法科大学院の真価が問われる 新司法試験がスタート

マイスターです。

社会からの注目度も高い法科大学院。
当初、7割程度と見込まれていた「新司法試験」の合格率が予想以上に低いこともあり、「どの法科大学院に行けば受かるのか!?」ということが、関心の的になっています。
ある意味、専門職大学院のあり方としては、正しいと言えるかも知れません。

本ブログでも、第一回の新司法試験の合格結果をご紹介しました。

(過去の関連記事)
・法科大学院 新司法試験に合格した学生は何パーセント?(2006年09月25日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50247185.html

今年は、さらにこの試験の結果が注目を集めることになると思います。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「新司法試験が本格始動 『未修者』3年コース組が初受験」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200705150037.html
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法科大学院(ロースクール)の修了生を対象にした今年の「新司法試験」が15日始まり、法務省によると4607人(速報値)が受験した。新試験の実施は2回目だが、今年は初めて、大学院に入る前に法学を学んだ経験がなかった「法学未修者コース」(3年制)の修了者に受験が認められた。合格者は1800~2200人、合格率は39~47%程度となる見込みで、48%だった昨年を上回る難関になりそうだ。

1回目の昨年は、2年制の「既修者コース」の修了者だけが受験できた。新司法試験は、幅広い分野の人材を集めて法律家を増やそうとする司法制度改革の「目玉」。未修者コースには社会人経験者も多数含まれることから、今年の試験は改革の真価が問われる「試金石」ともなる。

(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

というわけで、「法科大学院の教育成果」が本当に明らかになるのは、法学未修者コースの学生が含まれる今回だと言われているのです。

例えば旧司法試験で合格者を多く出していた早稲田大学。早稲田の法科大学院は、もともと未修者コースを中心に構成されていますので、昨年度は受験者も少なく、あまり話題にはのぼりませんでした。今回から多くの学生が受験してくると思われますので、一体どのような結果になるか、おそらくメディア関係者や法科大学院受験生が注目しているはずです。

メディアは「合格者数」を報道しがちですが、個人的には「合格率」の方にもぜひ、ご注目いただきたいと思います。前回の新司法試験では、合格者数では私大の名前がいくつか挙がりましたが、合格率で見たら国立大学が上位という結果が出ていました。
社会に出たとき同窓生が多いというのも大きなメリットですし、確実な合格をモノにするのなら、少数精鋭で合格率の高い法科大学院に行くという選択肢もあります。考え方次第ですね。

そしてもう一点、注目すべきポイントが。
昨年度、残念ながら合格者ゼロという法科大学院がいくつかありました。今回、巻き返せなければ、市場からの信用を失いかねません。
「司法試験の合格率」というのは、一面的ではありますがわかりやすい指標ですから、合格者がずっと出ないようなら、淘汰もあり得るでしょう。

もともと法科大学院は当初の予想を大きく上回る数、設立されています(それが、「7割程度」と言われていた新司法試験の合格率を下げる最大の原因になっています)。
法科大学院はある程度淘汰された方がいい、という考え方は行政を含め、世間にあるのではないでしょうか。
厳しいようですが、ここは勝負のときです。

……ただ、↓こういう報道も出ているのが、個人的には少々気がかりです。

■「新司法試験、13%受験辞退 法科大学院が指導か」(河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/news/2007/05/2007051501000501.htm

法科大学院修了者を対象に15日始まった2回目の新司法試験は、受験辞退者が受験予定者の13%に当たる673人に上り、前回の34人(1・6%)に比べて大幅に増加した。
法務省は「受験の回数制限(5年で3回)があるため、見送った学生が多かったのでは」としているが、今回の結果次第では存続が危うい大学院が出る可能性もあり、法曹関係者は「合格率アップを目指す大学院側が実力不足の学生に辞退を指導した恐れがある」と危惧(きぐ)している。

(略)前回合格者がゼロだった法科大学院の教授は「そのために教育しているわけではないが、合格率は分かりやすい指標。経営のためには、上がるに越したことはない」と本音を漏らした。

(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

あくまでも「こう指導した可能性がある」というだけの話ですが、ちょっと気になります。
「受験回数制限」のことを考え、受験生の身を案じて指導したのならいいのですが、学校側の経営事情を優先し、組織的に「確実な学生しか受けさせない。チャレンジはさせない」という指導したところがあったのだととしたら、ちょっと問題です。
「3回までは受験できる」わけですから、自分の実力を知るためにも、まず一度挑戦してみたいという学生もいるはず。受験するかどうかの責任はあくまでも学生本人に託してあげてください。

というわけで、どうなるでしょうか新司法試験。
「法学未修」から法曹への道。社会的にも大きなテーマです。
結果がどうなるか、今から固唾をのんで見守りたいと思います。

マイスターでした。

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(参考リンク)
■「新司法試験4607人が受験、合格率39~47%に」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070515ic23.htm
■「法科大学院入学者、社会人の割合は3年連続低下」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070516ic22.htm

(その他、過去の関連記事)
・「三振博士」とは?(2006年01月10日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50131315.html
・調書の講義使用は『不可』 検察庁と法科大学院が対立(2006年11月07日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50261219.html
弁護士のタマゴ達、就職先が見つからず?(2007年02月10日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50288823.html
ニュースクリップ[-1/21]「司法修習卒業試験:落第者向けの追試を廃止 最高裁」ほか(2007年01月21日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50283075.html

1 個のコメント

  • マイスターさんのいわれるとおり、まさに法科大学院の真価が問われるわけですが、今回の新司法試験問題漏洩疑惑については、どう考えればいいのでしょうか。事をあらだてないほうがいいのか、あるいは法事国家の危機と捉えなくてはならぬのか。責任はだれにどの程度まであるのか、当事者ならずとも、こころ暗澹です マイスターのお考えはどうですか。