18歳で大学教授に

マイスターです。

18歳で大学に入学するのは普通ですが、18歳で教授になってしまった人が現れたようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「18歳米国人が大学教授に=世界最年少」(時事ドットコム)

韓国の建国大は23日までに、18歳の米国人女性を教授として採用したと明らかにした。世界最年少の大学教授としてギネスブックにも認定された。
大学教授となったのはアリア・サバーさん(19)。今年2月、19歳の誕生日の3日前に新技術融合学科の教授に採用された。これまでの最年少記録は、1717年に19歳で英国の大学に任用された数学者だった。
サバーさんはナノ材料技術の研究者。10歳で大学に入学し、14歳で卒業した後、現在は米国の大学で講師を務めている。韓国には5月に訪れる予定。
(上記記事より)

というわけで、世界最年少、18歳の大学教授です。
ご本人の写真は↓こちらに掲載されています。

■「18歳米国人が大学教授に=韓国」(時事ドットコム:フォトニュース)
■「18歳の米国少女が建国大の教授に」(中央日報)

ちなみに「1717年に19歳で英国の大学に任用された」というこれまでの最年少記録は、コーリン・マクローリン(Colin Maclaurin, 1698.2-1746.6.14)という方。19歳でスコットランド・アバディーンにあるマリシャル・カレッジの数学教授に選ばれたそうです。
今回のアリア教授は、およそ300年ぶりに、この記録を塗り替えました。

ちなみに、18歳でギネス認定とのことですが、20代の教授くらいなら、けっこう聞きます。
例として一番わかりやすいのは、アメリカの、コンドリーザ・ライス国務長官の経歴でしょうか。

~コンドリーザ・ライス国務長官の経歴~
1974年、デンバー大学卒(政治学)。このとき19歳。
1975年、ノートルダム大学で修士号取得。
1981年、デンバー大学で博士号取得。
1981年、スタンフォード大学教授。26歳での教授就任。

下記のページには、さらに詳細な情報が載っていますので、よろしければご覧ください。

■「コンドリーザ・ライス国務長官」(駐日アメリカ大使館webサイト)

さて、18歳というと、入学してきた新入生と変わらない年齢です。
2年生以上の科目を担当する場合、アリア教授は自分より年上の学生に囲まれて教えることになるわけですが、能力があれば年齢は関係ないということでしょう。

日本は、逆に、多くの物事が年齢で判断される国ですから、こういったニュースを聞くと少し新鮮です。
知識産業の象徴と思われる大学の教員であっても、それは変わりません。

例えば、教員を公募する際、「○歳以上の方」という制限を設ける大学は、実は結構多いです。
先ほどちょっと検索してみたのですが、現在webサイトで読める公募案内だけでも、そんな記述がぞろぞろ出てきました。

教員の公募において、年齢の下限を設ける大学の例
【私立大学 教授または准教授】
採用時の年齢が40歳以上63歳以下の方
【私立大学 教授または准教授】
採用時年齢が満40歳以上であること
【私立大学 教授】
60歳以上の年齢で70歳まで勤務できる者。
【国立大学 准教授または助教】
30歳以上40歳未満(採用時)
【国立大学 教授】
平成20年4月1日に満61歳以上
【私立大学 教授】
採用予定日において、45歳以上60歳以下の者。
【私立大学 教授】
着任時50歳以上であること
【私立大学 教授】
55歳以上65歳以下の方
【公立大学 教授】
採用時の年齢が50歳以上60歳前後まで
【公立大学 実技教員】
採用予定日現在、30歳以上40歳ぐらいまでの人
以上、検索をもとにまとめた。

きりがないのでこのくらいにしておきます。
なお、こういった公募の年齢制限について調査した結果があります。

■「大学、公的研究機関における研究者公募の現状(PDF)」(科学技術政策研究所)

こちらによると、大学で半数、公的研究機関では約60%が応募者の年齢について何らかの制限を設けているそうです。
特に私立大学では、74.5%と、年齢制限を設けているケースが多い様子。国立大学を退官した教授を採用するために、「60歳以上限定」なんていう、あからさまな年齢制限をよくやられているのも要因の一つでしょう。

