【サイバー大学(3)】 料金体系は? じっくり自分のペースで学べるの?

<※この回の記事には続編があります。詳細は文末をご覧下さい>

マイスターです。

・【サイバー大学(1)】 学びの場としての魅力はどう?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50268514.html
・【サイバー大学(2)】 具体的に、どういう画面で学べるの?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50268562.html

一般人「増田学(仮名)」君の視点で、サイバー大学を進学先として検討してみようというこのコーナー、第三弾です。

【増田 学(仮名)】

・好奇心いっぱいのビジネスマン(独身)。

・理工系学部を出たのでコンピューターには弱くはない。でも今後のスキルアップを考え、もうちょっとシステムの知識を体系的に学びたいかな、なんて考えたりもする今日この頃。
・その一方で世界史、特に古代史が大好き。本を読み博物館を巡り、あれこれ仮説を立てたりすることに喜びを感じるタイプ。大学では理系に行ったので、歴史に関することをほとんど学べなかったのが未だに心残り。

・それなりに仕事は忙しく、毎日大学に通学するのはちょっと厳しい。でも自分への投資という意味合いも含め、学位を取るくらいの勉強をこつこつと進めていきたいなぁと、漠然と思っているところ。教養を高めても良いし、実益に結びつく勉強でもいいという考え。勉強自体はわりと嫌いではない。

・貯金はあまりない。

いよいよ今回は、「学費」について見てみることにします。

増田君が想定する学びのスケジュールは、

「じっくり、5~6年かけてでも卒業する」

というものです。
仕事が忙しく、どうしても授業をあまり履修できない期間がありますから、この位はかかるかも知れないと踏んでいるのです。
大学の授業は甘くありません。無理して単位をどっさり履修し、その結果仕事に支障が出るのも本末転倒です。
そこで、

秋から年末、3月にかけて仕事が集中するため、後期はもしかしたら単位をほとんど取れないかも知れない。
でも春から夏にかけてはわりとスケジュールに余裕があるので、前期で14~20単位を目指す。
卒業までに124単位必要なら、一年に20単位程度を確実にとって、5~6年かかる。

という計画を立てました。6年もかかるか?と思うかもしれませんが、社会人学生はなかなか大変です(マイスターの周りには、こういうパターンで在学期間を延長している社会人大学院生が何人かいます)。

増田君は学士をとっておりますから、本来なら編入学という方法もあるのですが、サイバー大学は開設年度なので編入学を受け付けておりません。どうせなら語学を学びたいというのと、(もともと歴史好きなので)人文学系の基礎的な教養科目から学び直したいということで、敢えて1年生から学び直す道を選んだ増田君です。

さて、この計画通りに学んだとすると、一体いくらかかるのか。
ここで、すこし注意しなければなりません。

例えば「放送大学」では、1単位当たりの従量課金制で授業料を徴収しています。
これは大学関係者の皆様なら、ご存じかも知れませんね。

(参考)
■「学部:学費」(放送大学)
http://www.u-air.ac.jp/hp/depart/depart03.html

「1単位当たり5,500円」の明朗会計です。4年かかろうが6年かかろうが、取った単位数が同じなら学費も同じ。増田君のような忙しい人にはぴったりのシステムですね。

一方、サイバー大学はどうかというと、こちらも授業料は従量課金制であり、履修される単位数に応じて請求される形式になっています。
ただ、こちらには

本学は半期ごとの最低履修単位を15単位と設定しております。半期で最低でも15単位分の授業料(315,000円)をお支払いいただきます。(「2007年度春学期 正科生募集要項」より)

という注釈がついているのです。したがって4年間と6年間では、単位数が同じでも、学費の額がびっくりするほど変わります。

仮に、「最初の4年間は前期で21単位、最後の2年間は前期で20単位取得。後期は忙しいので履修できない」という6年計画で卒業したとします(ギリギリ124単位ですね)。すると、サイバー大学卒業までにかかる学費は↓このようになります。

【サイバー大学を、前期の履修だけで6年かけて卒業する場合】

入学検定料:\10,000
入学金:\100,000
授業料:\4,494,000
———————–
合計:\4,604,000

今度は試しに、4年間かけて卒業した場合を考えてみましょう。前期に16単位、後期に15単位。これを4年間繰り返すと、124単位です。この場合の学費は、↓このようになります。

