マイスターです。
大学関係者は必読だ、と思える本が発売されましたので、ご紹介したいと思います。
……ただし最初に、
「この本を読んで気分を害されたり、ショックを受けたり、学内の人間関係が荒れてしまったりしても、マイスターは責任を負えません」
と、お断りしておきますので、ご了承いただける方だけご覧ください(^_^;)
最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情 (光文社新書 318)
タイトルを読んだだけでも「うおっ、過激だな」と思うこの本は、『AERA』などで大学、および就職関連の記事をよく書かれているライター・大学ジャーナリスト、石渡嶺司氏の新刊です。
「全国の大学を執筆して回り、2007年現在、250校を超える」と、同書の筆者プロフィール欄には書かれています。
おそらく日本で、最も大学に取材申し込みをした回数の多い方のひとりでしょう。
そんな石渡氏が、客観的な視点で、日本の大学の「崖っぷちぶり」について論じている本です。
本を開いてみましょう。タイトルだけではなく、本文も刺激的です。
何しろ、本を開いて最初に読む一行が、「大学はアホっぽく、学生はバカばっか」という小見出しです。
読んでいると、「バカ学生」という単語が、数え切れないくらい出てきます。
大学関係者が「大学改革」として行っている数々の取り組みも、「アホっぽい」と切って捨てます。
大学関係者の皆様の中には、最初の2~3ページで、「なんだこれは。何にも大学の事情が分かっていない、ただ口が悪いだけの本じゃないのか」なんて思われる方も多いかも知れません。
しかし、そんなリアクションもすべて筆者の計算のうちです。
ぜひ大学関係者こそ、そのまま読み進めていってください。
過激と思えるのは最初のうちだけで、そのうち、耳の痛い、しかし鋭く事実をついた指摘の数々に、納得させられてくると思います。
この本は、大学関係者が書いた大学分析本とは毛色が違います。
大学関係者の書いた本は、国家規模の視点から政策的に大学を論じていたり、自校の取り組みを自画自賛する内容だったり、大学業界用語がずらーっと並んでいたりと、どちらかというと「内向き」な内容であることが多いと思います。
大学関係者同士でしか読まれない本ですね。
一方この本の記述はいずれも、
「世の中から、大学はどう見られているか?」
という、その一点から発せられています。
大学関係者の皆さんは、なるほどマジメに努力をされているかも知れない、しかしそれって、結局受験生や社会から見て、どうなんでしょう?
……と、突き放した視点で大学を分析しています。
どちらがいいとか悪いとかいう訳ではありません。どちらも必要です。
ただ、大学関係者には、どうも内向きな言葉で、内向きな見方をする傾向が強いと、マイスターも普段からよく感じています。外からの目と内からの目、両方の見方が大事だとマイスターは考えるのですが、そのバランスがとれていないように思えるのですね。
そしてそれが、しばしば大学にとって良くない結果につながっていることも多いのではないかと思うのです。
ですからこの本を読むと、大学関係者は、普段あまり気にかけていない部分や、普段は見ないフリをしている部分を、ちくちくやられたような気になるかも知れません。
しかしだからこそ、この本の、「突き放した視点からの指摘」は、大学関係者にとって非常に貴重であるはずです。
もちろん、すべての記述が絶対的に正しいというわけでもないでしょう。マイスターも、読んでいて「そうかなぁ」「それはちょっと違うんじゃないかなぁ」と感じる箇所はいくつかありました。人によって、納得できる部分と、できない部分はあるでしょう。当たり前です。
ただ、それでもなお、大学関係者が読んでおくべき本の一冊ではないかと思うのです。
特に、
「大学の情報隠蔽体質」
「大学の広報機能未発達」
という二点についての分析は、個人的には「よく書いてくれました!」と思う内容でした。
もしマイスターがまだ大学職員であったなら、拡大コピーして学内で回覧して欲しいです。
大学関係者がアタリマエと思っていることと、世間のそれとに大きな開きがあるということを、大学ジャーナリストが鋭く指摘してくれています。
(ちなみに「情報隠蔽」の「情報」には、就職率や卒業率といったものも含まれています。ですから広報関係者だけではなく、教務課や就職課といった、学内のすべての部署に関係する話です)
ぜひ、大学関係者の皆様に、一度は手にとっていただきたい本です。
ただ、最初に申し上げたとおり、万が一この本を読んで気分を害されたり、ショックを受けたり、学内の人間関係が荒れてしまったりしても、マイスターは責任を負えません。
というか、これで荒れてしまうような大学は、十分な情報公開や、充実した広報機能を備えることは難しいと思います。
以上、マイスターでした。
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(おまけ)
この本では様々な人々の意見が紹介されています。著者自身が数多くの取材で集めたものもあれば、各種のメディアから引用されたものもあります。
その中に、なんと、このブログも含まれていたりします。
新書の参考文献欄に、
マイスター「大学プロデューサーズ・ノート」
と書かれる日が来るとは。
本文中に、ブログの記述が引用されています。どの箇所かは、ぜひ読んで確かめてみてください。
(だからお勧めしている、という訳ではありませんので、そこは誤解のないようにお願いいたします。わざわざ書くまでもないことだとは思いますが、念のため……)
今日本屋で本屋で見かけて「ぬ!」と思った一冊でした。ちゃんと買って読んでみます。