ニュースクリップ[-10/28]「中国地方の国立大が連携=教員免許更新にらみ」ほか

マイスターです。

日曜日になりましたので、恒例のニュースクリップをお届けします。

教員免許の更新講習で連携。
■「中国地方の国立大が連携=教員免許更新にらみ」(時事通信出版局)
http://book.jiji.com/kyouin/cgi-bin/edu.cgi?20071026-2

島根、岡山、広島など中国地方の国立大学5校は、2009年度の教員免許更新制スタートをにらみ、更新講習を連携して実施するための広域連携プロジェクトを立ち上げる方針を固めた。更新制導入後は毎年およそ10万人の教員が講習を受けることとなり、特に過疎地域などで、受け皿を十分確保できるか懸念材料になっている。そんな中での全国初の取り組みで、注目を集めそうだ。

(略)各大学の教員の相互融通や事務の一元化などで、講座開設のニーズを満たしたい考えだ。11月1日に、各大学の教育関連学部長らが集まり、連携内容について正式に決める予定。

文科省によれば、更新講習開設のための大学連携は5大学が初のケース。過疎地域、へき地や離島対策としても、同省も成果を期待を寄せており、08年度から始まる更新制の試行事業の中などで、5大学の取り組みを後押しする考えだ。

(上記記事より)

島根、岡山、広島、鳥取、山口という5つの国立大学による、新たな連携の試みです。

確かに、質の高い更新講習を行おうとすれば、ある程度の規模の人数を集めることは欠かせません。
しかもこの5大学は、山陰地方や離島など、地理的に講習を行うことが困難な地域もカバーしています。
非常に意義のある連携ではないかとマイスターは思います。

大学で世界史を。
■「『社会科』を問う(7)面白い世界史 探る大学」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20071024us41.htm

大阪大学には今年度前期、「市民のための」と銘打ったアジア史とヨーロッパ史の科目が開講した。高校での世界史の必修逃れ問題を受けた、主に世界史未履修者が対象の教養科目だ。
毎回の小テストでは、「モンゴル帝国と現代のアメリカ合衆国との共通点を説明せよ」といった問題で学生に考えさせた。期末テストは論述と言葉の穴埋め問題で、教科書、ノートは持ち込み可。「暗記より、その場で調べるスピードの方が大事」という担当の桃木至朗教授(52)は世界史の教科書執筆者でもある。

(略)京都大学文学部では昨年から、高校の世界史教科書に近い教材や、歴史教育用のコンピューターソフトを学生に作らせる講義をしている。「学生たちが高校でこんな風に学びたかった」と思う教材作りを目指す。

やはり、世界史教科書執筆者である杉本淑彦教授(52)のゼミ生を中心に約15人が参加。19日は教科書会社の元スタッフを招いて、教材作りの経験談を聞いた。

(上記記事より)

世界史の履修逃れ問題が問題になった中で、おぉっと思うニュースです。

・「阪大が未履修者に“高校世界史”、一般教養で来春開講」(2006年11月18日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50264351.html

大阪大学のニュースについては、以前にもご紹介させていただきましたが、京都大学の「教科書作り」も興味深い取り組みです。
歴史を学び、歴史から学ぶという体験は、すべての人間に大切だとマイスターは思います。

「歴史は高校まででもうお腹いっぱいやったから、もういいよ」ではなく、大学でも、あるいは大学を卒業した後でもずっと歴史から考え続けられるよう、こうして高等教育の段階で考える場が得られるのは、非常に良いことだと個人的には考えるのですが、いかがでしょうか。

就職ミスマッチの解決法は。
■「就職のミスマッチを減らせ!! 大学が早期退職防止策」(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2007102302058479.html

2009年春の入社を目指す就職活動が本格化している。売り手市場で大学新卒者は就職しやすくなる一方、1年以内に退職する人が15%も。大学は、独自の早期退職防止策に知恵を絞り、再就職を支援する会社を設立するなど、面倒見の良さをアピールしている。

「考えていたような仕事ができない」。今春、東京都内の私立大学を卒業した男性(23)は七月、入社したばかりの大手電機メーカーを退職した。就職活動では大手の金融、商社などからも内定をもらい、周囲からもうらやましがられた“優秀”な男性だ。入社後、営業に配属されたが、思うように営業成績も伸びず、「こんなはずではない」と悩み、結局、退職を選んだという。

この男性の大学の就職支援担当者は「最近、就職して半年後ぐらいから相談に訪れる卒業生が増えた。就職活動で苦労がない分、ちょっとした壁にぶち当たると悩んでしまう」と話す。

厚生労働省の調査では入社三年以内に退職する大学新卒者の比率は一九九〇年代前半まで20%台で推移したが、二〇〇三年卒では35・7%に。一年以内に退職する人も〇三年以降は常に15%を超えている。

明治大の就職・キャリア形成支援事務室の鍵山義尚さんは「スキルアップの転職もあるだろうが、ミスマッチも相当ある」と指摘。「(一九九七年から就職協定が廃止され)採用活動が早まった影響で、就職対象の企業や業界をあわてて絞り、就職活動が表面的になっている」と分析する。

