マイスターです。
大学教育において世界で最も高い評価を受けている国は、現在のところアメリカでしょう。
国際的に知られているいくつかの研究大学を始め、評価の高い大学が数多く存在し、研究活動も活発に行われています。教員も学生も、世界中から優秀な人材が集まっています。
そんなアメリカの大学で博士号、特に研究者にとっては欠かせないPh.Dを取得しようと考える方は、少なくないでしょう。
さて、アメリカでPh.Dを取得する学生の出身大学を調べた結果、驚くべきことが判明しました。
【今日の大学関連ニュース】
■「米博士号取得者の出身校トップは清華大学、北京大学」(人民網日本語版)
今日の米国で、博士号の取得者に出身校を問うと、最も多い回答は「清華大学」だろう。これには中国人も驚き、親しみさえ感じるだろう。「中国青年報」が伝えた。
米国国立科学財団(NSF)調査チームのデボラ・コリンズ氏の助けで本紙の記者は今年7月に完成したばかりの「米国大学博士学位取得者総合報告」を手にした。
この最新の報告書によると、06年度に全米で博士号を持つ4万5596人を分析した結果、現在米国の博士を「生んだ」大学の上位3校は、第1位が清華大学で571人、次に北京大学で507人、第3位がカリフォルニア大学バークレー校で427人だった。
それに続く中国の大学は、復旦大学と中国科技大学(163人)、南京大学(155人)、南開大学(147人)、上海交通大学(144人)。
(上記記事より)
アメリカで博士号を取得している大学院生の出身大学ですが、アメリカ屈指の名門大学、UC Berkleyを抜いて、1位は中国の清華大学、2位は北京大学だそうです。
アメリカのNational Science Foundationの調査結果によるものです。
ちなみに、この記事では触れられていませんが、4位は韓国にある国立ソウル大学。
その後、アメリカのCornell University 、 the University of Michigan と続きます。
(参考)■「Top Ph.D. Feeder Schools Are Now Chinese」(Science)
(※全文を閲覧するのは有料)
アメリカの大学院にはアジア系の学生が非常に多いと聞いてはおりましたが、出身大学別で1位、2位、4位というのは、衝撃ですね。
まるでアメリカの大学院は、中国・韓国の学生のためにあるかのようです。
↓こちらのブログの記事には、興味深いグラフが掲載されています。上記の「Science」に掲載されているグラフと同じものです。
■「US PhD’s & Chinese Alma Maters」(Beerkens’ Blog)
もともと多かった清華大学、北京大学出身者が、2005年、2006年で急増しています。
両大学が同じようなペースで急激に伸びているあたり、中国の政策による影響も大きいのでしょう。
日本には優れた大学院がいくつもあります。今のところ各種の大学ランキングを見る限りでは、研究ではアジアでもトップ水準の位置にあると言って差し支えないでしょう。
ただその結果、国外に留学する学生が増えないという結果を生んでいるのだとしたら、少し考えものです。
■悩める中国の科学技術人材
↑以前の記事でご紹介したように、こういった政策によって、中国国内などで新たに生まれている課題もないわけではありません。
ただ、上記の記事からは、精華大学や北京大学、国立ソウル大学などの卒業生達が、アメリカで極めて大きな存在感を発揮しているということがわかります。
これは、中国や韓国によっては、非常に大きな財産になるはずです。
アメリカの社会においても、Ph.Dを取得するような人材は、学術や経済、政治などで国を支えていく知的エリート層です。
大学院において築かれた人脈のネットワークは、その後、様々な分野で活かされることと思います。
中国や韓国のエリート層と、アメリカ、および世界中からアメリカにPh.Dを求めてやってくる各国のエリート層とは、大学院という場で接点を持っているわけです。
そういったネットワークでの存在感という点では、日本は中国・韓国の後塵を拝しているようです。
果たして、このままで大丈夫でしょうか。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。