この不況に対して大学が用意している経済支援策あれこれ

マイスターです。

不況の中、大学の経済支援策が毎日のように報じられます。
あまりに多いので、ここ2~3ヶ月ほどの間に報道されたものの中から、いくつかをまとめてみました。

~大学が発表した経済支援策~

【新入生を対象とするもの】
■「生活困窮、新入生に100万円減免=授業料全額免除も-岡山理大など8校」(時事ドットコム)
■「進学困難の受験生支援 千葉科学大を経営の加計学園 入学金など100万円免除」(東京新聞)
■「家計支援 大学授業料を減免」(中国新聞)
■「苦学生に100万円 千葉科学大が奨学支援」(MSN産経ニュース)
■「愛知の大学、相次ぎ不況対策 学費免除、PR効果も期待」(FujiSankei Business i.)
※↑南山大学、日本福祉大学
■「景気悪化で緊急奨学制 APU、学費半額に減免」(西日本新聞)
■「愛知学院大学が「新入生特待生制度」を135名から270名に増員──大学独自の奨学金・特待生制度を拡充」(大学プレスセンター)
■「テンプル大学ジャパンキャンパスが、2009年夏学期の新入生に「特別奨学金」」(大学プレスセンター)
■「授業料 大幅に免除 京都精華大、奨学金制度設立」(京都新聞)
■「めざせ! 都の西北奨学金──早稲田大学が2009年度入学者から「入試前予約採用給付奨学金」制度を導入」(大学プレスセンター)
■「授業料半額の入試導入 あしなが育英会奨学生対象(愛知)」(読売オンライン)
※↑あしなが育英会奨学生が対象

一番目立っていたのは、新入生を対象にした支援策でした。
具体的には、入学費や学費の減免、奨学金の給付などです。

給付の際に「入試の成績が高かった学生」といった明確な選考基準を設けやすいということもあるでしょう。
しかしそれ以上に、「優秀な学生を集める」という効果も期待しているという理由も大きいのではないでしょうか。

特に私大の場合、優秀な学生が学費の安い国公立大学に流れることを恐れる大学も多いと思います。
奨学金や学費の減免は、そういった学生に、別の選択肢を提供することにつながるでしょう。

大学にとっても、経済的な問題で学ぶ機会を失われそうな受験生および家庭にとっても、メリットは大きいと思います。

ちなみに高校生を取り巻く状況については、↓こんな報道が端的に紹介してくれています。

■「あしなが奨学金:出願者が急増…不況、遺児家庭を圧迫」(毎日jp)
■「私立高生に不況の余波 学費滞納9カ月前の3倍」(Asahi.com)

こうした方々が、大学に期待している部分は大きいと思います。

【在学生(新入生含む)を対象とするもの】
■「岩手県立大も学生支援 授業料免除を追加実施」(河北新報社)
■「不況で就学困難な学生支援 甲南大が授業料半額に(兵庫)」(読売オンライン)
■「学費の半額程度、奨学金で給付 京都女子大 来年度から」(京都新聞)
■「1年間の学費を全額免除 淑徳大が21年度」(MSN産経ニュース)
■「沖国大、奨学金1000万円増/経済悪化で学生支援へ」(沖縄タイムス)

在学生を対象にしたものもたくさんあります。
(この後でご紹介する「留学生」「内定取り消し者」も在学生ですが、大学側の狙いをわかりやすくするため、ここでは敢えて分けています)

経済的に苦しんでいるのは、新入生だけではありません。
むしろ在学生こそ、現在進行形で苦しい中、大学の学費を捻出しています。

というわけで、様々な大学が対策を実施。
家庭の経済状況にもとづいて、対象者を選出するケースが多いようです。

経済的な事情で大学を自ら退学する学生は、世間が思っているよりも多いです。
あるいは、昼間部から、学費の安い夜間部に転部するケースもあります。
(昨今では、その夜間部も廃止に追い込まれているのが現状ですが……)

学ぶ意欲があり成績も悪くない学生達がこうした形で大学をさるのは、教職員の方にとっても忍びないでしょう。
経済的な支援策を拡充させるのは大変だと思いますが、退学者の増加も経営を圧迫しますし……。

ちなみに、以前の記事でご紹介した山形大学の「アドミニストレィティブ・アシスタント(AA)」のように、大学が学生をアルバイトで雇用するなどして積極的に活用するというのも、広い意味では学生に対する経済支援策の一つだと思います。

【留学生を対象とするもの】
■「大分大が私費留学生に一律10万円」(MSN産経ニュース)
■「鳥取大、私費留学生に緊急奨学金…「不況や円高直撃」 」(読売オンライン)
■「早大が留学生の学費納入延長 金融危機で」(47NEWS)
■「留学生に一律3万円──明治大学校友会が円高影響の留学生に経済的支援」(大学プレスセンター)