学生気質の変化もミスマッチを招く一因になっている。会社の内情を聞く絶好の機会になるOB訪問をためらう傾向があるという。法政大キャリアセンターの勝又秀雄次長は「『(OBに)メールでアポ取ってもいいですか』と質問する学生もいる。コミュニケーション手段として電子メールを多用する最近の学生は電話を嫌がり、OB訪問を面倒くさがる」と話す。

(上記記事より)

就職活動の「七・五・三」現象というのを、どこかでお聞きになった方は多いのではないでしょうか。
中学卒で就職した方の7割、高卒で就職した方の5割、大卒就職者の3割が、就職してから3年以内に辞めるという、実際に起きている現象のことです。

(参考)
■「若チャレ!若者の人間力を高めるための国民運動|若者雇用関連データ|データが語る若者のシゴト事情」(厚生労働省)
http://www.wakamononingenryoku.jp/situation/

記事で書かれているのは、まさにこの七・五・三の通りの現実です。

こうした問題を「最近の若者はなっとらん」の一言で片付けるのは簡単でしょうが、それを言ったところで何にも解決しません。
それに、学生の父親世代が就職活動をしていた頃と今とでは、社会状況も、経済状況も、企業の状況もまるで異なります。比べること自体に、あまり意味がないような気もします。

今後はこれまで以上に、「一つの会社と長くつきあっていく」という前提自体に無理が出てくると思われます。
実際に働いてみないとわからないことは確かにありますし、社員の雇用を長く維持できる企業がそもそも減っています。長く働いていた方が得という前提も、以前とは比べものにならないくらい崩壊しています。

だとすると、(自分を含め)教育関係者が行うべきなのは、

「安易に楽な選択肢を選ぼうとせず、恐れずにまずは何かの仕事の現場に飛び込んでみること」

や、

「万一その仕事が向いていなかったときも、安易な方向に逃げてしまわずに、自分を成長させるような次の挑戦を見つけて早く取り組むこと」

などの大切さを、学生に伝えていくことなのかな、と個人的には思います。

大きな変化になるか。
■「教育再生会議が福田政権で初会合、『小・中9年制』検討で一致」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20071024AT3S2302O23102007.html

教育再生会議(野依良治座長)は23日、首相官邸で福田政権発足後初めての総会を開き、論議を再開した。柔軟な教育カリキュラムを編成できるようにするため、現行の小中学校の「6.3」制を見直し、9年制の義務教育学校の創設などを検討することで一致した。

(略)学校制度の見直しは小中一貫の9年制学校をつくり、地域の実情に応じて「4.3.2」などの学年のまとまりを設ける案を軸に検討する方向。大学への飛び級入学を促進するため一段の要件緩和を進める必要があるとの意見も相次いだ。一方、年末を予定していた三次報告のとりまとめ時期を巡っては「もっと時間をかけるべきだ」との異論も出た。

(上記記事より)

「6・3・3・4制」を見直そうという議論自体は以前から存在していましたが、福田内閣で活動を再開させた教育再生会議が、いよいよ本格的にそのあたりの検討に入ったとのことです。
大学の「4」は、国際的標準を考えるとあまり動かないでしょうが、幼稚園から小学校、中学校、高校までの範囲は、これから見直しが進んでいくかも知れません。

いまや公立学校でも、中学と高校を合わせた「中等教育学校」が実現しているくらいですし、私学では小学校から高校までを「4・4・4」なんて区切りにするような提案も、耳にするようになっています。

教員免許など、色々とあわせて考えなければならない問題もありますが、今は、なんとなく色々な人が「もっと良い分け方もあるのではないかな」と感じている、そんな状況なのでしょう。
(小学校段階から英語教育を行うといった議論もありますが、そういった点を変更するとしたら、なおさら「6・3・3」ではないやり方が適してくるかも分かりません)

もしこのあたりの仕組みを大きく変えるのだとしたら、あわせて、学校運営に関する様々な問題(教員の労働環境、校長の裁量権、外部組織との連携etc.)も解決できるように、抜本的な改革にしてほしいところです。

中国で、学長が教授をリストラ?
■「中国の名門大、研究不熱心な教授を講師に降格」(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/article/20071028000000

中国東北部の名門大学、吉林大学で2005年にある「事件」が起きた。新たに就任した周其鳳学長(60)=写真=が実力のない教授70人余りを助教授や講師に降格させてしまったのだ。同校が1946年に設立されて以来、初めてのリストラだった。

周学長は教授や学者の出身ではなかった。中国で大学の修士・博士課程の以上の高等教育を管轄する国務院学位委員会の副事務局長を経て、吉林大学長に抜てきされた。官僚出身の学長が既得権にあぐらをかいている教授に鉄ついを加えたことで、同校には改革の嵐が吹き荒れた。周学長による改革の試みは、中国国内でも異例のことで、今でも各大学がその推移を見守っている。

(上記記事より)

こういった問題が議論される際には、「どういう基準で教員を評価するのか」という点が大きな論点となります。
その辺りが詳しく書かれていないので何とも言えないのですが、しかし1つの大学で70人の教授をいっきに降格というのは、とてつもない強権発動ですね……。

この学長は「国務院学位委員会」という、どうやら高等教育を管理する官僚機構の出身の方のようですが、これは中国の官僚の権力の大きさを示すニュース、でもあるのでしょうかね……。
しかし本当に、一体どういう基準で決まった「70人」だったのでしょう。うーむ。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログをごひいきにしていただき、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。