大学の語学科目に「手話」を

マイスターです。

4月も後半になりました。
大学新1年生の皆さんにとって、新鮮な科目の一つが、語学でしょう。
多くの学生にとって、英語以外の外国語をきちんと学ぶ機会は、これまでには無かったと思います。

語学には、

・言語の学習を通じて、その国(エリア)の文化や習慣を学ぶことができる
・コミュニケーションツールとしての外国語を習得できる

という2つの意義があるように思います。
前者は比較的容易ですが、どうせ語学を学ぶのなら、せっかくですからツールとして運用できるレベルを目指したいものです。

以前は英語の他、ドイツ語やフランス語、ロシア語などが、大学で学ぶべき言語とされていました。
先進国から様々な学問を導入するために、こうした言葉を身につけることが必須条件だったからです。
しかし昨今では、そんな「追いつけ、追い越せ」という時代が終わり、日本は世界に貢献する立場になったということで、中国語や韓国語、マレー・インドネシア語、タイ語、さらにはアラビア語などを開講する大学も少しずつ増えてきているのだとか。
時代を反映していますね。

さて、最近では語学科目として、こんな言葉を学べる大学があるようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「関西学院大 人間福祉学部 手話を選択語学に」(読売新聞)

関西学院大(兵庫県西宮市)は今年度新設した人間福祉学部の語学科目(第2言語)に、英語やドイツ語、フランス語などと並んで手話を取り入れている。基礎的な手話をマスターすることで、ろう者とのコミュニケーションや理解を深めるきっかけにしてもらうことが狙い。同大学によると、必修の語学科目に手話が導入されるのは全国でも珍しい。
講義で学ぶのは、幼いころからろうの人たちが自然に身につけ、ろう者同士の会話で使われる「日本手話」。他の語学との選択制で定員は6クラス90人。ろう者と手話通訳士の資格を持つ健常者の非常勤講師が講義を担当し、90分授業の前後半で入れ替わりながら指導する。他の語学と同様、春、秋学期ごとに試験があり、卒業には2年間で計8単位の取得が必要となる。
(略)同学部の入学者約320人のうち約90人が日本手話を選択。教務主任の松岡克尚准教授は「2年間で学べるのは基礎だけだが、異なる生活や文化への理解、どんな接し方が必要かなどを考える機会にしてほしい」と期待している。
(上記記事より)

そんなわけで、関西学院大学人間福祉学部の取り組みです。

シラバスが公開されていました。

■「シラバス:日本手話 I 1」(関西学院大学)

■授業目的
本講義では、日本手話での基本的な会話力を身につけるための基礎的な講義と実技を行う。講義では、日本手話の母語話者であるろう者について(ろう者学)や日本手話の文法についての学びを行い、実技では自己紹介や身近な話題について会話が行えるレベルを目指す。
「シラバス:日本手話 I 1」(関西学院大学)より)

■シラバス:日本手話 II 1」(関西学院大学)

■授業目的
本講義では、日本手話での基本的な会話力を身につけるための基礎的な講義と実技を行う。講義では、福祉施策等ろう者をとりまく社会の環境についてや日本手話の文法についての学びを行い、実技では自分の未知の新しい話題について会話が行えるレベルを目指す。
シラバス:日本手話 II 1」(関西学院大学)より)

このように語学科目として開講され、最終的に「会話が行える」というところが目標とされています。

授業で手話を教えている大学は、日本全国には少なからず存在します。
ネットで調べてみて多く見かけたのは、一般教養的な扱いで、手話という文化やその背景としてのろう者、ろう文化について学ぶというパターン。開講期間は半年くらいです。コミュニケーションツールとして手話を身につけるところまでは難しいかもしれません。
また福祉系学科の専門科目(ときには大学院レベルの科目)として、ある程度実践的に手話を身につけさせる場合もあります。これは、本当に福祉の、あるいは手話のプロを目指そうとしている方向けですね。

関西学院大学のように、学部のうちから「語学として」手話を選択できる大学は、ほとんどないようです。

でも、その言葉の学習を通じて特定の文化や習慣を学ぶことができるという点や、コミュニケーションツールであるという点を考えると、手話は確かに、語学です。
しかも関西学院大学の場合、人間福祉学部の学生のための語学として開講されています。こうした分野を学ぶ学生にとっては、かなり重要な語学に違いありません。
実際、冒頭の記事には「同学部の入学者約320人のうち約90人が日本手話を選択」とありますから、人気は上々のようです。

異国の文化を学ぶことも非常に意義のあることですが、「どうせなら、自分にとって使う可能性の高い言語を学びたい」という考え方もあるでしょう。
個人的には大学では、一度は英語圏以外の言語にも触れて世界の多様性を知って欲しいと思いますが、手話を学ぶことにも、これはこれで大いに意義があると思います。
こういった様々な選択肢が用意されているのは、いいですね。

ちなみに、外国では、手話の扱いはどうなっているのでしょうか。

アメリカのModern Language Associationが、全米約2,800の大学を対象として行った調査があります。
2006年度に学生が履修した外国語の講座数を調べ、どんな言語が学生に人気なのかを調べました。

■「Enrollments in Languages Other Than English in United States Institutions of Higher Education, Fall 2006(英語)」(Modern Language Association)

各言語の順位はPDFの「Press Release」でもわかりますが、「Full Report」の方がグラフ化されていてよりわかりやすいです。10ページ以降に掲載されていますので、ご興味のある方はどうぞ。

ここでは2006年度に履修者が多かった言語として、以下のようなものが挙げられています。

・スペイン語  823,035人
・フランス語  206,426人
・ドイツ語  94,264人
・アメリカ手話(American Sign Language)  78,829人
・イタリア語  78,368人
・日本語  66,605人
・中国語  51,582人
・ロシア語  24,845人
(上記調査結果より)

目をひくのが、アメリカ手話(American Sign Language)の存在。
手話も、言語のひとつとしてカウントされているのですね。
しかもイタリア語や中国語などより履修者が多く、なんと4番目に人気の言語です。
(日本語もけっこうがんばっていますね。ロシア語の倍以上も履修者がいます)

冒頭で述べたように、大学で学べる言語の種類は増えています。
また日本の社会問題を様々なアプローチで解決するために、新しい学問分野や、それを教える学部学科が生まれています。
そんな中、今後はもしかすると、関西学院大学に続き、日本の大学でも手話を言語科目として教える大学が増えてくるのかも知れません。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。