民事再生法を申請した、小樽短期大学

マイスターです。

今月初めに起きた学校法人の民事再生法申請について、皆様はもうご存じでしょう。
少しずつ動きが出て来ているようですので、今日はそちらをご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–
■「小樽短大が学生不足で経営難、民事再生法を申請へ(北海道)」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20060803wm00.htm

・小樽短期大学
http://www.otaru-jc.ac.jp/index.html
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北海道小樽市で小樽短大などを運営する学校法人小樽昭和学園(赤坂勝理事長)は、同短大が学生数減少で経営難に陥ったとして、札幌地裁に民事再生法の適用を申請する方針を固めた。負債総額は約3億5000万円で、四国を中心に予備校を運営している「タカガワ」(本社・徳島市、高川晶社長)が経営支援する。すでに先月末の理事会で、同社副社長の高川准子氏が学長に就任している。文部科学省によると、大学・短大を運営する学校法人が同法適用を申請するのは、全国で3例目。
同社などによると、同短大は1967年に女子短大として設立され、99年からは男女共学となった。しかし、年々、学生数が減少。各学年の定員140人に対し、今年度は1年生が33人、2年生が41人といずれも大幅に定員割れしている。
このため、学生納付金の減少に加え、定員の過半数割れで国の私学補助金が交付されない状況が数年続き、財務状況が悪化していた。
タカガワは高知県を除く四国3県と淡路島で高校、大学進学の予備校40校を運営。今年3月には、山口県防府市で私立高校を運営する学校法人「多々良学園高」が民事再生法適用を申請したのを機に経営権を取得した。これを知った昭和学園側が、同社に経営支援を申し入れたという。
昭和学園理事の一人は「学生数の減少が大きかった。学校経営に情熱を燃やす個人、会社などいくつか当たり、最終的にタカガワに経営支援を引き受けてもらえる形が出来た。とにかく、学校の存続を最優先に考えてきた」と話している。
読売オンライン記事より

というわけで「地方の女子短大」という、生き残りが厳しいと言われているカテゴリーで、学校法人がまたひとつ、倒産宣言をしました。

どのくらいの大きさの組織だったのか、ということを示すデータが、↓こちらにありました。

■「倒産・動向記事:学校法人小樽昭和学園」(TEIKOKU NEWS ONLINE)
http://www.tdb-news.com/bankrupt_detail.html?ID=14211&SID=a451938474fb1f845feb465dd045db10

「北海道」 学校法人小樽昭和学園(資産総額13億1756万9735円、理事長赤坂勝氏、小樽市入船4-9-1、教員48人、職員20人)は、8月4日に札幌地裁へ民事再生法を申請した。
(略)
当法人は、1953年(昭和28年)10月に設立された。小樽市内で「小樽短期大学」「小樽明峰高等学校」「小樽看護専門学校」の3校の運営を行い、97年3月期には年収入高約9億800万円を計上していた。
当初、女子短期大学として開校した「小樽短期大学」は、現在、英文科、経営実務科、ビジネスコミュニケーション総合学科を設け、93年度に720名の学生がいたものの、98年頃から少子化の影響が顕著となり生徒数は減少傾向を辿っていた。99年からは男女共学制に変更するなど学生数の確保に努めたが、2006年度には74名にまで減少、生徒からの納付金が減ったうえ、短期大学への国庫補助金が打ち切られるなどしたため、資金繰りはひっ迫していた。この間、教職員の削減などにより経費圧縮に努めたものの、支え切れなかった。
負債は約4億円の見込み。
(上記リンクより)

再生法申請時、教員48人、職員20人、学生74名だったそうです。教職員の人数と学生さんの数がほとんど変わりません。
誰がどう見ても、赤字を垂れ流している状態です。

こうした経営状態の経緯を、↓もう少し詳しく見てみましょう。

■「小樽短大の再生手続開始決定!タカガワが経営権取得!」(小樽ジャーナル)
http://www.webotaru.jp/news/2006/08/0804-4.htm

