海外旅行に行ったときの楽しみは、現地の本屋を見て回ること。日本の作家の作品を見つけると、うれしくなります。
他にも日本のマンガの現地語版を買ってみたり、日本の旅行ガイドを見てみたりと、飽きません。どの国に行っても、発見があります。
今日は、そんなマイスターが海外でゲットしたお宝から、ちょっと脱力系のネタをご紹介。
(今回、貧弱な携帯のカメラで雑誌を撮影していますので、画像がゆがんだりしているのはご容赦をっ!)
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2001年の夏、香港の書店で買った、日本の観光情報誌です。
(出版元のwebサイトはこちら)
日本で言うと、『るるぶ』みたいなものかな?
実は、香港滞在中に偶然見つけたこの号の特集が、
<東京学生街 10大知名学府巡訪>
なのですよ!
このブログ的に、おいし過ぎる特集です。奥付には「2001年7月初版」の表示。貼りっぱなしのままだった値札のシールを見る限り、マイスターはこれを39.00香港ドルで購入した模様。GWに実家に帰った時、押入から発掘してきた貴重な一品でございます。
いやー、東京の大学街が、異国の雑誌で観光地として紹介されているというのは、なんだか新鮮ですね。
でも、この特集の主旨は、ちょっとわかる気もします。
六本木のようなバブリーな街でも浅草のようなコッテコテの観光地ではなく、でもほどよく都心にあり、電車でのアクセスが容易で、若者が多いエリア。東京で流行しているファッションをチェックしながら、肩肘張らずに歩ける場所。
アジアの方からみたら、東京の大学街って、そんな位置づけなんじゃないでしょうか。
想像するに、香港の若者にとっては、適当にぶらつきながら東京を知るスポットとしてお手ごろなのですよ、きっと。
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↑中はこんな感じです。
10ヵ所の「知名学府」を、一ヵ所ずつクローズアップして紹介しています。
各校の紹介記事は、以下の3つの情報で構成されています。
○大学の概要(「初見面!」と書かれていますが、たぶんこういうことでしょう)
○キャンパスの雰囲気(「校園風味」と書かれています)
○周囲の観光スポット(「超心動!」というアオリが付いてます)
ね、どんなことが書かれているか、興味深いでしょ?
ちなみにマイスターは、中国語はまったくわかりません。
でも、日本人は漢字が読めるので、大体書いてある内容は推測できます。
自慢じゃありませんがマイスターは学生の時、漢字検定2級の試験に見事すべったくらい、漢字には自信があります。
ところでこの特集、どのような情報を掲載するかという点で、記者のフィーリングとセンス、(言い換えると「独断と偏見」)がかなり反映されています。
例えば表紙で、「東京大学卒の著名人」として夏目漱石や川端康成、三島由紀夫が紹介されているのに対し、慶應義塾大学のそれは、菊池麻衣子と高橋由伸です。
どういう人選だ!いやいやいや偏ってますねぇ~。発刊当時、香港で人気だったのでしょうか。
ちなみに早稲田大学を代表する卒業生としては、広末涼子と小室哲哉が紹介されています。こちらはなんだか、なつかしいというか、ブームがとっくに過ぎ去った今となってはちょっとこっぱずかしいというか……うーん、時代を感じますね…。っていうか2001年って、そんな頃でしたっけ?
ちなみに、「10大知名学府」としてこの特集で紹介されているのは、次の通りです!
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【香港の観光雑誌で、日本の「10大知名学府」として紹介されている大学】
東京大学
早稲田大学
慶應義塾大学
お茶の水女子大学
立教大学
一橋大学
駒澤大学
明治大学
法政大学
上智大学
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いかがでしょうか?
「何でウチのトレンディ(死語)なキャンパスが入ってないんだ!」といったご意見ご不満は多々お有りでしょうが、香港の観光雑誌編集部の方々のお考えですから、マイスターに文句を言わないように。
ちなみにこの号では、上記の学生街特集とは別に「五大超人気街」という記事が掲載されており、そちらで新宿、原宿・青山・表参道、渋谷、お台場、池袋の紹介はみっちりと行われています。
10大知名学府に、おしゃれ立地の筆頭である青山学院大学がノミネートされなかった理由は多分その辺にあると思われますので、青山学院関係者の皆様は落ち込まないように。
さて、この特集の一番の見所、それは、各大学に付けられたキャッチコピーです!
