいました。
千葉ロッテは、2004年のストライキ騒動の直前、幻となりましたが、2番目のパリーグ2球団の合併・統合対象球団との噂になったほど、当時大幅な赤字を垂れ流していました
ロッテの本業に大きな躍進が望めない現状では、千葉ロッテが球団として生き残るためには赤字幅縮小、更には、赤字解消が課題でした。荒木さんはそんな状況下の2005年1月末、事業部長に就任しました。
荒木さんを待っていたのは監督のボビー・バレンタインでした。荒木さんはバレンタインから「ファンサービスとは何か」を長時間に亘り、徹底的に叩き込まれました。それが、現在、千葉ロッテが実施しているファンサービスの原点だそうです。
(略)千葉ロッテで特筆すべきことは、この3年間で40人の新規採用を実施していることです。このことは、過去は手を付けていない仕事がたくさんあったことを意味します。もちろん、マリーンスタジアムの指定管理者になって球団と球場の一体化経営を進めていますので、ある程度の人員増は当然ですが、球団と球場の仕事の重複部分を削除し、その分人員削減を行った上での新規採用ですから驚きです。
(上記記事より)
スポーツビジネスを学ぶ学生にとっては、うってつけの事例ですね。
とても面白そうです。
(何だか、大学経営にも通じるものがありそう?)
↓ちなみに帝京大学は、(おそらくスポンサーとして)ロッテの試合の提供も行っています。
■「千葉ロッテマリーンズ・帝京大学マッチデーが開催されました!(8月21日)」(帝京大学)
……と、キリがないのでこのくらいで。
千葉ロッテマリーンズは特に、こういった事業に力を入れている球団だろうと思います。
今回は調べきれませんでしたが、あまり力を入れていない球団もあるかもしれません。
(実際、こうした取り組みの話題が全然ない球団もありました……)
このように差はありますが、Jリーグに負けず劣らず、様々な形で大学との連携を進めようとしている球団もある、ということはわかりました。
大学でスポーツビジネスを学びたい方は、野球やサッカーでプロチームと連携している大学のことを色々と調べてみると良いかもしれませんね。
そして、プロチームと連携したい大学関係者の皆様は、とりあえずロッテに相談まずは地元のチームに声をかけてみてください。
地域や大学を、ひいては日本のスポーツを活性化させるような、素敵な連携の形が生まれることを期待します。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
いつも拝見しています。
大学とスポーツ。興味のある2つのテ-マは特に
楽しく読むことができました。
関東のプロ野球がこんなに大学と関わっているとは
知りませんでした。でもサッカー界のほうが積極的
ですね。JFLや更に下の地域リーグまで大学と
提携しているチームがあるのですから。
改めてスポーツには宣伝効果があるのがわかり
ます。ある大学が某スタジアムに広告看板を
出したところすごい反響で、それ以降大学の看板
が各スタジアムに掛かるようになったとか。
脱線しました。今後も興味深い話題をお願い
します。