マイスターです。
■「埋もれた研究成果を誰もが簡単に投稿・共有できるサイト 『My Open Archive』」
■「マサチューセッツ工科大学(MIT)、授業映像に加え、学術論文もWebで公開」
↑以前、学術論文のオープンアクセス化に関する話題をご紹介させていただきました。
今回は、こんなニュースをお届けします。
【今日の大学関連ニュース】
■「米国: メリーランド大、OA化を否決」(情報管理Web)
メリーランド大学・日刊学生新聞DIAMONDBACK ONLINE4月24日号によると、同大学評議会は、4月23日、学内の研究成果のオープンアクセス化を諮った議案(2009年2月27日付)を37票対24票で否決した。
反対票を投じた委員からは、「OAは在任中に必要なジャーナルを台無しにする」「時期尚早」「研究者は論文の著作権を留保できる」「OA誌だけでの論文発表は大学や教授陣の知名度を損ねる」「OAは全分野に適用できるものではない」などの声が上がった。理系・文系の教授間で終始意見が対立した。
(上記記事より)
メリーランド大学は、アメリカ、ワシントンDCにある州立総合大学。
ノーベル賞受賞教授も多く、各種のランキングでも高い評価を得ています。
ちなみに、日本の岩国基地内にも、キャンパスを持っていたりします。
で。
上記の記事は、このメリーランド大学内の動きを報じたもの。
研究成果のオープンアクセス化を進めるか否かという議案が、議論の末、否決されたそうです。
確かに、議論になりそうなトピックですから、こうした事例が出てくるのは想像に難くありません。
MITなどはガンガンとオープンアクセス化を進めていますが、むしろMITの方が特殊で、一般的には是非が分かれている方が多いのかもしれません。
興味深いのは、
理系・文系の教授間で終始意見が対立した。
……の部分。
なんとなく、人文科学系はオープンアクセス化に反対で、自然科学系は賛成なのかな、と想像されます。
この元になった英文の記事は↓こちら。
■「Faculty sens. battle over open access」(DIAMONDBACK)
“Open access will kill the journals you need during your career,” women’s studies professor and university senator Claire Moses said. “It’s as simple as that.”
While everyone acknowledged that the high cost of scholarly journals and slimming library budgets needed to be addressed, many felt it was too soon to instate anything resembling university policy.
Terry Owen, a librarian who is a university senator, defended open-access publications, saying that because the publications do not require authors to assign copyright to a publisher, scholars can retain the rights to their own work.
“The final goal is to make information more accessible and available,” Owen said.
But Moses, who has served as editorial director of the journal Feminist Studies since 1977, said any action promoting publishing only in open-access journals would harm the visibility of the university and its faculty members – especially its tenured faculty members.
Senators criticized the proposal for its language, which they said did not accurately characterize the variations that exist between departments. Throughout the debate, science professors faced off against humanities professors – a rift caused by the vast differences between scientific journals and humanities journals.
“This is a proposal that does not take into account the needs of different disciplines,” history professor Gay Gullickson said. “[Open access] applies well to some disciplines and hurts others.”
Both Moses and Gullickson argued the resolution’s language was too strong to count as a mere suggestion and would eventually lead to university policy.
“This does not call for discussion – it urges the president to take action,” Gullickson said.
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
ご興味のある方は、リンク元もご覧ください。
日本でも、研究費の扱いや、研究に対する評価のされ方などなど、「研究分野による違い」は至る所で顔を出します。
どちらが良いとか優れているとかいった話ではなく、「拠って立つ文化が異なる」ということなのかもしれません。
そうは言っても、いずれはオープンアクセス化せざるを得ない状況になるのかな……と思ったりもしますが、それまでに世界中で、上記のような議論は起こりそう。
こうした議論が行われることで逆に、現状のオープンアクセス化の問題点や、実現のための解決策などが出てくるのかもしれませんね。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。