内定取り消しへの対応策(1):様々な支援策のあり方

マイスターです。

もはや珍しくもない言葉になってしまったかのような、「内定取り消し」。
全国の内定学生が、自分の就職先は大丈夫かどうかを心配していることと思います。

■「内定取り消し」報道から就職の現状を考える
■内定取り消し報道が続く

以前にも内定取り消しに関する話題をご紹介させていただきましたが、その後も毎週のように関連の報道が続いています。
もはや「派遣切り」などと並んで、不況を表すキーワードとして認識されてしまったようです。

このような事態を重く見た大学側も、様々な支援の取り組みを打ちだしています。

【内定取り消し支援関連ニュース】
■「関東学院大 内定取消し学生に卒業延期と学費免除措置」(J-CAST NEWS)
■「内定取り消し者の卒業延期認める 大谷大、授業料も免除」(京都新聞)
■「内定取り消しの学生の卒業延期容認/横浜 関東学院大が学費全額免除」(カナロコ)
■「内定取消し者に学費免除で卒業延長 淑徳大が支援策 」(MSN産経ニュース)
■「神大が内定取り消し対策/卒業延期可能に」(カナロコ)
■「内定取り消し学生の留年 授業料減額へ―青山学院大学」(教育情報サイトeduon!)
■「内定取り消し者大学に 入学金半額を免除 諫早市 長崎ウエスレヤン大」(読売オンライン)
■「内定取り消し学生は年間10万円で在籍可能に、甲南大」(Asahi.com)

↑このように、内定取り消しを受けた学生の在籍を無料、または格安で認める大学が増えています。
日本の採用市場では、「新卒」であることに大きな意味がありますので、このような対応の仕方になるのでしょう。
抜本的な解決策とは言い難いのですが、学生にとっては最も助かる支援の方法かも知れません。

(ちなみに、新卒対象者だけに参加を限定した有名サイト「リ○ナビ」が、新卒以外の登録も認めれば、こうした問題は相当解決すると思うのですけれど。
企業の側も、本当は新卒か既卒1年目かなんてあまり気にしていないと思うのですが、両方を相手にしようと思うと、リ○ルート社に莫大な登録料を支払わなければならないのが最大のネックです)

中には、一歩進んだ取り組みを行っている大学もあります。

■「内定取り消し1000人超 闘う大学 相手企業に補償金要求 学費免除 新年度も新卒 九大が先駆け」(西日本新聞)

九州大(福岡市)でも1月中旬、新たに1人が取り消され、計3人になった。就職担当者は「今になって取り消すなんて企業側の誠意が感じられない」と憤慨。そこで大学として、企業側に関連会社への就職あっせんや補償金を要求するなど、取り組みを強化した。
(上記記事より)

就職活動を再開せざるを得ず、また授業や卒論に追われる学生に代わって、大学が企業側に、保証金の支払いや就職先の斡旋を要求する。
そんな、九州大学の取り組みです。

内定取り消しを行う企業の側にとっては、大学が代理人になることほど、避けたいことはありません。
「学生一人にどうこう思われても平気」と考える企業はありそうですが、大学が正式な交渉相手になるとなると別。
今後の採用活動に影響するかも、といったリスクも考え、より真剣に対応するようになるかも知れません。

これはなかなか効果的な取り組み。他の大学にもぜひ、参考にしていただきたいです。
なおこうした取り組みを行う場合は、キャリアセンターのスタッフだけで対応せず、大学の顧問弁護士などにも助力を仰ぐことをオススメします。
(大学の就職課を甘く見ている企業もあると思うので)

内定を取り消した企業に対し、改めて採用を求めるという対応策も考えられなくはありません。
ただ、内定取り消しを行うくらいの企業ですから、経営が危機的状況なわけです。
入社前にそれがわかっただけでもラッキーと考え、適切な補償を受けて別の就職先を探す方がいいこともある、と個人的には思います。

大きな視点で就職市場全体を見てみると、事態はより深刻です。

53人の内定者全員に対し、内定取り消しを出したことが大きく報道された「日本綜合地所」も、経営が破綻したそうです。

■「日本綜合地所が破綻 負債1970億円、更生法申請」(中日新聞)

日本綜合地所は1993年の設立。「ヴェレーナ」などのブランド名でマンションを全国で販売している。2008年3月期連結決算は、純利益が46億円で過去最高を記録。09年3月期は、純損益が305億円の赤字に転落する見通しを今月3日、発表していた。
経営悪化後、値引き販売などでしのいだが、11月に200億円を借り入れて以降は、新規融資を受けられず、6日が支払期限の建築代金の確保にめどが立たなくなった。
東京都内で記者会見した西丸誠社長は、金融機関の貸し渋りが主な理由と説明。内定を取り消した学生全員に、1人100万円の補償金を支払い終わったとし「一部でおしかりを受けたが、昨年12月の販売戸数は伸びた」と、破綻の直接要因でないとした。
(上記記事より)

■「内定取り消しの日本綜合地所が破綻、学生の心中は複雑」(Asahi.com)

日本綜合地所から内定を取り消された男子学生(23)は5日、大学内で友人から破綻(はたん)のニュースを知らされた。「やっぱり。そうなってもおかしくないとは思っていた」
昨年12月の会社側の説明会では社長が直接頭を下げて謝罪をしたが、「自分たちの言い訳ばかり」で誠意は感じられなかった。今でも同社が扱う物件は好きだし、魅力も感じている。だが、「正直、こういう体質の企業には生き残ってほしくないと思った」。
会社側は内定を取り消した学生全員に補償金100万円を支払い終えたとしている。「内定を取り消されずにこの時期になって破綻して放り出されるよりは、補償金も払ってもらえてまだマシだったと思うしかない」
(上記記事より)

2008年3月期連結決算の時点で、過去最高の純利益を計上していた企業が、1年たたずにまさかの破綻。金融不況の影響が直撃した結果です。
その間に内定を受けていた学生が、内定取り消しを受けた形。会社側は、内定取り消しを出した学生全員に、100万円の補償金を支払い終えたそうです。

日本綜合地所は様々なところで厳しい批判を受けていましたが、こうなると、企業だけに責任を求めればいいのだろうかという気もしてきます。

では、こうした状況の結果、何が起きているか。

……という動きをご紹介しようと思いましたが、長くなりそうですので、続きは次回に。

以上、マイスターでした。

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(続きの記事)
■内定取り消しへの対応策(2):抜本的な「就活」のあり方を変えなければ

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。