東大後期日程試験が文理一本化 入学後に進路選択

早期の文・理分けには反対のマイスターです。

そんな観点で、とても興味深いニュースがありましたので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「東大が科類分けずに募集 来春入試後期で100人」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/gakko/070724/gkk070724001.htm
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東大は24日、来春の入試要項を発表した。後期日程は文科1類、理科1類など科類ごとではなく、初めて一本化し100人を選抜。合格後に理科3類(医学部進学)以外の科類を選ぶことになる。英語の読解力や記述力、数学の応用力、論述する際の思考力や表現力などを測る3種類の総合科目が出題される。

(上記記事より)

東大の後期日程が、医学部を除き一本化されるとのこと。合格後に文科一~三類、および理科一~二類から、自分の進路を選べます。
事実上、文系、理系という枠を超えた進路選択を可能にする制度です。

では、実際にどんな試験が課されるのでしょうか。
平成20年度の入学者選抜要項を見てみましょう。

■「平成20年度東京大学入学者選抜要項(PDFファイル:804KB)」(東京大学)
http://www.u-tokyo.ac.jp/stu03/pdf/H20_senbatsuyoukou.pdf

【総合科目Ⅰ】
英語の読解力と記述力を見る。
(英語読解・記述を通して,表現力,構成力などを審査する。)

【総合科目Ⅱ】
事象の解析への数学の応用力を見る。
(自然や社会のさまざまな事象を数学的に解析することを問う。
ここで用いられる数学の知識は高等学校又は中等教育学校における数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学A・数学B(数列,ベクトル)・数学C(行列とその応用,式と曲線)にわたるが,この科目では数学の総合的な応用能力を審査する。)

【総合科目Ⅲ】
文化,社会,科学等に関する問題について論述させ,理解力・思考力・表現力を見る

(上記要項より抜粋)

上記の三科目が、一本化された東大後期日程試験になります。
なるほど、バランス良く、優れた人物を選抜しようとしている様子がうかがえます。
国際基督教大学(ICU)の入試を彷彿とさせる内容ですね。

この種の試験では、試験問題の適正化という課題がつきものです。
つまり、

「どういった問題で人物を評価すれば、入学後に活躍する学生を選抜できるか」

ということについて、分析し、研究することが必要になってきます。
入試問題の得点情報と学生の入学後の成績を照会し、より優れた学生を選び出せる入試問題になるよう、集まったデータをフィードバックさせるのです。

そこまで計画に入れた上で、東大がこの入試システムをスタートさせるのだとしたら、なかなか興味深いです。
次世代のリーダー候補生や、入学後に周囲を刺激する学生を選び出すための、実験的、戦略的な試みだと言えましょう。
他大学のそれとはかなりスタイルが違いますが、東大なりのAO入試と言えるのかも知れません。

なお、上記の要項には、以下のような但し書きがついています。

〔入学後の教養学部における講義について〕

(1)前期課程( 1 ・2 年次)理科各類…前期課程の理科各類では,数理科学,物質科学(物理学,化学)及び生命科学が必修科目に含まれている。
数理科学では,数学Ⅰ,数学Ⅱ,数学Ⅲ,数学A,数学B,数学Cを入学までに学習していることを前提とした講義がなされる。

(上記記事より)

理科一類、二類に進学する場合、入学後は数学全範囲履修済みという前提で授業が行われますので、そこは受験生の自己責任でお願いします。
もっとも【総合科目Ⅱ】が、数学の全範囲を対象とした応用力試験ですから、元々数学が苦手な方は入試を通らないような気もします。

個人的には、この試験で合格した学生達がどのように活躍するか、あるいはあまり活躍しないのか、気になります。

以上、マイスターでした。