マイスターです。
日曜日になりましたので、恒例のニュースクリップをお届けします。
企業の研究者、増加。
■「企業の研究開発費、研究開発者とも増加の見通し」(サイエンスポータル編集ニュース)
http://scienceportal.jp/news/daily/0711/0711011.html
企業の今年度の研究開発費が増加傾向にあることが、文部科学省の調査で明らかになった。研究開発者数も前年に比べ増加傾向が強まっている。
(略)研究開発費のうち、社内開発費を「増やす見込み」と回答した企業は、42.2%と前年の39.2%より増えた。「減少の見込み」も8.8%と前年 (9.7%)より減り、「増加傾向が強まっている」ことを示している。外部支出研究開発費は「増やす見込み」が26.1%で、前年(26.6%)を下回った。しかし、「減少の見込み」も6.5%と前年(8.0%)を下回っており、DI値(好転から悪化を差し引いた全体状況を見る値)は前年を上回り、「増加傾向が続いている」ことを示した。
研究開発者数は、37.4%の企業が「増やす見込み」と答えており、前年(36.1%)より増えた。「減少の見込み」と答えた企業も5.1%と前年(5.7%)より減っており、社内開発費とともに「増加傾向が強まっている」ことを示した。
これまでの同じ調査結果によると、企業の研究開発費、研究開発者はいずれも2001〜02年度以降、増加傾向を示している。
調査は、学士、修士、博士課程修了者ごとに研究開発者としての資質を質問しているが、いずれも「ほぼ期待通り」が「期待を下回る」の倍以上となっている。
(上記記事より)
企業の研究開発費、および研究開発者数が前年に比べ増加傾向だそうです。
その他の数字も、今後伸びる傾向にありそう。
そして、学士、修士、博士課程修了者ともに、研究開発者としての資質は「ほぼ期待通り」が「期待を下回る」の倍以上。
日本の研究者育成、悪くないじゃないか、と思える記事です。
↓こちらの報道も合わせてご覧ください。
企業の研究者、期待はずれ!?
■「企業の研究職社員、学士の3割期待外れ…文科省調査」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071030i304.htm
研究職で採用した社員が「期待を上回った」と考える企業は1〜2%程度にとどまっていることが、文部科学省の調査でわかった。
「期待はずれだった」とする企業の割合も、大学の学部卒者(学士)で3割にのぼるなど、企業に利益をもたらす新規事業や新製品開発を担う中心的な人材として採用されながら、期待に沿えない企業研究者が相当数いることが浮き彫りになった。
(略)調査の結果、「期待を上回った」と答えた企業の割合は学士で1%、修士1・4%、博士2・6%、ポスドク2・2%にとどまった。
一方、「期待はずれ」とした企業の割合は、学士で最も多く31%にのぼった。修士では26%、博士15%、ポスドク8%で、学歴が上がるほど低くなった。
こうした結果について、企業側は「専門外に弱く、独創性がない」「社会での経験に乏しく、企業が社会から求められている事柄に無関心」などの理由をあげている。
(上記記事より)
研究職で採用した社員が、「期待はずれだった」とする企業の割合は、学士で31%、修士で26%、博士で15%いるそうです。
「専門外に弱く、独創性がない」「社会での経験に乏しく、企業が社会から求められている事柄に無関心」といった点が、理由だそうです。
日本の研究者育成、ダメダメじゃないか、と思える記事です。
上記の二点の報道、実は同じ文科省の調査結果をもとに書かれています。
■「民間企業の研究活動に関する調査報告(平成18年度)」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/10/07102312.htm
それぞれの記者の方は、おなじデータを見たはずなのに、書かれた記事のトーンは180度違いますよね。
記事の書き出しから、方向が逆を向いています。
どんな分野の報道でも、こうしたことは起こり得るでしょう。
ただ科学や教育政策に関わるニュースでは、記者の方が数字を単純になぞっただけで記事を書いていることも多いような気がします。
リンク元の記事全文を比較していただきたいのですが、上記の2本の記事で言えば、個人的には(科学技術系ニュースサイトだけあって)サイエンスポータル編集ニュースのものの方が、バランスが取れた書かれ方ではないかと思いました。
みなさんは、どう感じられましたか?
(というわけで本日は趣向を変え、違うメディアの同じニュースを並べてみました)
意外なコラボ、だが……。
■「日銀と東京芸大 地下金庫で芸術の秋」(FujiSankei Business i.)