赤字額は、2003(平成15)年1億4,300万円、2004(平成16)年1億7,000万円、2005年(平成17)年1億5,800万円と、赤字を垂れ流してきており、現経営陣の無策さが問われている。
同学園の負債額は3億7,800万円で、日本私立学校振興共済事業団からの借入金1億7,100万円と社団法人北海道私学振興金協会の1億5,340万円の借入金が85%を締め、金融機関(小樽信用金庫)からの借入金が1,500万円、小樽短期大学父母の会からの借入金2,000万円などとなっている。
同学園は、6月30日と7月31日に支払い期日が来た小樽信金からの各500万円と、8月31日に支払い予定の500万円の計1,500万円、9月末の日本私立学校振興共済事業団からの借入金1,500万円の支払いの目処が立たず、破綻に追い込まれた。
(上記記事より)

2003年の時点で(と言うよりおそらくその数年前から)、自力での立て直しはほとんど不可能な状態にあったのではないかと、こうした数字からは推測できます。

結局この学校法人は、「支払い期限が来た借入金を支払えなかった」という理由で経営破綻しています。
つまり経営陣は最後まで、経営判断によるギブアップを行わなかったのです。こんな、どう考えても自力での立て直しは不可能だろうと思われる状態でなお、「なんとかなるさ」と考えていたということですよね。

経費削減で教職員をリストラしたりはしたようですが、これだけ学生数が減っている状況では正直、それだけでは大逆転は難しかったでしょう。
この時点で、「今の学科構成では、定員の学生を集められない」ということが判明しているわけですから、もっと抜本的な構造改革、つまり学部学科の完全な見直しを行う必要があったのではないでしょうか。

この小樽短期大学の学科改編の過程は、調べてみると興味深いです。

小樽短期大学は元々、「英文科」と「経営実務科」の2学科体制でした。
2004年に学科を再編し、「ビジネス・コミュニケーション総合学科」を開設するなど、なんとか受験生を増やそうとしたようですが、実はこの学科は元々あった「英文科」と「経営実務科」を統合しただけの学科。その証拠に2006年度からは名称が変わり、「英語・経営実務科」という名前になっています。
それも、入学後、「英語コース」と「経営実務コース」に分かれるという内容です。2004年以前と比べて、何も変わっていません。

つまりマーケティングを行って市場ニーズに合うような組織に生まれ変わるための抜本的な改革をしたのではなく、ただ看板を掛け替えただけだったのです。

失礼ながら、赤字を垂れ流して負債を拡大させている学校が、どうしてこのような浅はかな経営をしていたのでしょうか。

マイスターが想像するに、こういう骨抜きの改革が実行される背景にはおそらく、学内の経営ガバナンスの問題があります。

・各紙一斉報道「私大の4割が定員割れ」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50226857.html

↑以前の記事でも申し上げましたが、大学や短大の経営陣は往々にして、その学校で教えていた教員出身者です。教員による学内投票で選出された彼等は、それゆえ、自分達が属していた学科を廃止できません。それをやれば、同僚達の首を切ることになるからです。
小樽短期大学がどのようなガバナンス体制を持っているのか、外からうかがい知ることはできません。しかし上述したように「安易なごまかし」と言われても仕方がないような学科再編を繰り返していたあたりを見ると、やはり学内に、健全な経営判断を阻む何かしらの力が働いていたのではないかと思えてきます。

さて、民間企業の支援を受けて立て直しを図ることが決まった小樽短期大学。どのような方針で再建されることになったのでしょうか。
そのあたりを報じる記事がありましたので、最後にご紹介します。

■「小樽の学校法人買収 経営権入手で合意」(徳島新聞 タカガワグループwebサイト掲載)
http://www.e-takagawa.com/news/news2006.htm#08a

タカガワによる学校法人買収は、今年三月の多々良学園(山口県防府市)に続き二例目。
(略)
タカガワによると、小樽昭和学園側からタカガワにスポンサー就任要請があり、7月27日付で「経営に関する事項の決定についてはタカガワの責任において行う」などとするスポンサー契約を締結。31日には理事会(10人)を開き、高川会長らタカガワ側から新たに5人の新理事を選任、短大の学長には高川准子・タカガワ副社長が同日付で就任した。
今後、法人名は小樽高川学園に変更し、新理事長には高川会長が就く予定。学校名はいずれもそのまま残す。
(上記記事より)

