プロスポーツと大学(1) Jリーグと大学の連携

マイスターです。

ここ数年、「スポーツ」の文字が入る学部が増えています。
スポーツ選手を養成するだけでなく、スポーツを健康マネジメントの面やビジネスの面から、科学としてとらえ、研究するということを目的とする学部ですね。

確かに今後、スポーツが社会の中で果たす役割は変わってくるでしょうし、また変えていく必要があるように思われます。単なるスポーツ好きというだけではなく、多角的にスポーツを知り、様々な形で関わっていける人材は必要になってくるでしょう。

そして、受験生にとっても、「スポーツ」は極めてわかりやすい切り口。
スポーツが好きだという点をきっかけに、「将来は、スポーツに関する仕事に就きたい」と考える受験生は、少なくありません。

そんなわけで、大学がこういった学部に着目するのは、よくわかります。

さて、そんな大学側の思惑に結びつく形で、最近目立っている動きがあります。

【今日の大学関連ニュース】
■「広がるJリーグのクラブと大学の産学協同」(MSN産経ニュース)

企業が大学と提携し、商品開発などのビジネスに結びつける「産学協同」が活発化する中、Jリーグのクラブが大学と業務提携する動きが広がっている。すでに全体の約3分の2のクラブが地域の大学と連携。共同でビジネスモデルを構築したり、J側が監督を派遣し、見返りに通訳らボランティアらのスタッフを出してもらう。「地域密着」を理念に掲げるJリーグ側と、成長著しいスポーツビジネスを新たな目玉にしたい大学側の経営戦略が、一致している形で、今後も広がりを見せそうだ。
(上記記事より)

というわけで、「全体の約3分の2のクラブが地域の大学と連携」なんて状態になっているのですね。知りませんでした。
それもどうやら、様々な形で連携している模様です。
これは面白そう!

記事では、湘南ベルマーレと産業能率大学の連携が、例の一つとして紹介されています。

J2湘南のユニホームの胸部分には「SANNO」のロゴマーク。湘南は2004年1月、Jクラブの中で初めて産業能率大(本部・東京都世田谷区)と業務提携を行った。授業を共同開発し、クラブスタッフが講師として参加している。他にも湘南側がサッカー部の監督・コーチを派遣し、部の強化とともに、トップ昇格できなかったユース選手の受け皿としても活用している。
「スポーツの世界で働きたいという人が増え出した。ユニホームやスタジアムでの校名露出以外に、スポンサーの対価としてスポーツビジネスに関しウチが大学の授業をやったら面白いのではと思った」と湘南の真壁潔社長は“狙い”を口にする。
産能大も、湘南の申し出は“渡りに舟”だった。情報マネジメント学部の宮内ミナミ学部長は「クラブの資金繰りや組織運営などは大学が教える経営課題と同じ。スポーツはわかりやすく、学生に受け入れられやすい」と話す。ビジネスを学ぶのに、スポーツは打って付けの“生きた教材”というわけだ。
少子化の影響で定員割れの大学が続出する中、産能大は今年度も入学志願者が増えたという。「提携は学生へのアピールになっている」と宮内部長。Jクラブの明るいイメージが、大学のブランド向上にもひと役買っている。
(上記記事より)

産能大は現在、湘南ベルマーレのオフィシャルスポンサー。
そして、スポーツマネジメントを学ぶコースや研究所を学内に持っている大学でもあります。

■「オフィシャル・クラブスポンサー」(湘南ベルマーレ)
■「情報マネジメント学部の教育カリキュラム ≪スポーツマネジメントコース≫」(産業能率大学)
■「スポーツマネジメント研究所 概要」(産業能率大学)

正確には、以前から各種の講座やインターンシップなどで湘南ベルマーレと連携を行っており、そうした活動の結果、こうした「スポーツマネジメントコース」や、スポーツマネジメント研究所が設立されるに至った、ということのようですね。
試しに共同でいくつかのプロジェクトを行ってみた結果、双方ともに手応えを感じ、本格的な連携に乗り出した……ということでしょうか。

■「お知らせ:スポーツマネジメント研究所設立記者発表会」(産業能率大学)
■「産業能率大学-湘南ベルマーレ提携強化記者会見」(J’s GOAL)

同大と湘南ベルマーレの連携事業については、↓こちらのコンテンツにまとめられています。

■「湘南ベルマーレ応援サイト」(産業能率大学)

