小学校から高校生まで、8月31日を迎えるまでに宿題が終わっていたためしがありません。しかも年を追うごとに、だんだん着手が遅くなっていました。
高校生のときなんて、9月に入ってから宿題をやっていた気がします…。
(提出日の早い順に片付けていくという、がけっぷちな学期始めです。背水の陣も、こう慢性化すると始末に終えません)
そんなわけで、小学生のときは、「絵日記」の宿題に困りました。そう、「天気」欄ですね。ちゃんと毎日記録をとっていないので、晴れだったか雨だったかが思い出せず、新聞の天気予報欄を見て埋めるというありさまでした。
でも、クラスメートもみんな状況は似たようなものだったらしく、同じ町内に住んでいるはずの友達同士で、みんな天気の記録が違ったりしていました。
宿題をチェックする先生は、苦笑いしていたことでしょう。
一週間にわたってお送りした「大学の歴史をアピールしよう!」特集も、とりあえずは今日で終わりにします。あまり長く同じテーマを扱っていると、読んでくださるみなさまも、飽きてしまうでしょうし。
最終日の本日は、
「もし自分が、大学の歴史をアピールするための担当者になってしまったら?」
という内容をお送りたいと思います。
このトピックについて、企業の皆様にお話をすることがあるんですが、企業の場合と大学の場合とでは、若干、重きを置くポイントが違ってきそうです。
企業の場合、一番難しいのは、「記録を掘り起こす」という作業なんです。
普通、自分の会社が100年後も存続しているなんてことは、働いている社員達すら予想してないんです。ゆえに誰も、会社の歴史をちゃんと記録していないのですね。
創業時は、特にそうです。
企業というのはいずれも、最初は社員数名からスタートする、ベンチャー組織です。
SONYだって松下だってホンダだって、社長がこじんまりとはじめた会社でしょう。長い歴史を誇る名門、三菱グループだって、岩崎彌太郎までさかのぼれば、れっきとしたベンチャーですからね。
そして創業時の混沌とした時期から、記録をきちんと残し続けている会社なんて、まずありえません。
上記のような大企業なら、後にちゃんとお金と時間をかけて調査をし、社史をまとめることも可能でしょう。
しかし、そうした取り組みは、どの企業でもできることではありません。
したがって企業の場合、「歴史をアピールする」というプロジェクトをスタートさせたら、最初にやるのは記録の掘り起こしなのです。
日々の記録なんて、そう残っているものではありませんから、これは大掛かりでやっかいな取り組みになります。
一方、大学はどうでしょうか。
大学の場合、どんなに規模の小さな組織でも、
「本学は、将来数百年にわたって、ずっと存続していくのだ!」
という前提で組織を運営しているのが、普通なのではないでしょうか。
むしろ「組織としてずっと存続し続ける」という点に魅力や意義を感じて大学を作る人が多い、というのが正確かもしれませんね。
50年後に学校がつぶれている、なんて考えた大学創設者は、あまりいないと思います。改めて考えてみると、けっこうすごい前提です。
(もっとも最近は、大学がつぶれる可能性が高くなっているので、このあたりの事情が違ってきているかもしれませんが)
だからだと思うのですが、企業に比べると、創業時からの記録がちゃんと残されている気がします。
大学がまとめた「○○年史」と、企業のそれを比較すると、大学の方が質・量共に充実しているような印象がありますね。
また、
○大学の場合、数名の組織でスタートというのはありえず、創設時からある程度の関係者が関わっている
○大学の運営は合議制が基本なので、意思決定などに関して(少なくともタテマエ上は)文書などの記録が残りやすい
○校友会など、歴史を記録する上でバックアップしてくれる組織が存在している
○学校の歴史をまとめる人材(主に教員)を、自前で抱えている
…といった要因も大きいように思います。
そんなわけで大学の場合、企業に比べると、記録はわりと残されているでしょう。
というか、要所要所でまとめられた「○○大学○○年史」といった文書の内容が、そのままズバリ使えるわけです。先達の努力を、活用しない手はありません。
したがって大学で「歴史のアピール」に取り組み場合、
「残された歴史をどう活用するか」という工程に重点をおけるかと思います。
むしろ企業以上の取り組み、企業が真似できない取り組みをやってのけたいところです。
これまでの記事で申し上げてきたことと重複するかもしれませんが、
○どのタイミングで
○誰が
○誰に
○何を
○何のために
○どのようにして伝えるか
…という、5W1Hのようなことをきちっと明確に計画していくことが肝要になります。
歴史というのは、それだけで貴重な情報ですから、「歴史をまとめただけで満足」という事態に陥りやすいのです。
歴史の記録それ自体が目的である場合はいいのですが、ここでは「歴史の活用」を考えていますので、これではいけませんよね。
ちゃんと、「この取り組みによって、どのような成果を達成するか」という点を意識して取り組みましょう。
どのような形でも、可能な限り、効果測定を行うことも忘れないで下さい。
周年事業などのイベントなら、集客人数や、お客様のアンケート結果。
webコンテンツなら、アクセスログ。
学内、学外から寄せられた意見や感想。
校友会からの反響。
外部ステークホルダーからの反応。
こうしたものを、ちゃんと測定することで、プロジェクトの意義は非常に大きくなると思います。
あと、プロジェクトに関わった関係者は、つい甘い評価をしがちです。そもそも学校の歴史は、批判してはいけない「神聖不可侵」なものとして扱われがちですよね。
ですから、客観的な視点で感想を言ってくれる外部の方からも意見を求めることをオススメします。
あと、これは非常に重要なポイントなのですが、歴史プロジェクトに関わるときには、集めたデータや情報はもちろんですが、プロジェクト自体の記録も逐一残してください。
周年事業などは、必ず、10年後も行われるのです。
今後、また誰かが、あなたと同じように、歴史のアピールに取り組むのです。
そのとき、「前回、どのような情報を集め、それをどのような方針の下に、どう扱ったか」という記録があるのとないのとでは、全然違ってきます。
10年後、あるいは100年後のために、あなた自身も記録を残してあげてください。
歴史を扱うのに、決まった方法論はありません。
目的によって、やり方を変えてもいいと思います。
そこは、各大学で議論をして、最適と思うやり方を選択すればいいと思います。
個人的には、
・情報を自由にアーカイブできるという点、
・編集が容易である点、
・誰でも好きなときにアクセスできる点、
・コストがかからない点、
などを考えると、Webメディアはもっと、「大学の歴史を活用する」という観点で利用されてもいいように思います。
電車の中吊り広告や雑誌への広告出稿などにも、歴史というコンテンツは使えそうですね。
また、目的で言うと、教職員の研修や受験生向けアピールのほかにも、
・寄付金募集の強化、
・強固な校友会組織の構築、
・キャンパス計画への反映(歴史を意識した街づくりというのはありますが、あれのキャンパス設計版)、
・国際交流での活用、
・授業での活用(大学の歴史を考える授業の実施)
などで、大学の歴史を活用する余地がありそうです。
「歴史の編纂」は熱心に行われていても、その活用となると、まだまだ手付かずの領域がいっぱいあると思います。
考えただけで、なんだか楽しそうなプロジェクトではないですか。
歴史は、大学にとっての大きな資産です。
ぜひ、固定観念にとらわれず、様々なところで活かしてみてください。
実際にプロジェクトにしてみて、はじめてその価値の大きさに気づかれることもあるかと思います。
以上、マイスターでした。