【サイバー大学を31単位ずつ4年かけて卒業する場合】

入学検定料:\10,000
入学金:\100,000
授業料:\2604000
———————–
合計:\2,714,000

200万近く安くなりました。
前者のケースの場合、前期は取得した単位にあわせて学費をキッチリ取られるのに、後期はなぜか受けてもいない15単位の料金を請求されてしまうため、無駄が出るのですね。その結果が、この金額です。
どうやらサイバー大学の学生さんには、「コンスタントに半期あたり15~16単位を取るような履修を心がけよ」という圧力がかかるようです。少しでもこのプランからずれていくと、学費がどんどん上がっていきます。ある意味、普通の大学以上にシビアです。

この仕組みを好意的に見れば、「履修者を分散させることでサーバーや教員の負担を軽減させる経営上の工夫」とか、「一学期あたりの履修単位数を抑えさせることで学習の密度を高める、教学上の工夫」とか言えるでしょう。
悪く言うと、「ライフスタイルに合わせることが難しい、意外に自由度が少ない履修制度」でしょうか。

教学指導上の理由で、学期あたりの履修コマ数を制限している大学は結構あると思いますが、サイバー大学の場合、学費のシステムによってそれを自然にやってしまおうとしているのかも知れません。これはこれでひとつの工夫だと思います。

もっとも増田君のように不規則な学びを強いられる方は、結果的に高い額を払わざるを得ませんので、ある程度の不利益を被ります。
一見、放送大学と似ていようで、実際にはこのあたりの発想がかなり違います。ですので両校への入学をご検討中の方は、十分にシミュレートした上でご決断ください。

以上、サイバー大学の学費でした。

でも、今後サイバー大学のような学校に求められるのはおそらく、単位ごとの完全な従量課金制ですよね。

今、インターネットの通信制大学を求めているのは、従来の大学のサービスに満足していない方々だと思います。
例えば高校出たての18歳でも、「勉強以外にも打ち込んでいるものがある」とか、「健康上の事情により、自宅からあまり離れることができない」とか、これまでの大学がサポートしきれなかったような環境を持っている方々でしょう。
海外にいるけど、日本の学位を取得したいという方もおられるでしょう。
また、今現在、多忙を極めている働きマンな方々だって少なからずいるはずです。
(入学予備軍には、既に学士を取得され、第二、第三の学位を求めて勉強しようという向上心豊かな方も多いと見た!)
このような方々に向き合う場面でこそ、サイバー大学の真価が発揮されるのに違いありません。

しかしこういった方々は、往々にして「時間がコンスタントにとれない」という事情を抱えています。
ある時は忙しく、ある時はヒマ。来年は忙しいけど、今年は余裕がある。仕事を持っている方は特に、そんな不規則なライフスタイルに陥りがちです。
ですからオンデマンドの授業配信に加え、学費についても、それぞれのライフスタイルに合わせて自由度の高いスケジュールが組めるような仕組みを、サイバー大学には期待します。

■「サイバー大学の思い:Weeky Message:『認可発表を前に』」(サイバー大学)
http://www.cyber-u.ac.jp/vision/message/007/index.html

…私はまず授業料を適正にし、また、授業料を払うのは親だけでなく本人も無理なく支払っていけるよう、改革をしなければならないと思っています。そのために、現在の多くの大学のような年額定額授業料でなく、単位ごとの授業料にし、場合によっては3年で卒業できるような制度も考えていきたいと思っています。それが、学生の自主独立性の確立にもつながると思うのです。
(上記リンクより)

吉村学長も上記のように書いておられましたから、サイバー大学も、いずれはそうなるんだと思います。
こういった仕組みが実現した暁には、全国のオフィスにいるかも知れない「増田君」や、人とちょっと変わった学びを行いたい若者達の支持を集めることもできるのではないでしょうか。

長くなってきたので、サイバー大学のことはこれで終わりにしますが、今後も大学業界の起爆剤(?)として、色々な意味でエポックメイキングな取り組みをしてくれるに違いありません。その都度、同大の動きをご紹介していきたいと思います。
乗り越えるべき課題は多いと思いますが、個人的には大学の理念や発想、そして挑戦的な姿勢に非常に期待していますので、成功して、学びの一つのモデルを築き上げるくらいになって欲しいなと密かに思っています。

以上、マイスターでした。

【2007.3.10追記】
この後、サイバー大学の学費システムが変更されたようです。
詳細は、↓こちらの記事をご覧ください。

・サイバー大学の学費が完全従量制に
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50296317.html