姿勢はいいんですが、本を読むのが遅いこともあり、難儀してます。
そんな読書生活で、これはいいぞと思う書籍などを見つけたら、積極的に本ブログでご紹介していきたいと思っています。
で、今日はずばり
「大学職員が、高等教育全般を学ぶ上で使う、教科書」
としての一冊を、ご紹介してみたいと思います。

大学や、大学改革に関する書籍は数多く有りますが、
「体系立てて高等教育のことを学べる教科書」
として書かれている本は、そう多くはありません。
というわけで、上記の本。
「MINERVA教職講座」というシリーズの一冊です。
大学や大学院で、実際に「高等教育論」とか、「高等教育比較論」といった授業をする際に使える教科書として書かれた本なのですね。
例えば、第一部の構成は、以下の通りです。
第1章 比較高等教育論
第2章 大学組織論
第3章 大学管理運営論
第4章 高等教育アドミッション論
第5章 大学カリキュラム論
第6章 大学の教育方法論
第7章 学生就職論
第8章 大学職員論
第9章 学術政策論
第10章 高等教育評価論
第2部は、「世界の高等教育」と題して、
アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国、中国、そして日本の大学についての概論がまとめられています。
第3部は、「(プレ)FD&SD 活動の研究開発―困った大学教職員にならないために―」です。
このように、高等教育を分析する上で、知っておくべきジャンルをだいたいカバーしているのが、ありがたいところです。
「浅く広く、高等教育の全体像を見ておきたい」という向きには、最適です。
詳細の章構成は、以下のページから見ることができますので、ご覧ください。
・広島大学高等教育研究センター:センターからのお知らせ
http://rihe.hiroshima-u.ac.jp/news_topic.php?id=242
ちゃんと
「専門職としての大学教職員」
「大学職員のキャリア形成」
といったテーマも扱われています。
全体を通じ、本当に「概論」的な視点で記述されていますので、それほど詳細な分析や、事例掲載があるわけではありません。
しかしその分、各トピックの概要を知るためのデータは豊富です。
例えば、興味深いのは、「大学職員論」の章で紹介されている、
日本の大学職員数と、大学教員数の推移グラフです。
2002年5月1日の時点で、国公私立を会わせた大学職員数は、
17万4838人なのだそうです。
対して教員の数は15万5050人ですので、職員の方が2万人ほど多いのですね。
1955年以降、教員一人あたりの職員数は、1.4人前後で推移していたが、昭和末期から職員の増加率が教員のそれを下回るようになったとのこと。
その結果、教員一人あたりの職員数は減少の一途をたどり、1985年で1.38人、2002年で1.13人にまで落ち込んだのだそうです。
ただしこの数字には、医療系の職員などが含まれています。
医療系、教務系、事務系、技術系など、職種別の人数推移グラフも載ってまして、
事務系職員だけで見ると、教員一人あたりの職員数は、
1975年で0.56人、
2002年で0.45人。
やっぱり、減ってますね…むぅ。
なおこのグラフでは「事務系」と「教務系」が区別されていますので、「教務系」についても見てみましょう。
教員や事務職員の人数が、徐々に増えているのに対し、「教務系」はほとんど数の変化が見られないのが、ポイントです。
1965年→2002年の間に、
教員数が約80,000人から約170,000人と、倍増しているのに、
教務系職員の人数は、この40年間、ずっと5,000人前後で変わりません。
ってことは何かい、教務系の職員は、2倍の教員に対応するようになったのかい。
これって、結構、知られざる事実ですよね…。
「昔の教務課員は丁寧で親切だったのに、最近はドライで不親切だ」
とかいう教員がいたら、試しにこの事実を持ち出してみましょう。
(持ち出してみた結果については、責任を持てませんのであしからず…)
こうした職員数の削減が、どういう理由によるものかは、わかりません。
単に、コストの問題で削減されただけなのか、
電子機器の導入やアウトソーシング化など、業務の効率化に沿ったものなのか、
教員にしかできない仕事が増えたのか、
そのあたりの理由にまでは、本書では踏み込まれていません。
ただ、この結果、教育支援が手薄になったとすると、
教員の負担が増え、教員にしわ寄せがいっているんじゃないか?といった記述はあります。
そうなのかもなぁ。
国立、公立、私立それぞれに分析した推移グラフもあります。
ね、なかなか、興味深いでしょ?
で、
この本の最大の特徴は、
「学習課題」として各章末に問題が用意されているということなのです。
例えば、↓こんな感じ。
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1.次の課題に答えなさい
(1)大学職員の法的な地位および法令上の職務について説明しなさい
(2)米国大学における大学職員の開発について、その特徴を説明しなさい。
(3)大学改革と職員の役割の変化について説明しなさい
2.次のキーワードについて説明しなさい
(1)SD (2)専門職 (3)職能団体 (4)大学行政管理学会 (5)高等教育新聞
(以上、高等教育概論―大学の基礎を学ぶp113より)
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ね、教科書でしょ?
基本的に、全部、論述です。
模範解答は掲載されていないのですが、その章を読んで勉強すれば、自分なりの正答は導けるはずです。
職員同士で回答を持ち寄って、それを比較してディスカッションすると、いっそう、いい勉強になるのではないでしょうか。
学生時代のゼミの気分に戻れること、うけあいです。
以上、今日は「大学職員のための教科書」をご紹介してみました。
ぜひ、生協で注文するなどして、ご入手ください。
上のAmazon.co.jpのリンクからもお手軽に注文できます。
ご紹介した以上は、すべての例題の回答をすらすら言えるようになりたいマイスターでした。