高校進路指導者に聞く 「大学で資格」強まる、一番人気は教育学部

マイスターです。

大学院時代の恩師達の口癖は、「資格などいらない」でした。教員達曰く、わざわざ名刺に資格を記述するというのは、資格がなければ仕事ができないという意味で、つまり二流の証だというのです。聞いたときは、「ホントかよ!」と思いました。よくよく聞いてみると、「学生のうちから資格のための勉強をするのはおかしい、実務にかかわることは社会人になってからでも遅くはないので学生時代は考え方をしっかり学んでおくべきだ」ということを学生に伝えておきたいがための言葉であることがわかりました。それにしても、大胆な方針だとは思います。

学生達は結構、そうした教員達の言葉を信じて勉学に励んでました。ただし、その教員達は主にデザイン分野の人(建築家)だったので、この発言が成立したんだろうなとも思います。世界的な建築家は、現地のアーキテクトライセンスを持っていなくても、世界中に建築を設計しているのですが、そこには、「実務部分は現地の事務所とパートナーを組むので、必ずしもデザインの担当者が免許を持っている必要はない」というカラクリがあったりします。ですから確かに、「世界一流の建築デザインをするため必要なのは能力と実績だけ」という言い方は間違いではない……みたいです。

ただ、他の分野では、必ずしもこうはいきませんよね。例えば世の中の名医が、無免許のブラック・ジャック先生みたいな人ばっかりだったら大変です。
実際には、資格をとることで広がる世界がありますし、資格がないとスタート地点に立てない領域だっていっぱいあると思います(そもそも資格ってそういうものですからね)。

そんなわけで、資格が目的そのものになるのは考えものですが、自分の目的に近づくために必要なのであれば、学生時代に勉強するのも良いんじゃないかなと、個人的には思います。

そんなわけで今日は、高校生の「資格」に関する意識について取り上げた記事をご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「高校進路指導者に聞く(2)──『大学で資格』強まる、一番人気は教育学部」(日経ネット関西版)
http://www.nikkei.co.jp/kansai/univ/34795.html

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大学では専門的な知識を身に付けると同時に、資格も取りたい――。高校の進路指導担当者を対象にしたアンケートからは、高校生の「資格志向」が高まっている実態が浮かんだ。人気の学部も、教育や医歯薬系、福祉など、資格につながる分野が上位に。大学全入時代の到来とともに、学問の府の「専門学校化」が加速しそうだ。

●「就職有利」根強く
高校生が大学の講義を通じて得たいと考えているものを複数回答で聞いたところ、「専門知識」(75.2%)と「資格」(71.5%)の2つに集中。「語学力」(10.3%)など、ほかの3つの選択肢を大差で引き離した。
「専門知識」がトップになったことで、最高学府の面目は保てた格好だが、普通高校と商業高校に限ると、「資格」が逆転する。景気の回復に伴い、雇用情勢も好転しているものの、高校生の間では「大学在学中に資格を取れば、就職に有利になる」という意識は根強いようだ。
人気がある学部(複数回答)は47.2%の”支持”を集めた「教育」がトップ。以下は「医歯薬」「経済」「福祉」の順に。高校生が将来の進路を強く意識したうえで学部を志望している姿がうかがえ、「大学で自分探し」という余裕はなさそうだ。
人気薄の学部は「文学」「理学」「家政」など。ここ数年の大学入試で志願者が減っている「工学」は、「商学・経営」や「法学」とともに全体の中位にランクされた。
高校の授業内容を大学が補習する「リメディアル教育」に関しては、半数近くが「より一層の教育を期待している」と回答。「補習の必要はない」はわずかに9.8%にとどまり、進路指導担当者が高校生の学力低下を認めるという皮肉な結果となった。
多くの大学が力を入れる国際交流に関しては「関心はある」との回答が56.1%に上った一方で、「関心がない」も43.5%あった。
(上記記事より)

この記事で先に注意しておかなければならないのは、このアンケート調査に回答しているのは実は高校生ではなく、「高校の進路指導担当者」だということでしょう。つまり、「うちの生徒は、教養よりも、資格を重視しているみたいです」と高校の進路指導担当教員が認識している、ということを示す調査なのです。ですから、回答した教員の認識が違っていて、実は高校生達はもっと違った考えを持っていたという可能性もあります。

