マイスターです。
少し前ですが、こんなニュースを見つけました。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「中国の大学・専門学校の75%がアニメ学科とかかわっている 〜日本動漫の普及が中国政府を動かした」(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071107/139916/
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海賊版による普及がきっかけだったということもあって、当の日本人もあまり知らぬ間に、中国では日本動漫(アニメ・漫画)が若者文化の核のひとつを占めるようになっている。
ただし、この流れに頭を痛めているのは、著作権の所有者である日本の動漫関係者ばかりではない。もっと危機感を抱いているのが、中国政府である。
自国の未来を担う若者や子どもが、日本から流入した動漫の影響を多大に受けて育っている。
日本動漫が若者たちの精神文化の形成に与える影響力の強さ。日本動漫が牽引する動漫市場の大きさとその成長ぶり。中国政府は、一刻も早く自分の力でサブカルチャーであり巨大産業でもある動漫を育て、中国独自の世界をこの市場でも確立しなければならない、と考えた。
そこで中国では今、日本の動漫に対抗すべく、国を挙げて国産動漫産業の確立に邁進している。政府組織の中でもとびきり保守的な国家教育部までをも含めた、すべての中央行政省庁が協力し、あらゆる側面から中国国産動漫産業を振興しようと必死なのだ。
その象徴の一つが、全国の大学など高等教育機関に動漫にかかわる学科を次々と設置している、という事実である。
(上記記事より)
詳細は、上記の記事をどうぞ。
アニメやゲーム、マンガなど、日本発のコンテンツが世界を席巻している事実は、今さらここで言うまでもありません。
中国や韓国などのアジア諸国はもちろん、アメリカやヨーロッパなど遠く離れた国々でも、子供世代を中心に大きな影響を与えているようです。
貿易上の商業的な利益もさることながら、
「文化を通じて日本という国を身近に感じる」
ということのメリットが、やはり非常に大きいように思います。
(一度も海外旅行をしたことがない日本人でも、なんとなくアメリカの人々や文化を身近に感じていたりしますが、それと同じでしょうか)
商業的な面に関して言えば、他の国々も、自国で良質なコンテンツを制作し国際競争力のある産業を育てようと、最近ではアニメーションやゲーム制作などを高等教育機関で教えるようになってきています。
日本でも、コンテンツビジネス振興政策が官主導で打ち出されたりしていますが、油断するとあっという間に技術や創造性で他の国に追いつかれそうな雰囲気もあります。
で、冒頭の中国の例ですが、この国の場合にとっては商業的な目的に加えて、日本発コンテンツの文化的影響力の大きさも懸念事項だと思われます。
いつまでも日本のコンテンツを買うだけではなく、自国のコンテンツ産業を育てていきたいという思いはあるでしょう。
そのために今、大学にアニメやゲーム関係の学科をつくっているところだというわけです。
興味深いのは、中国での学科の「つくられ方」をまとめた、以下の部分。
中国では大学挙げての動漫教育が、国家の号令によって凄まじい勢いで進行している。中国政府はまさに国策として中国国産の動漫産業を振興させていこうと考えている。
(略)専業名は、まず国家教育部(当時は国家教育委員会)が審査し批准して「専業名リスト」を公開し、次にそのリストに沿って各大学や専科学校が「自分の大学・学校にも、その専業を設置したい」と申請するという方法で増設されていく。
そして、動漫関係の専業の場合、本科専業の「動画」という専業名以外に、専科専業の中に「カ(※編注、漢字の「上」と「下」を上下に合わせた字)通」(カートゥーン、Cartoon)と呼ばれる専業が設置されるようになったり、またそれまで特定の学系にのみ置かれていた動画専業がさまざまな形に変わって、芸術以外の学系にも入り込むようになり、その数を増やしていった。
(略)このように、中国の教育界の専業設置の変化ぶりは、そのまま同時期の中国の社会や政治の変化を表している。これが社会主義国家中国ならではの特徴だ。
(「中国の大学・専門学校の75%がアニメ学科とかかわっている 〜日本動漫の普及が中国政府を動かした」(日経ビジネスオンライン)
さすがというか何というか、日本とはかなり異なりますね。
かくして、
中国においては、大学や専門学校のような高等教育機関を総じて「高等院校」と呼んで分類している。(略)2005年データでこうした全日制高等教育機関は1731校あり、社会人向けの成人高等教育機関が505校あるので、先の金司長の発言にあった高等教育機関(高等院校)は合計2236校あることになる。そのうちの1230校が、何らかの形で動漫専業とかかわり、447校が動漫専業を設置しているわけだ。
つまり、中国の全高等教育機関の「75%」が、動漫専業にかかわっていることになる。いかに政府が動漫産業の確立に必死であるか、この「75%」という数字を見ればお分かりいただけるだろう。
(上記記事より)
……という結果になるわけです。うーむ。
国の政策上の事情から、かなり直接的な影響を受けています。
政府が動くと大学も動く。「75%」の裏には、そんな背景があるわけですね。
もちろん、国によってこういった仕組みは全然違います。どれが一番良いというわけではありません。合っているやり方で成功すれば良いだけの話です。
個人的には、日本は逆に行政・官僚主導にした結果、ハコだけできたり全然盛り上がっていなかったりしているプロジェクトも少なくないような気がちょっとしますが、さていかがでしょうか。
以上、今日は中国に関する報道をご紹介させていただきました。
マイスターでした。