京都大学 自習室を24時間開放

マイスターです。

2日ほど前、深夜遅い時間にファミリーレストランに入ったのですが、店内の半分くらいが埋まっておりました。

お客さんの多くは、大学生と思わしき3~4人のグループ。テーブルの上に拡げられているのは、ノートや参考図書。試験のシーズンになり、友達同士で一緒に勉強しているのですね。
わいわいがやがやと、あれこれ相談し合いながら勉強している様子は、ちょっと楽しそうでもありました。

学生時代の思い出って、こんな時間の方が案外、、後々まで印象に残っていたりするのですよね。

さて、今日は、こんな話題をご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「京大図書館 眠らない 来年1月、自習室24時間OK」(京都新聞)

京都大付属図書館(京都市左京区)は24時間利用できる自習室を新設し、来年1月から運用を開始する。「勉強時間は昼間だけとは限らない。図書館は夜中も開けてほしい」との学生の要望に応えた。全国の主要総合大学で図書館を24時間開館するのは初めてという。
24時間の自習室は、図書館の1階部分を改修して書庫や他のスペースと仕切り、約90席を設ける。持ち込んだパソコンを使えるよう無線LANを配備するほか、夜食を取ることのできる飲食コーナーも設置する。利用は学生に限り、夜間は警備員を配置する予定。
閲覧や自習のため約1000席ある京大付属図書館は平日午前9時から午後10時までの開館時間に平均約3100人が利用する人気ぶり。24時間利用も以前から要望が高かったが、学生の健康面を考慮して実現していなかった。今回、社会の変化や、多様な要望に図書館としても応えるべきだとの判断から、24時間開館に踏み切る。
(上記記事より)

京都大学の話題です。

記事のタイトルを見ると、図書館全体が24時間化するように思えますが、実際には、書庫とは仕切られた「自習室」だけが対象。
ですので、正確には、「京大が24時間オープンの自習室を開設」といったところでしょう。

しかしながら、夜食を取ることのできる飲食コーナーや無線LANなど、深夜の勉強や研究には、なかなか便利そうな環境です。

4年生や大学院生には「研究室」という居場所もありますが、学士課程の前半では、夜に勉強や研究に打ち込む場所もありません。
試験勉強をする程度なら深夜レストランでもいいでしょうが、調べ物が必要な作業の場合、インターネットが欠かせません。
学内LANを通じて、学術データベースに入れるような環境が整備されれば、学生からは重宝されるでしょう。

↓以前にも、同じような事例をご紹介しました。

■ひろがっていく、「24時間キャンパス」の取り組み

食堂と多目的スペースを24時間開放するという、嘉悦大学の取り組み。
こちらもやはり、無線LANが整備された環境でした。

考えてみれば自分も典型的な「夜型」でしたので、学生時代、勉強や研究に集中していたのは深夜でした。
建築学科でしたので、授業の設計課題に取り組んだり、友達とコンペに出すための案を考えたりしていたのですが、それもやはり、夜をこえて行われることがほとんどでした。

自分だけでなく、周りにいる大学生には、

「昼は授業、その後はアルバイト、深夜に勉強」

……という生活を送っていた人が多かったような。
もし、深夜の勉強やグループワークが大学で行えたなら、とても助かっただろうなと思います。
(実際、学部卒業後に進学した大学院では、キャンパスが24時間開放されていたので、非常に研究がはかどりました)

そんな現代の学生のライフスタイルを考えると、「その気になれば24時間、キャンパスで勉学に打ち込める」という環境も、そのうち当たり前になってくるのかも知れません。

ところで今回のニュースをみて、マイスターは、「京大っぽいなぁ」と思いました。
京都大学が、別にこれまでこういった取り組みをしていなかったにもかかわらず、です。

京都大学は、日本を代表する研究大学の一つ。
研究者のタマゴ、あるいは「研究者的な要素を持った」人材を送り出すことが、同大のミッションのひとつでしょう。

研究者を目指すには、「昼も夜も忘れて研究に没頭する」というプロセスが必要不可欠だとマイスターは思います。大学の先生にも、同じような意見をお持ちの方が少なくないのではないでしょうか。
その意味では、「その気になれば24時間、いくらでも研究に打ち込める環境」が学内にあるというのは、研究大学にとっては非常に大事なことだと思います。

京都大学は、自由闊達なアカデミズムを大事にする学風だと聞きますが、そんな京大らしさを育てる装置の一つとして、24時間オープンの自習室というのは、方針に合っていると思います。
京大の尾池和夫総長が以前、メディアの取材に対し「自由な放し飼いが大事」と語っておられましたが、なるほど、「24時間空いている空間」というのも、そんな学風をつくる仕掛けの一つかも知れません。
大学の教育方針が、施設の運営ルールひとつにも表現されるということですね。

逆に言うと、「時間を規則正しく管理できるビジネスマンの育成」を謳う大学には、もしかすると、敢えてキャンパスを定時に閉めるというところもあるかもしれません。

嘉悦大学のように、自分の勉強でも授業の準備でも、あるいは学外コンペなどのためのグループワークでも、とにかく何かに本気で打ち込む熱い大学時代を過ごそう! という教育方針を打ち立て、その結果として24時間キャンパスという施策を実行する大学もあります。

時間を忘れて自由にものづくりに打ち込む学生を育てる、という方針で「夢工房」を整備した金沢工大の事例は有名ですが、「24時間キャンパス」にも同じような思想を感じます。

大事なのは、大学の教育理念や教育目的に合い、教育活動を助けるように機能しているかどうかでしょう。

人間というのは、周囲の環境から多くの影響を受けるもの。
ですから、「環境の設定」は大事だとマイスターは思います。

昼夜忘れて研究や勉強に打ち込める施設があり、多くの学生達がそういった生活を実践している環境で学生生活を過ごしたら、その人にとっては、それが当たり前になると思います。研究は深夜まで行うものだし、学生時代は、週に一度は大学に泊まり込んで調べ物や勉強に没頭するものだ……というのが「常識」の環境にいたら、その人にはそれが常識になるんじゃないでしょうか。
「大学は授業が終わったら帰るものだ」とか、「大学は、深夜は入れないのだから、夜は家で過ごすものだ」という環境が常識になっている人とは、行動の姿勢が大きく違ってくるかもしれません。

「キャンパスで人を育てる」ということを考える上で、24時間キャンパスの取り組みからは、色々とヒントが得られるのではないでしょうか。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • マイスター様
    大変参考になる情報をいつも提供していただき、ありがとうございます。
    ご存知かもしれないのですが、豊橋技術科学大学の図書館は基本的に24時間開館です(自習室のみだけでなく、図書館全体です)。以下のリンク先の左メニュー内の「利用案内」→「開館日」をご覧ください。
    http://www.lib.tut.ac.jp/
    夜間の入館には学生証とパスワードが必要になります。また、書棚の整理で年に何回かは24時間使用ができないこともあります。
    日本の大学で図書館全体が24時間開館というのはかなり珍しいことだと思うのですが、あまり知られていないように思っています。もっと宣伝した方が良いのかもしれません。私自身も赴任するまで、24時間開館のことについては知りませんでした。このように課題もありますが、夜の12時以降も図書館に明かりがともっていることがほぼ毎日のようにあり、他大学でも図書館の開館時間が長くなればよいなあと感じています。