このように日本では、大学の教員を公募する際、年齢制限を設けることが少なくありません。

もっともこれは、年上の方が有能だと考える大学人が多いからというよりも、大学組織の人事制度によるところも大きいかもしれません。

大学の教員は、案外、年功序列な人事制度の上で動いています。
同じくらいの年齢の人は、同じくらいの職階になっていますし、同じくらいの職階の人には、同じくらいの給与を出すようになっています(※ただし研究費は別で、こちらは人によって大きな差がつくこともあります)。

で、大学の人事システムが想定するのは、

30代でなんとなく講師になり、
40代でだいたい准教授になり、
50代以降、ころあいをみて順に教授になっていく。

という人生。
(上でご紹介した、公募の年齢制限を見てみてください。ほぼ、この「30-40-50」を、なぞっているのがお分かりになると思います)

この区分を著しく外れた人が現れると、給与や昇進、ほか人間関係的な面を含め、大学の人事システム的によろしくないというわけです。それで敢えてこうした年齢制限を設け、例外を出さないようにされているのでしょう。

※ちなみに朝日新聞社『大学ランキング』には、毎年、「教員の年齢ランキング」という項目があり、各大学の最年少教授の年齢が掲載されています。30代の教授を抱える大学は案外たくさんありましたが、それでも30代後半がほとんど。20代はまずいません。(2009年度版の最年少は、京都大学の34歳の教授でした)。

いずれにしても、年齢というフィルターが、様々な場面に存在するのは確かなようです。
私立大学の74.5%が年齢制限を設けて教員を公募しているという事実や、「○歳以上」といった下限を記載する大学が少なくないという実態を見るかぎり、やっぱり日本では、若い教授は出にくいのかなぁと個人的には感じます。
少なくとも、10代や20代前半の教授が出ることはなさそうです。

キャリアの年数は、特に教育を任せる場合は重要ですから、無視して良いとも思いませんし、若ければよいというものではないでしょう。
ただ、他の国と競争を行うにあたり、こういった年齢制限がどのような影響をもたらしているかを考えるのは、重要だと思います。

例えばアメリカなどでは、教員の募集をする場合、提出される履歴書には名前と、卒業した学校、そして過去の実績などしか書かれないそうです。
年齢、生年月日、性別、国籍というものは載せない、のだとか。
これは、「Affirmative Action」といって、人種、年齢、性別、宗教、性的な趣向などによる差別を禁じる法律による規程だそうです。
こういった部分が、それこそ、ライス国務長官のようなパワーエリートを生む土壌になっているところはあるでしょう。

日本は、どのようなやり方で、こういった人材を持つ国と競っていくのでしょうか。

……と、ここまで書いて、日本では、講師→准教授→教授と昇進すればするほど、研究・教育以外の様々な仕事が増え、逆に研究ができなくなるという話を思い出しました。
研究者として一番、研究にのめり込めるのは講師のときだと語る人もたまにお見かけします。

そうなると、教育はともかく研究に対しては、やる気のある人ほどむしろあんまり早く出世したくないということになるのでしょうか……。
だとしたら、それはそれで、何かねじれているような。

うーん、実際のところ、どういう状態が望ましいんでしょう?

以上、冒頭の記事を読んで、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  •  十代の社長というのもよく海外ニュースで目にしますが、こうした報道に接していつも疑問に思うのは、何か問題(粉飾決算とか、製品による事故とか)が起きたとき、「未成年社長」では責任が取れないのではないか?ということです。
     18歳の大学教授についても、同じ疑問を抱きます。本人に過失がある場合はもちろん、たまたま受け持っていたゼミ生が不祥事を起こした場合など、「未成年教授」の責任問題はどう扱われるのかと。
    >やる気のある人ほどむしろあんまり早く出世したくないということになるのでしょうか
    実際に昇進拒否している大学教員の話はときどき聞きますね。教授になると学務が忙しくなって研究できなくなるという理由で。