「修士(政策・メディア)」という学位を持つ、マイスターです。
英語表記では、
Master of Media and Governance [M.M.G.]
になるらしいです。
ただ、プロフィール欄に[M.M.G.]とだけ書いても、どのような学位か理解してもらえることは、まずないでしょう。
そう、この学位を発行しているのは、世界で一箇所だけなのです。
従って、知名度はほとんどゼロ。略称はもとより、「Master of Media and Governance」とフルに書いても、どんな学問を修めたのかは分かってもらえないと思われます。
(日本語でもよくわかりませんが)
日本では、学部や大学院を新設する際に、あまり耳なじみのないオンリーワンな名称をつけることが流行しています。各大学とも、パンフレットやwebサイトで「新しい学問分野が学べる」と謳っています。
その結果……このように、「オンリーワンな学位」が増殖しています。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「学士号急増580種 文科省、ルール化検討へ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200711030227.html
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「カルチュラル・マネジメント学」「情報アーキテクチャ学」「人間環境マネジメント」――。いずれも大学の学部を卒業すると得られる学士号の専攻名だ。その数は少なくとも580で、6割は全国で一つしかない。文部科学相の諮問機関、中央教育審議会などは「名前から何を学んだのか分かりにくく問題だ」などと指摘。文科省は専攻名がこれ以上むやみに増えないよう一定のルールを設ける検討を始めた。
専攻名が急増したきっかけは、91年の大学設置基準の大綱化だ。文学士や法学士など29に限られていた専攻名の縛りがなくなった。折しも少子化が進み、各大学は受験生を集めようと新しい学部や学科を次々と設置。カタカナを使った長い名前も多く出現し、それを専攻名に使うケースが増えた。
(略)しかし、最近、こうした専攻名を問題視する意見が目立ってきた。大学評価・学位授与機構の濱中義隆准教授は「各大学が特色を出そうと工夫するのはいいが、社会や受験生がそこで何を学べるのか分からない専攻名は問題だ」と話す。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
この問題、高等教区の関係者がしばしば指摘することなのですが、結果的にはまったく状況が変わらないまま今に至っています。
■「公私立大学の学部等の設置届出状況」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ninka/gakubu.htm
文部科学省には、カタカナのものを含め様々な名称の学部・学科設置申請が届けられています。
学科名がちょっと変わっていても、実際に授与される学位は「学士(工学)」だったり、「学士(経営学)」だったりすることもあるでしょう。
その一方で、学部名称をそのまま学位の名前にするところも、少なくないのですね。
その結果、現在与えられる学位は580種類に拡大。うち6割は「全国で一つしかない」という状況になりました。
全国で一つしかない学位なのだから、当然、持っている人、知っている人はほとんどいません。
「オンリーワン学位」には、その学部・学科をつくった関係者達の「これは新しい学問なんだ。それを修めた誇りを持って欲しい」という熱い想いが秘められています。
しかし「一体どんな学問を修めたんだか、世の中のほとんどの人にわかってもらえない」というのは非常に致命的な問題だと思います。
学位というのはもともと、その人がどのような学問を修めたか――つまり、どのような能力を持っているか――を証明する存在であるはず。
ですから、学位がその証明の役割を成していないのだとしたら、おかしな話です。
マイスターが思うに、日本の社会では、「学位」というものがまだ、それほど重要と思われていないのかもしれません。学位の種類にはあまり意味を要求されていない、という気がします。
そういえば自分自身、実に珍しい学位を持っている身ですが、学位のことに言及されたことはほとんどありません。
新しい学問分野を生み出すことは、悪いことではないと思います。マイスターも、「スペシャルなことを学ぼう」という意欲にあふれた学部学科名称は、嫌いではありません。というか、むしろ好きです。
しかし例えば海外に行って、自分のバックグラウンドを説明するような場面では、「どんな学位を持っているか」という点が、それなりに重要になってくることもあるのではないでしょうか。
そう考えると、国際的に通用する学位名称であるかどうかは、それなりに重要なんじゃないかな、なんて思ったりもします。
実際のところ、どうなのでしょうか。「変わった学位」の説明に苦労された方や、「意外に分かってもらえた」「あまり関係なかった」といった方がいらしたら、ぜひ体験談をお寄せください。
