小中学生のときは理科が大好きだったマイスターです。
どうして理科が好きだったのか、理由はよくわかりません。
自宅の庭に色々な虫や植物がいましたので、そういった生物を目にする機会は多かったように思います。学研の『科学』も、小学生の間は読んでいました。そう言えばテレビでは、「わくわく動物ランド」とか好きでした。
科学現象の不思議を体験できる環境が身近にあると、子供が理科を好きになりやすいかもしれない……なんて思うマイスターです。
でも、このくらいのことなら、同じ世代の子供の多くが体験していたんじゃないかなぁと思います。
実際、小学生くらいのときには、みんな理科はそう嫌いじゃなかったような気がします。自分の経験で言うと、「理系の科目は苦手だ」という人が増えたのは、中学3年生から高校生くらいにかけてでした。どうしてなのでしょうかね。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「理科離れ対策に『博士』の先生増員を 学術会議が要望」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0623/TKY200706230294.html
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「学者の国会」と言われる日本学術会議は22日、子どもたちの理科離れを防ぐために大学院で学んだ「博士」や「修士」の教員を増やすとともに、すべての小学校に理科専任の教員を置くことなどを文部科学省や各地の教育委員会などに求める要望をまとめた。
要望によると、大学院を修了した教員の割合(03年)は、ロシアが89%、米国が59%、英国が24%なのに対し、日本は9%と先進国で「最低レベル」にある。
さらに「科学的知識は年々高度化しているのに、日本の教員の科学的教養は国際的に劣っているのではないか」などと指摘。教員養成を大学の学部段階から大学院段階に高め、理系の大学院修了者を積極的に採用するよう求めている。
一方、小学校では、理科の授業に苦手意識をもつ教員が多い(科学技術振興機構の05年調査では62%)のに、理科専任教員が全国で110人(04年度)しかいない現状も問題視。「この数では全国的な改善にはつながらない」として、すべての小学校に専任教員を配置するよう求めている。
(上記記事より)
というわけで、日本学術会議が「理科離れ」を食い止めるための策として、いくつかの「要望」を発表しました。
上記のように、理系の博士号や修士号を持つ教員を積極的に採用することや、理科専任教員を増加させ、各校に配置することもこの要望には含まれています。
要望の全文が↓こちらに掲載されておりますので、興味のある方はご覧ください。
■「要望:これからの教師の科学的教養と教員養成の在り方について」(日本学術会議)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-y1.pdf
確かに、「理科の授業に苦手意識をもつ教員が多い」なんて話を聞くと、もっと理科に詳しい先生を増やした方がいいよなぁ、なんて気にもなります。
理科に限った話ではないと思いますが、先生がその科目を面白いと思っているかどうかというのは、生徒に大きく影響しますよね。
先生が理科を苦手と思っていたら、そりゃあ、子供達も理科に魅力を感じないのも無理はありません。
プラス、上記の学術会議の要望には、「過剰に供給されているポスドクをどうにかしてくれ」という事情も大きく関係しているのだと思われます。
博士号取得者を増やそう、大学院を充実させようと国を挙げて取り組んでいる日本ですが、卒業した後、望むような職を得られない方が増加しています。
彼等の能力を活かす環境を教育現場に作り出すことで、ポスドクの受け皿を用意したいという思惑も、今回の要望の裏にはあるのでしょう。
基本的には、悪い案ではないと思います。
ポスドク問題も解決しつつ、子供達の理科離れを防ぐための仕組みとして理系博士・修士がちゃんと機能するのであれば、いい話ではないでしょうか。
例えば、理科が好きになるかどうかは、身の回りに科学的な関心を引き出す環境があるかどうかによるところも大きいでしょう。マイスターが小さかった頃は自然に触れる環境も普通に身近にありましたが、最近はそれも難しくなっています。したがって昔以上に実験や観察には力を入れなければならないはず。
こういった事態を改善するために、科学的な知識を十分に備えた理系博士・修士の教員が活躍できるのだとしたら、それは良いことのように思います。
ただ、博士号を持っているから教えるのがうまいというわけでも(残念ながら)ないでしょうから、単純に、ポスドクの受け皿にしようという発想だけでは限界があるようにも思います。
例えば、理工系学部の出身者やメーカー勤めの方などが、教員養成大学院を経て教員になれるような、そんなキャリアパスを整備してあげるのも有効かも知れません。
また、そもそもマイスターは、若いうちから「理系・文系」に進路を分けてしまうこと自体に問題があるような気がします。
「理科に苦手意識がある」というのは、教員志望者だけではないでしょう。世の中の大学生や社会人を見渡しても、そういう方は多いと思います。「俺、文系だからさ、数学とか物理とか、ダメなんだよね」なんて、冗談として言えてしまう社会の現状自体が、何かおかしいのではないでしょうか。
こういう状況を容認している限り、いかに小学校の段階で理科教育を充実させても、高校生くらいの段階で数学や理科を簡単に「捨ててしまう」学生は変わらず出てきます。それでは、原子力や生命科学などに関して最低限の知識を持たない日本人がたくさんいる現状は、何も変わりません。
文系・理系という考え方は大学入試に端を発する問題であり、ひいては日本の大学教育のあり方にも関係する問題ですから、そう簡単に変えてしまえる問題ではないでしょう。
しかし、本当に日本人の科学的教養のレベルを上げたいのであれば、避けて通れない議論ではないかとマイスターは思います。
……などと大きなことを言ってしまいましたが、実際にはできることをやっていくしかありません。
最近では、市民団体や博物館などの公的機関をはじめ、学外の組織も子供達の科学体験をサポートしようと積極的に動いています。
かつては補習や受験対策だけを担う存在とされていた塾も、今では学校が削った実験を補うなどの活動を行っています。
■「減った実験 塾が穴埋め」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20070622us41.htm
こうして学外の諸機関が子供達の教育を支えるというのは、悪いことではありません。教育は、社会全体で担うものです。
学校でやりきれないことはいっそ他の機関に協力を頼む……というのは、すぐにでも着手できる、最も重要な方策であるかも知れませんね。
以上、マイスターでした。