■「地元の熱意で決断 効率化へ3校の事務統合」(北海道新聞 タカガワグループwebサイト掲載)
http://www.e-takagawa.com/news/news2006.htm#09a

高川会長らによると、民事再生法を申請した私立高、多々良学園(山口県防府市)をタカガワが経営支援した経緯があり、これを知った小樽昭和学園の理事有志が今年5月、徳島で高川会長に経営支援を求めたという。
高川会長は同学園の財務内容を分析。当初は判断に迷ったというが、「地元の街を挙げてつくった短大の灯を消したくないという教育への思いに感銘し」、支援に傾いた。
(略)
同学園の今後の体制については、学校法人名は小樽高川学園と変更するが、「同短大の名称やマークは変えない」。また、現在の教職員の雇用も維持した上で、「三つバラバラだった小樽明峰高、小樽看護専門学校の事務部門を統合し、効率的な運営を目指していく」と述べた。

タカガワグループは、上記の通り、すでに経営破綻した私立学校を経営支援したことがあるのですね。それを知った小樽短大の「有志」の方々が、同社に支援を依頼したという経緯があるのですね(この様子ですと、今後も数校の大学や短大から話が持ち込まれることになるんじゃないかと推測します)。

さて、タカガワからは理事長、学長をはじめとする理事達が送り込まれ、経営の決定権は実質、タカガワグループが持つことになるようです。

教職員の雇用は維持した上で、支援する学校法人が持つ三校の事務部門を統合するなどして効率化を図るとのこと。支援される側にとっては、ありがたい申し出だと思います。

しかし一方で、↓こんな手厳しいご指摘もされています。

■「破たんの小樽昭和学園。支援する企業が運営方針発表(北海道)」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20060823wm00.htm?f=k

高川会長は、同短大が定員割れとなった原因について、同学園側が主張していた「少子化の影響」ではないとし、「長く英文科で学生を募集し続け、時代のニーズを見誤ったことにある」と繰り返し強調。また、「学生募集に関して競争心がない」とも批判した。
今後の運営方針について、2008年度に短大の英語・経営実務科(1学年定員140人)を廃止し、英文科(同40人)に加え、資格取得が可能で就職に有利とされる保育科(同30人)、介護福祉科(同30人)の3学科に改変するとした。
(略)
さらに、事務局の効率化、人材補強などに着手したことを明かした。来年度の新入学生については「文科省からの補助金を受けるため120人を確保したい」と目標を掲げた。
(上記記事より)

「定員を確保できないのは、少子化の影響ではない」とのご意見。ごもっともです。
これはすべての学校について言えることですが、もし少子化が原因だとしたら、18年前にはこの事態が予測できていたことになるわけです。それにもかかわらず経営破綻させるというのは、やっぱり経営判断の失敗ですよね。経営者にとって、少子化は、言い訳にならないのです。

(なお「学生募集に関して競争心がない」というのは、タカガワグループの関係者達が、小樽短大の教職員と話して感じたことなのではないかと思います。企業から見たら、学校の教職員ってそういう風に見えるんだろうなぁと想像できます。)

新しい学科構成は、英文科に加え、地方短大のニーズに合う(と、新経営陣達が考えた)保育、介護福祉という体制。さて、今後、どうなるでしょうか。

小樽短期大学が生まれ変われるかどうか。見守っていきたいところです。
以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 小樽短大の記事を検索してたどり着きました。
    結局、廃校が決まりましたね。
    (ちょっとタイムリーではないですが)
    私も手を打つのが遅すぎたのだと思います。
    非常に残念な話です。
    小樽はJR快速で札幌まで30分。
    小樽の若者は札幌に流れる傾向にあるのは間違いありません。
    いかに小樽人を小樽に留まらせるか、
    その知恵が不足していたんですかね・・・。
    脈略のないコメントで申し訳ありません。