(しかし、ビジネス系の修士号の場合などは、日本語名称はバラバラなのに、英語名称は必ずと言っていいほど「MBA」だったりしますから、学位名称がまったく軽んじられているというわけでもないんですよね。うーむ)
いずれにしても、今のままですと、「オンリーワン学位」はますます増えそうです。
冒頭の記事には
中教審は現在、全国唯一の専攻名を使う場合は、設置申請の際に既存の専攻名との違いを大学に説明させることなどを、文科省の役割に位置づけるよう提言することを目指して議論している。
とあります。
確かに、ある程度のルール作りは必要かもしれません。
ただ、色々書きましたが、こういった問題は考え出すとキリがありません。
変わった名称の学部・学科では、ひとつひとつの授業の名称も、やはり変わっていることが多いはずです。学部学科の名称を背負った「○○学概論」から始まり、独自の学問体系を形成する授業が並びます。
その結果、持っている「単位」も、やはりわかりにくくなりがちです。海外の大学に編入しようとした場合、単位認定などに困ることがあるかも知れません。
でも、そこまで考え出すと、何もできなくなってしまいますよね。
そもそも日本の大学と、例えばアメリカの大学とでは、大学教育の考え方がそもそも違っていますから、意識し過ぎてもしょうがないような気もします。
どこまで世の中の動向を意識し、どこまでオリジナリティを出すか。
結局のところ、最終的にはそれぞれの大学の考え方次第なのでしょう。
ただ、学部名称を考えるときには、どのような学位を出し、その学位が将来どのような価値を持つかという点も、慎重に検討すべきだろうと思います。受験生はあまり気にしない点かもしれませんが、だからこそ、大学関係者がちゃんと、先のことを考えて設定すべきところでもあると思いますし。
以上、マイスターでした。
マイスターさん,はじめまして.
“環境情報学士” (in 遠藤)を持つ者です.
今は Master of Engineering を取るべく米国で学生をやり直しています. わけあってまずは学部に編入したのですが編入手続きにはとても苦労しました + しているので書き込みします. 今居る学校は地方の公立大で, US News に rank されるかされないか, くらいのレベルの学校なので, Top校の状況は分かりませんが参考までに. 長いので2つに分けて投稿します.
学位の英名は “Environmental Information Studies” ですが, まったく理解されないので仕方なく, 多く履修した授業 + 卒業後の仕事の内容から, 専攻は “情報科学” と口頭では言うことにしています. これは学問名としては一般名称なので機能しています. 厳密に言ったら詐称にあたるのかも知れませんが, 聞かれる機会も結構あるし, 仕方ありません.
単位を認可してもらうのが大変です. 日本で取った 128単位 のうちどうやら 1/3 程度しか認められなそう, つまり sophomore か, 良くて junior の前半程度になりそうです. 理由は現在の専攻であるソフトウェア工学として使える授業数が少ないからです. 要因としては次の 4つ挙げられます. 1)SFC は自分の専攻以外の授業も多く卒業単位に認められる仕組でしたが, 私はその恩恵をフル活用して様々な分野の授業を履修した. 2)そしてそもそも専攻という概念があまり強くなかったので専攻の必修単位数が少なかった. 3) SFC の理工系の授業はどちらかというと科学系が多く, 特に分かり易く工学系な授業が無かった. ***工学, と名前に付いたり, 開発サイクルやプロジェクトマネジメントに関連するような授業が少ない(無い). 4)低学年の基礎科目からいきなり高学年の専門科目に跳んで, 中間に位置する授業が抜けている印象がある.
1通目終わり
(2通目です)
また, SFC の単位数は基本的には一授業あたり 2 でしたが, こちらでは 3 か 4 が多いので, 条件付認可になり, こちらの担当授業教員と面談して OK が出れば認可される, ということが多いです. したがって面談の前にその授業内容を勉強し直しです.
ちなみに業務・研究活動経験は一切反映されませんが, これは大学側からしたら当然かも知れませんね. 大学のモノサシでそれらを計る方法が無いし, 経験を認めてしまったら長年働いた人はフリーパスで学位が取れてしまいかねないので.
さて, 興奮して細かく書きすぎたのと^^;, SFC 集中攻撃になってしまったきらいもありますが, ここまで批判的とも取れる書き方をしておきながら私個人としては多様な授業の履修を可能にしている方式には賛成です. 20台そこそこで興味を絞ることは私個人はできなかった. 私は上述のように今苦労していますがこれは私の選択した米国大学への編入という道がたまたまそうなだけで, 多くの卒業生が踏むステップでは無いでしょうし. そして肝心の本題である学位の名称は, 一般的に認識され得る名称に集約すべきなんじゃないかなと思っています. 私のように自分で解釈して名付けるのは不都合も少なく無さそうだし, 何より学部で学ぶのは専門家から見れば基礎的な内容なので, 長い名前や変わった名前は大げさに映ります.
長文失礼しました.