東京経済大学の、ちょっと変わった大学紹介冊子

マイスターです。

ちょっと画期的なものを見つけたので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「絵本仕立てで、大学選び紹介。東京経済大(東京)」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20060509wm04.htm

■「ヘンサ値から、ヘンナ値へ。『大学の学びガイドブック』の活用法。2006年3月26日オープンキャンパス講演会記録」(東京経済大学)
http://www.tku.ac.jp/report/detail.php?kbn=R&articleID=RP00054&secID=1
———————————————————–

ちょっと前に読売オンラインの記事で知って、興味を持ちました。

東京経済大学(国分寺市)は、高校生向けの小冊子「大学の学びガイドブック」を作成した。同大そのものをPRするような記述は排した上で、大学選びの総合的なポイントを紹介。どの学部で何が学べるかの説明を絵本仕立てにするなど、従来の大学紹介とは異なる斬新なつくりが特徴だ。
読売オンライン記事より)

これはおもしろそう!というわけで東京経済大学のwebサイトを拝見したところ、↓ここから請求できるとのこと。

■「『大学の学びガイドブック』の請求はこちらから!」(東京経済大学)
http://www.tku.ac.jp/news/detail.php?kbn=N&articleID=NW00310&secID=1

というわけで、さっそく送っていただきました。
(進学と関係ない人間が請求しちゃってすみません東京経済大学様。職業欄に「大学教職員」って書いちゃいました…)

全40ページ。表裏どちらからでも読み始められる「リバーシブル装丁」で、右開きが学部選びのための「学部編」、左開きが大学選びのための「基礎編」(読売オンライン記事より

というのは記事の通り。
でも実際に手に取ってみると、「思っていたより薄いなぁ」という印象です。
大学の案内パンフレットより、ずっと簡潔にまとめられています。

読んでみると、確かに画期的です。

「基礎編」は、文字通り、大学というものについての簡潔な説明で構成されています。

●「大学」で学ぶ
●「授業」で学ぶ
●「自分」で学ぶ

というページでは、大学とはどういうところか、「学部」「学科」って何か、「シラバス」や「履修登録」ってどういうものか、といったことが、それぞれ短い文章で簡潔に説明されています。

●新しい「仲間」
●生活の「支え」

というページでは、ゼミ仲間やサークル、教員との関わり、事務の窓口(!)、ランチタイム、自分の居場所の作り方、アルバイトや奨学金、などについて説明されています。

●「未来」の設計
このページでは、資格やキャリアサポート、インターンシップといったことのほか、大学院のことの説明、そして結婚・家庭についても、簡潔にメッセージが書かれています。

高校生は、「大学」というものをどのように理解しているのでしょうか。
考えてみれば、「大学ってどんなところ?」という疑問に対して、簡潔な説明をしてくれる人は、高校生の周りには案外あまりいないのですよね。

親や高校教員の話は、多くの場合、彼らの実体験が元になってますから、良くも悪くもちょっと偏ってます。身近な方から、熱く大学イメージを語ってもらうことも大切ですが、「大学という組織の全体像をうまく簡潔に説明する」というのも、やはり重要です。

一方、大学が発行するパンフレットは、「その大学のウリ」を説明することに終始していて、もっと基本的な、一般的な基礎知識を語れていませんでした。

東京経済大学のこの冊子は、そういう場所を埋めるメディアになっていると思います。

「学部編」は、「世の中にどのような学問があるか」を、ストーリー仕立てで簡単に解説するという内容です。
絵本タッチで書かれていて、10分かそこらで簡単に読めます。

冊子の全体像は、以上のようなところです。
「大学の学び GUIDE BOOK」というタイトルにふさわしいですね。

本文中にも表紙にも、「東京経済大学」という名前は出てきませんから、高校で、進路指導の一環として配布されることを狙っているのでしょう。
(※表紙の背景に、うっすらと「Published by Tokyo Keizai University」の文字が入っているくらいですが、ほとんど目に入らないレベルです)

しかし、そんな純ボランティアなだけの取り組みというわけではありません。

同大そのものをPRするような記述はないが、栗原義明・同大広報課長は「信頼のおける内容を読めば、この大学も選択肢に入るかもしれない。長い目で見て大学への評価につながるのでは」としている。(読売オンライン記事より)

…と、読売オンラインの記事にはありますが、そんなことはありません。

間接的にではありますが、ちゃんと、東京経済大学をアピールする冊子として演出されている部分があります。

例えば、「基礎編」の「新しい『仲間』」というタイトルのページ。大学で仲間をつくりましょう、といった内容なのですが、

<大学のサイトを見て、英語・中国語・韓国語などのページもあるかを確かめましょう。>

という注意が、「Check Point」として書かれています。
そして東京経済大学のサイトは、実はかなり珍しい英・中・韓対応のサイトなのです。
読んでいる高校生は、「そうか、韓国語のサイトがない大学はダメなんだ」と思うかも知れませんね。(あるかを確かめましょう、ですからね)

また、「仲間意識」という欄では、

<大学のウェブサイトに、大学スタッフの「コラム」「ブログ」がのっているような大学は、学内がオープンでみんなが自由に発言できることを示しているといえるでしょう>

といったことが説明されています。
東京経済大学のサイトにちゃんとコラムが用意されているということは、言うまでもありません。

「学問編」での演出意図は、もっとストレートです。
表向きは、あらゆる学問の説明をしている冊子ということで報道されていますが、実際に読んでみると、経済学、経営学、法学、コミュニケーション学の説明が内容の大半です。(政治学と社会学のことも触れられていますが、やっぱり物語の登場人物が特に強い関心をおぼえているのは、上記の4学部のようです)

この4学部が、東京経済大学の学部学科構成にピタリ一致するのは、これまた言うまでもありません。

ただ、それでもマイスターは、この冊子は非常に良い出来だと思います。

上記のような演出方法は、広報戦略としてはとても正しい。

広報として正しいというのは、読み手にとってもメリットが大きいという点で、です。こういう情報を高校生は欲していたはずなのに、今までは誰もその要求に応えられていなかった。そこに(さりげない自校の宣伝も兼ねて)対応できているのですから、それぞれにとって意義が大きいのです。こういうメディアはちゃんとどこかで活用されます。

実際、マイスター自身も企業相手に同じことを提案し、制作していました。
(調べものをする人にとってはありがたい情報で、でも実際には、自社の技術やコンテンツをさりげなく紹介しているという専門用語集や専門分野のリンク集を山ほど作りました)

こういう「表向きは宣伝に見えない」という手法は、メディアに取り上げられやすいですし、口コミで伝えやすいのです。
実際、読売オンラインが詳細に記事で解説してます。この冊子を取り寄せ、生徒に配布する高校も出てくるはずです。
結果として東経大に来てくれるかどうかはともかくとして、高校生が自分の進路を考えるときに役に立つのなら、それでいいんじゃないか、なんてマイスターなどは考えます。

他の大学でも、こういう発想で広報活動をどんどん展開していっていいのではないでしょうか。見ならうべき事例だと思います。
こういった広報企画が通る東京経済大学は確かに、学内がオープンでみんなが自由に発言できる大学なのでしょう。

ぜひ、企画を進めたみなさまとお話ししてみたいと思うマイスターでした。