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200711040005a.nwc
東京・日本橋の日本銀行本店旧館で3日、東京芸術大学との共同企画による美術展が始まった。「日銀ウォーキングミュージアム KINCO 〜日本銀行×東京藝術大学 地下金庫展〜」と銘打ち、日銀の地下金庫などを会場に、東京芸大の大学院生ら約40人の現代アート作品と音響作品を展示している。
日銀本店旧館は明治29(1896)年に建てられ、国の重要文化財にも指定されている石積みれんが造りの建物。地下金庫の扉は厚さ900ミリ、重さ25トンあり、その内側に広がる空間に数々の現代アート作品が並ぶ。
入場は、はがき申し込みによる予約制(先着順)。展示は16日まで行われる。
(上記記事より)
<東京芸術大学 × 日本銀行>のコラボレーションです。詳細は↓こちら。
■「KINCO |日本銀行×東京芸術大学 地下金庫展」
http://www.kinco.info/
■「『日銀ウォーキングミュージアム KINCO 〜日本銀行×東京藝術大学 地下金庫展〜』の詳細および申し込み方法について」
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/un0709b.htm
内容は、非常に興味深いです。
……が、すべて「入場予約制」、しかもハガキしか受け付けないというあたり、参加のハードルを高くしているような気もします。
(せめてネットで応募させて欲しいと思うのはマイスターだけ?)
これでは、参加者は相当絞られそう。さすが「ザ・お堅い公的機関」の日銀です。
せっかく芸大と連携してのアートな取り組みなのに、もったいないですね。
海外の名門大学に、日本の大学の研究室。
■「東大がエール大に研究室 日本初、人材交流狙う」(京都新聞)
http://kyoto-np.jp/article.php?mid=P2007110300056&genre=G1&area=Z10
東大(東京都文京区)は2日、ブッシュ米大統領やヒラリー・クリントン上院議員らを輩出した米名門エール大(コネティカット州ニューヘブン)に日本学など人文学・社会科学の研究室を正式に開設した。
日本の大学が外国の主要大に研究室を設置するのは初めて。東大は今後、同研究室を拠点に人材交流の拡大などを狙う。。
(上記記事より)
「日本の大学が外国の主要大に研究室を設置するのは初めて」なのですね。
昨今、欧米の大学では中国、インドなどが注目され、それに比べると日本に関する研究者や講座はいまひとつ元気がないと聞きいます。
(過去の関連記事)
・日本財団 英国12大学に、現代日本に関する講師のポストを設置(2007年10月05日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50348386.html
海外の主要大学に研究室を設置すれば、現地の学生や研究者との接点は増えるでしょう。
その結果、日本に対する関心が多少は育まれる……と思うのですが、さて、どのような成果が上がるでしょうか。
北東アジア各国の地域発展を目指す。
■「大学ネット構築へ 5カ国12大学協議会結成に合意 」(日本海新聞)
http://www.nnn.co.jp/news/071031/20071031003.html
北東アジア地方政府サミットの関連事業として二十九日から鳥取市尚徳町の県民文化会館で始まった「北東アジア地域大学教授協議会」は三十日、五カ国の十二大学が協議会の正式結成に合意し、北東アジア各国の地域発展を目指す大学間ネットワークが新たな一歩を踏み出した。
協議会には韓国江原道、中国吉林省、ロシア沿海地方、モンゴル中央県の九大学と県内の鳥取大学、鳥取環境大学、鳥取短期大学が参加。大学間ネットワークの形成を宣言する結成宣言に、各大学の代表者が署名した。
結成宣言文では、環境と資源、観光と交流など重点的に取り組む五領域を挙げ、研究教育の相互連携の推進を掲げている。
鳥取大学の能勢隆之学長は「地方大学の存在意義を世界に示すことができる」として、乾燥地緑化や赤潮など鳥取県が力を入れている研究について、ネットワークを活用したさらなる発展に意欲を示した。
(上記記事より)
「五カ国、十二大学」による大学ネットワークです。日本からは、鳥取大学、鳥取環境大学、鳥取短期大学が参加するとのこと。
鳥取大学学長の「地方大学の存在意義を世界に示すことができる」という言葉が印象的です。
「環境と資源」、「観光と交流」といったテーマは、確かに地方大学こそ得意としているテーマかも知れません。ぜひ、日本の存在感を打ち出して欲しいです。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログをごひいきにしていただき、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
マイスターでした。
マイスター様
いつも拝読させていただいておりましたが、今回トラックバックをさせていただきました。同じ内容のアンケート結果でもどこを見るかでその解釈は変わってきますね。毎回楽しみにしていますので、今後も良い記事をお願いします。