↓こちらをご覧ください!
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こ、これは………!
どこから突っ込んで良いのやら…!
えーと、まずですね。
お茶の水女子大学の説明として、「賢妻良母」育成ってのは、ちょっとマズイんじゃないかと思います!
ご存じの通りお茶の水女子大は日本屈指の女性教育機関であり、お茶の水女子大学のwebサイトには「先見性をもつ自立した女性の育成」や「女性リーダーの育成」といった言葉が掲げられています。「賢妻良母」を育てているなんてテキトーに書いたら、関係者に怒られちゃいますよ!
そして早稲田大学の「平民大学」という表現も、なんだかちょっと面白いです。
実際には我が国を代表する人材を輩出しているんですが、自由闊達で飾らないイメージのことを、中国語では「平民大学」と表現するのかな?
ちなみに、学校別紹介記事の中でも、
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↑こんな感じで、やたら「平民」部分が強調されちゃってます。良く読むと、慶應が「貴族的」なのに対し、早稲田は「草根的」であるとも。この辺は、早稲田が誇りとする「在野精神」のことを指しているのでしょう、たぶん。
なお、歴代の総理の名前に加え、中国人が大好きだという村上春樹や、吉永小百合などの母校であることが、本文の最初に紹介されています。
慶應義塾大学のコピーは妙にスマートで、明治時代っぽいです(「英式学府」っていま言われても…)。というか、やや持ち上げ気味に書かれてます。
これは、大学の学風やイメージを拡大ぎみに解釈した結果でもあるでしょうが、もうひとつ考えられる理由が。実はこの雑誌が出るおよそ2ヶ月前の2001年4月26日に、小泉内閣が誕生しているのです。つまり日本では、小泉旋風が吹きまくっているときに出た雑誌なんですね。だから、慶應の紹介記事本文↓でも、小泉首相を始め、慶應OBが当時の内閣に多いといった旨が書かれています。
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「おちょくったことを書いたら、フィーバー中の日本国民の怒りを買うかも」という判断が働いた結果…なのかどうかはわかりませんけれど。
あと、立教大学の「多元入学的」というのは、本文の記事と合わせて読む限り、入試制度の多様化のことを指しているようなのですが、観光雑誌のコピーには不向きなんじゃないでしょうか(^_^;)。
あれだけ雰囲気のあるキャンパスなのだから、「ツタの絡まるイイ感じのキャンパスです」とか、そのあたりをクローズアップしてあげればいいのに、と思ったり。
そして、
<東大&一橋>
<明治&法政>
は、このガイド雑誌のキャッチコピーだけ見ると、正直、どっちがどっちだかよくわかりません。キャラ、かぶっちゃってます!
もしこのガイドで日本の大学のことを覚えた香港の方がいらしたら、両校の見分けが付かないまま覚えちゃってる可能性もありますねー。
駒澤大学が、香港人にとっての10大知名学府である理由は、なんとなく本文を見ていてわかりました。どうやら、仏教大学の名門として名前を売っているというところが大きいようです↓。さすが、アジア地域での知名度抜群です!
明治大学の記事では、ご自慢のリバティータワーより、↓近所にある湯島聖堂の孔子像がでっかく掲載されてたり。
このあたりは、やっぱり観光ガイドなんだなあと感じさせます。
(っていうか、この雑誌のライターさんは、いったい何を情報ソースにしていたのだろう…?)
以上、なんのオチもない記事でしたが、「海外の観光客からの見られ方」、いかがでしたでしょうか? 普段、あんまり意識しない視点ですから、大学関係者の皆様にとっては、新鮮なのではないかと思います。
すべてをここに掲載することはできませんが、どの大学の紹介記事も、なかなか興味深いですよ。情報の取り上げ方が面白くて、「ほぅ、そこに注目するのですか」という発見が結構ありました。
もっとも、所詮は観光ガイドですから、こうしたメディアでの評判を過度に気にされる必要はないと思います。(ただ、海外からの留学生を集める時に、キャンパスの魅力が与える影響というのが案外、小さくないのも事実ですけど)
たまには海外からガイド本でも取り寄せて、教職員でまわし読みしてみるというのも、面白いですよ。
自分達が気づいていないキャンパスの魅力を、教えてもらえるかも知れません。
以上、マイスターでした。