世界的な金融不況ということもあり、留学生を対象にした取り組みも目立ちます。
円高の影響を受けているケースもあるでしょう。
人数で見ると、全体に占める割合は小さいかもしれませんが、一番、支援を求めている学生達かもしれません。

【内定取り消しを受けた在学生を対象とするもの】
■「龍谷大、内定取り消しの在学1年延長 負担は半年5万円」(Asahi.com)
■「内定取り消しの学生対象、大谷大が授業料など免除へ 」(読売オンライン)
■「内定取り消し者卒業延期措置を 関東学院大」(MSN産経ニュース)
■「内定取消し者に学費免除で卒業延長 淑徳大が支援策 」(MSN産経ニュース)

昨今では、内定取り消しを受けた学生に対して、学費免除を行う大学もあります。
これも景気の悪化を受けて生まれたものですし、支援額の大きさで言えば、一番大きいかもしれません。

(上記の複数を含む)
■「立命館大が奨学金を3億円増額」(MSN産経ニュース)
■「経済的困難を抱える学生を支援する奨学金等の緊急拡充措置について――学校法人立命館
」(大学プレスセンター)

「不況に対して」ということで、まとまった予算を確保し、目的にあわせて配分している大学もあるようです。

上記に挙げた以外にも、きっと様々な大学が、色々な取り組みを打ちだしているのだと思います。
ここでご紹介できたのは、おそらくほんの一部に過ぎません。

受験を控えているご家庭や、現在、大学生だという方々は、大学に問い合わせてみてください。
webサイトではこうした支援策に関する記述を見つけられなくても、実は同様の取り組みをしているというケースだってあるかもしれません。

ちなみに、奨学金を扱っている部署は大学によって異なります。
奨学金課なんて部署があるのはレアケースで、学生課だったり、厚生課だったり、学務課だったり、教務課だったり、入試課だったり、留学生センターや学部事務室が扱っていたりします。
……というか、「奨学金の性質によって、扱っている部署が異なる」という大学が多いと思います。

そしておそらく、学内のすべての奨学金を知り尽くしたスタッフがいる大学は、稀です。
ある部署の人は知らなくても、他の部署の人は知っていたりしますから、一度電話して「ありません」と断られても、思い当たる部署には尋ねてみることをオススメします。

~経済支援に関する報道・調査結果~

■「高い学費 貧困拡大… 国立大授業料 免除申請増える 本紙が全国調査」(しんぶん赤旗)
■「新入生支援、62私大に 入学金や授業料を減免」(しんぶん赤旗)
■「雇用情勢の悪化に対応した大学の緊急経済支援 学費減免の取り組み」(東京新聞)
■「不景気 学費未納が増/県内大学/延納・分割希望者も」(琉球新報)
■「県内私大、奨学金を強化 困窮学生に支援」(琉球新報)
■「経済不況でも諦めるな! 拡充が進む大学の奨学金制度」(大学プレスセンター)

こうした大学の経済サポートなどに関する報道もまとめてみました。
(「赤旗」は、さすがというか何というか、熱心に調べているようです)

「合格」だけでなく、その後の学費の心配もしなければならないのが保護者の方々。
以前から、日本の大学の学費は決して安いものではありませんでしたが、経済状況が悪化する中、その重みはより家計にずっしりとのしかかっているようです。

こんな中だからこそ、手厚い経済支援を打ち出すことで、他の大学に差をつけられるという面もあるでしょう。大学として、打って出るチャンスでもあると思います。

大学の資金から捻出しなくても、例えば地元の地方銀行などと協力したり、国内外の企業から奨学金への出資を取り付けたりなどする手はあります。
もちろん、社会に出ているOB、OGや、同窓会組織などの協力も欠かせません。
どうやってお金を出してもらうのか、大学を挙げて考えるべきときです。

こういったテーマについては、非営利組織の経営に近代的な手法をいち早く導入したアメリカなどが強いのでしょうね。社会起業家的な手法でこうした問題を解決できるスタッフが、おそらくこれからの大学には必要なのだと思います。
あるいは早稲田大学の關 昭太郎氏のように、コストカットなどの手法を駆使して経営を改善化させ、そこから奨学金などを捻出できる優れた経営者でしょうか。
奨学金を拡充しなければならない状況というのは、大学が経営の改善化をせまられるきっかけにもなるかもしれませんね。

以上、様々な報道を見ながら、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • こんにちは、いつも拝見しています。一つ気になった点があります。「愛知の大学が新入生を支援」の記事で南山大学が入っていましたが、よく読むと、この大学は新入生の経済状況に関わらず、成績優秀者に対する支援をしているようです。マイスターがおっしゃるようにPR効果と優秀な学生確保のため、ということだと思います。ちなみに不況のために入学生を支援しよう、一番に名乗りをあげたのは愛知県では名城大学です。(新聞記事ではなぜか南山大学の写真がのっていましたが)