2004年1月に行われた調印式には、多くの報道関係者が出席し、大きな注目を集めました。その後、「スポーツビジネス実践講座」や、学生が湘南ベルマーレのフロント業務を体験する「スポーツビジネス・インターンシップ」、ホームゲームを実習の場とする「スポーツ・マーケティング」の開講など、湘南ベルマーレとの提携によって生まれた数々の取り組みを実現させてきました。さらに、2006年10月には、本学第2グラウンドを共同で使用することを軸として、提携関係をより強化しました。
(「湘南ベルマーレとのパートナーシップ」(産業能率大学)より)

授業やインターンシップだけでも、多様な取り組みが行われています。

さらにスポンサーとして、湘南ベルマーレのユニフォームに大学名を入れたり、「SANNO Special Day」といった形での試合を行ったりと、チームを通じての大学広報も積極的に展開しています。

冒頭の記事によると、こういった取り組みもあって、産能大の入学志望者は増えているとのこと。
実際、大学もこの連携を、受験生に対して様々な場所でアピールしています。

■「受験生ページ:コラボレーション授業」(産業能率大学)
■「産業能率大学:現代マネジメント学科スポーツマネジメントコース」(リクルート進学ネット)

このように、産能大と湘南ベルマーレだけでも、このように多様な取り組みを行っています。
他、「地域貢献」を打ち出したい国立大学との連携も進んでいます。

国立大にも広がっている。埼玉大は04年末に浦和・大宮と、茨城大は05年に鹿島と協定を結んだ。その背景には04年の国立大の独立行政法人化がある。「国費で研究するだけではなく、地域貢献も国立大の使命になった」(埼玉大事務局)。実績次第では国からの運営交付金が削られる。生き残りへ独自の道を模索する中で、地域密着を地でいくJクラブは、魅力的な相手だった。
提携の形は多岐にわたる。インターンシップ受け入れや講師派遣が代表例だが、京都はユース選手を立命館大の系列高校に通わせ、川崎は田園調布学園大から保育士を派遣してもらって主催試合時に託児室を開設。浦和は昨季、アジア・チャンピオンズリーグの遠征時に埼玉大の留学生を通訳として帯同してもらった。
■「広がるJリーグのクラブと大学の産学協同」(MSN産経ニュース)記事より)

試合運営のためのスタッフ派遣など、各大学・チームで多様な試みが行われているようです。

■ちょっと画期的な、早稲田大学の推薦制度

↑以前、Jリーグと早稲田大学とによる推薦入学制度を本ブログで紹介させていただきました。
このときにもそう思ったのですが、Jリーグは地域密着の運営であるとか、スポーツの意義を社会に広めることであるとか、スポーツを通じての人材育成といったことに対して、積極的ですね。

こういった取り組みを行うにあたり、大学は、確かに最高のパートナーになれるかもしれません。
個人的には、各大学に、積極的にこういった連携に乗り出してみて欲しいと思います。

スポーツを学べる大学はもちろんですが、上記のように保育士や通訳の派遣という事例もあるようですから、どんな大学でも、Jリーグのクラブチームと連携を行える可能性はあります。
プロスポーツという事業を舞台に、一体何ができるか、検討してみてください。

互いにメリットの大きい大学とクラブの連携は強まるばかり。「当初は若いファン層獲得という狙いもあったが、1番は熱意のある地域の学生を就職させてやること。そうしないとスポーツ界もよくならない」と真壁社長。両者は単なる宣伝目的以上のよきパートナーとして前進している。
■「広がるJリーグのクラブと大学の産学協同」(MSN産経ニュース)記事より)

↑このように、意欲のある学生をスタッフとして採用するという点でも、各クラブチームは大学に対して熱い視線を送っているようですよ。

以上、Jリーグの取り組みをご紹介しました。

ところで、じゃあ他のスポーツはどうなのでしょう?
例えばプロ野球チームは、大学と連携しているのかな?

……ということをご紹介しようと思ったら、ちょっと長くなってきましたので、続きは明日にします。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • こんにちは。いつも有益な記事をありがとうございます。
    早稲田大学の「トップスポーツビジネスの最前線」という講座の講義録が刊行されています(講談社BIZ、既刊4冊)。
    スポーツビジネスに関わる協会・経営者・メディア・そして選手による講義ですが、すごく面白いです。こんなすばらしい生講義を受けることができる学生さんがうらやましいですね。