マイスターです。
毎年、この時期になると気づくことがあります。
マイスターがよく読んでいるネットのニュース、特にIT系のメディアで、慶應義塾大学SFCの話題が爆発的に増えるのです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「慶応義塾大学SFCが大規模研究発表イベント-六本木ヒルズ」(六本木経済新聞)
http://roppongi.keizai.biz/headline/1234/
■「慶大SFCのOpen Research Forum 2007が開幕、新たな産学連携の道探る」(マイコミジャーナル)
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/11/22/orf1/
■「電気自動車:六本木ヒルズに最高時速370キロの『エリーカ』展示」(毎日jp)
http://mainichi.jp/enta/car/graph/20071122/
■「大日本印刷、慶応大とデジタルコンテンツに最適な書体を自動選択するシステムを開発」(NIKKEI NET)
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=175741&lindID=1
■「極限へのチャレンジが未来を創る――SFC Open Research Forum 2007」(ITmedia NEWS)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/01/news003.html
■「通信と放送の融合に向けて――SFCと経団連が共同プロジェクト」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0711/20/news099.html
■「組織の課題はパターン・ランゲージで解決――SFC井庭崇研究室」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0711/20/news105.html
■「TV番組がネット配信される日はまだ遠い!?――ORF 2007始まる」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0711/22/news116.html
■「政治と技術の融合が地球に対してできること」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0711/22/news117.html
■「情報はどこにあり、誰のものなのか?」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0711/07/news001.html
■「ネットワークで社会に変革を起こしていくシスコ」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0711/15/news002.html
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ぱっとリストアップしただけでも、上記の通り。
これらのニュース、実はいずれも慶應SFCが毎年この時期に開催している、「Open Research Forum(ORF)」に関連する報道なのです。
■「SFC Open Research Forum 2007」
http://orf.sfc.keio.ac.jp/
慶應義塾大学SFCは、産学連携やベンチャー起業家の育成などに力を入れていることで知られています。
「理工学部」ではないけれどネットワーク、情報メディア、電気自動車などの技術開発に注力している学部、でもあります。
そんなSFCが、各種の研究成果を企業人や一般生活者、メディアなどにPRするために毎年行っているのが、この「Open Research Forum」です。
……と、ここまでなら、別に珍しくもない話です。
今時、理工系の大学なら、開発した技術を社会に向けてアピールするくらいのことはするでしょう。
でもそれにしたって、上記の報道の数は、ちょっと他の事例では見かけません。
ひとつひとつのニュースは、いたって普通の記事やプレスリリースなのですが、短期間の間にものすごく集中して出されるものだから、目立つのです。
それも「ITmedia」など、最新技術に関心がある読者が多そうなメディアに偏っています。
それで、毎年、ちょっと感心させられているわけです。
SFCのケースが目を引くのは、
■六本木ヒルズや丸ビルなど、企業やメディアの関係者が訪れやすい場所を会場にしている
■メディアの力を活用できるような体制を組んでいる
……の2点にあるように思います。
ひとつめは、文字通りです。
どうやらSFCの「Open Research Forum」は、かつては藤沢のキャンパスで開催されていたようですが、ある時期から六本木ヒルズなどに会場を移しています。
その頃から、メディアへの露出が高まっているように見受けられます。
メディアというのは、「読者が関心を持ちそうな話題」をニュースにします。
逆に言うと、それがどんなに画期的な内容だったとしても、読者にとって関連がありそうな話題でなければニュースにはしません。
ですから都心から遠く離れた場所で行われるイベントよりも、アクセスの良い場所で開催されるイベントの方が、報じられる可能性は高いです。
それに取材をする記者としても、話題性の高いニュースを都心でいっぺんにたくさん取材できるとあれば、時間を割いてでも出かけるでしょう。
また記者というのは、どちらかというとビジュアル的に「絵になる」話題を取り上げる傾向があります。
自分が記者だったらどういう風に紙面を構成するか、想像してみてください。とっ散らかっている研究室に雑然と置かれた研究成果と、キレイな六本木ヒルズのプレスルームで発表される研究成果。同じくらいの社会インパクトがあるのだとしたら、紙面にしたとき格好がつくのは後者です。
そういった点で、六本木ヒルズを会場にしているというのは、大学としては大胆ですが、大正解だと思います。
そして二つめですが、上記のような要素に加え、自分達の話題がなるべくメディアに露出するようにしよう、と様々な工夫をしている感じがします。
まず、リンク先を見ていただくと分かるのですが、冒頭で挙げた記事のうち「ITmediaエンタープライズ」のものは、大学と連携しての特集コンテンツとして制作されたものです。
■「SFC Open Research Forum 2007 toward eXtremes -未来創造塾の挑戦-」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/special/0711/orf/
しかもこの特集、毎年やっています。
もはや恒例なのでしょう。
■「現代リアル学REPORT SFC OPEN RESEARCH FORUM 2006」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/special/0611/orf/
■「レッドクイーンの法則-知の遺伝子変化を加速せよ- SFC OPEN RESEARCH FORUM 2005」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/special/0511/orf/
■「<21世紀を創る対論12>〜未来技術戦略から福沢精神まで〜 SFC OPEN RESEARCH FORUM 2004」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/special/0411/orf/
■「ユビキタス社会の明日を切り開く慶應SFC研究所 SFC OPEN RESEARCH FORUM 2003」(ITmedia エンタープライズ)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/special/0310/orf/
恒例になっている時点で、既に他の大学の取り組みよりも有利な状態です。
しかし、ネットのニュースは記事ごとにリンクが貼られたりRSSで配信されたりするものだから、一見、「Open Research Forum」特集の一つであることに気づきません。
一つ一つの話題は、普通に「新しい技術を報じるニュース」のように読めます。
結果、ITmediaを読んでいる人は「なんかSFCすごいなぁ」と受け取るわけです。
それだけではありません。
ITmedia以外のメディアも、あれこれとSFC関連のニュースを報じておりますが、相当な綿密さでメディア各社にプレスリリースを打ったんだろうなと思わせます。
中でも大日本印刷との研究に関しては、研究成果の発表のタイミングを、今回の「Open Research Forum」に合わせたんだろうと思われます。「Open Research Forum」のインパクトを最大化しようとした結果でしょう。
結果的にいくつかのメディアが報じ、成果も出ているようです。
ちゃんと、イベント全体の広報を取り仕切っている人がいなければ、こういう風にはなりません。
教員か、職員か、それとも学外の第三者か、どなたが仕切っているのかはわかりませんが、大学業界では他にあまりこういった取り組みをしている事例を見かけませんので、目立っています。
派手な会場に目がいってしまいがちですが、プレスの活用法を分かっている人が、綿密に組み立てたイベントなんだろうなとマイスターは思います。
「Open Research Forum」で発表される研究成果ひとつひとつの内容がもちろん一番重要なのですが、その成果をなるべく広く社会に届けようと思えば、こういった点にも気を遣う必要があります。
そういった点では、他の大学の方にとっても、参考になる事例なのではないかなと思います。
以上、マイスターでした。