人気がある学部(複数回答)は47.2%の”支持”を集めた「教育」がトップ。以下は「医歯薬」「経済」「福祉」の順に。

という結果にも、教員の目というフィルターがかなり効いているような気がします。そんなわけでこの調査結果は、あくまでも参考程度に留めておくのが吉かなと思います。

で、気になる調査結果の内容ですが……高校生が、大学の講義を通じて得たいと考えているものは、「専門知識」と「資格」だとのこと。この2つに回答が集中し、他の3つの選択肢「ビジネスに関する知識」、「教養」、「語学力」に大差をつけたらしいです。
流行の「問題解決能力」「コミュニケーション能力」といった内容が選択肢に含まれていないのは、グループワークなどの「演習」ではなく、あくまでも「講義で身につく能力」に限定した調査だから、ということなのかも知れません。でも最近は、ただ講義を聴いているだけで完結する授業はどんどん減ってきていると思いますし……うーん、この選択肢も少々、時代遅れな気がしますよね。
というかそもそもマイスターが卒業した建築学科みたいな学科の場合、学科で教育される「専門知識」と「資格(建築士)」のための知識って、不可分です。高校生と高校の進路指導担当教員の皆様がイメージする「大学で得られる資格」って、具体的にどんなものなのか、知りたいですね。「専門知識は専門知識でも、資格に結びつく知識が望まれている」ということなんでしょうか?
そのあたりにもうちょっと踏み込んだ調査結果を見てみたいところです。

でも、どうやら実利に結びつきそうな具体的な知識が望まれているらしい、という傾向は、なんとなく記事から掴めます。

大学で行われている教育には色々な種類があります。教養教育ひとつをとっても多種多様なのですが、高校には、あまりそういった行為のイメージが伝わっていないのかも知れませんね。

例えば、企業は大学生に対して資格よりも「コミュニケーション能力」や「問題解決能力」を持っていることを求めており、そういったニーズに対応するために今、リベラルアーツが見直されたりしています。そういうことを考慮すると、「就職するために、資格がとれる学科を選ぶ」という発想は、必ずしも正しいとは言えないように思います。高校の進路指導担当教員に、こういう情報が行っていないのではないかという気もします。
逆に、そういった点を高校向けにアピールすることで、受験生が増えるかも知れませんね。

大学側は、こういった調査結果を参考にした方が良いとは思います。がしかし、「資格がとれる学科が望まれている」という調査結果が出たからといって、安易にそういった学科を新設しまくるのも、それはそれで大きなリスクであるように思います。

関西の大学はここ数年、学部や学科の新設ラッシュ。資格取得につながる医薬や福祉、保育などの分野が目立ち、「学生の獲得競争で優位に立ちたい」という狙いが鮮明だ。
姫路独協大(兵庫県姫路市)は今年4月、理学療法や作業療法など、5学科からなる医療保健学部をつくった。来春には薬学部も新設する予定で、いずれも学生が資格を取れるよう後押しする。
これまでは文系の3学部だったが、志願者が落ち込む外国語学部と法学部の定員を減らし、新学部に割り当てた。新校舎の建設などに掛かった投資は約70億円。大塚健洋学長は「医療系の学部は、社会的なニーズが高いうえ、学生にも人気がある。総合大学化することで大学のブランド向上にもつながる」と話す。
ほかにも、大阪大谷大(大阪府富田林市)や神戸学院大(神戸市)、京都橘大(京都市)などが昨年から今年にかけ、医薬や福祉系の学部・学科を設けた。来年以降も予定は目白押しで、京都創成大(京都府福知山市)は医療福祉マネジメント学科を新設する。
ただ、こうした現状に困惑する大学も。大阪府下のある大学は昨年4月、介護関連の新学部をつくったが、2年目の今年は定員割れに。関係者は「医療や福祉系の学部・学科が続々と誕生し、今や乱立状態。特色を出すのが難しい」と頭を抱えている。
(冒頭の記事より)

↑最後の記述に注目です。このように特定の資格にこだわりすぎた学科は、そこしかウリを打ち出せませんから、かえって後で受験生へのアピールに困る結果にもなりかねません。

今回のような記事を読んで思うのは、「大学から高校へ、もっと高等教育のトレンドについて積極的に説明していくことが必要だ」ということです。

マイスターは普段から、大学がマーケティングを行う、情報を収集&分析していくことが大事だと申し上げております。しかし一方で、市場に対して自分たちのサービスをもっと説明していくという取り組みも、まだ不十分なんだろうなと思うわけです。

例えば民間企業は、まったく新しいカテゴリーのサービスや製品を世に送り出す際、「いかにそれをわかりやすくイメージさせるか」というところに心を砕きます。
大学は、例えば「リメディアル教育」のような用語を、説明不十分の状態でそのままパンフレットに印刷してアピールしたりしますが、もう少しそのあたりにも、意識を向けた方が良いのかも知れませんね。

以上、マイスターでした。