マイスターです。
何気なくネットを見ていたら、ちょっと興味深い記述を発見。
■「理工学部データ」(日本大学理工学部)
http://www.cst.nihon-u.ac.jp/gaiyo/data.html
【駿河台、船橋両キャンパスで事務局職員が138人。】
この数は、一学部としては最も多く、平均的なひとつの私立大学の職員数に相当します。(上記ページより)
事務局職員の体制が充実しているということを、こういう形でアピールしている例って、結構珍しいような気がしますが、いかがでしょうか。
さて、今週も、一週間分のニュースクリップの中から、いくつかを選んでご紹介したいと思います。
学芸員へのハードル、より高く。
■「学芸員を格下げ? 博物館充実へ文科省が資格見直し」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/culture/update/1128/016.html
学芸員資格は、学士の学位と博物館に関する12単位の科目履修や国家試験などで得られ、毎年約1万人の資格者が誕生している。博物館や美術館に就職できる人はごくわずかで、大学関係者が「資格は与えるが、学芸員の養成はしていない」というほど。フランスや英国などの類似資格に比べ、権威や実務経験に大きな差がある。
検討会議は(1)現行の学芸員を学芸員補に格下げする(2)学芸員になるには5年以上の学芸員補経験や修士号取得、国家試験合格といった条件を設ける(3)10年以上の学芸員経験、実績や研修、国家試験による上級・専門学芸員を新設する、を柱とする案を議論中だ。
実務経験などの重視で学芸員を「在るべき姿」に近づけたいとの意見が多いが、現在200近い大学が学芸員養成課程を置いており、「学芸員補にすると混乱が起きる」との声も出ている。
(上記記事より)
学芸員資格を持っている方って、社会の中にかなりおられます。でもその中で、実際に学芸員の業務に携わっている方は、比率で言うと極めて少ないはず。そんなわけで、制度の見直しが進められているそうです。どんな資格でも、世の中に十分に行き渡って「ペーパー資格」のような状態の方が増えるに伴い、どこかのタイミングでこのような高度化、専門化が検討されるのでしょう。学芸員課程で得られる資格を「学芸員補」にし、実務経験が必要な「学芸員」と区別させた方が、確かに専門職としての職能をはっきり位置づける上でもいいんじゃないか、と個人的には思います。
混乱は起きると思いますが、ここは大学が合わせるべきところでしょう。あと、もし学芸員の取得に「修士号」が義務づけられたとしたら、不遇をかこっている人文学系の大学院にとってチャンスなのでは。
「授業料は返還すべき」最高裁で判決。
■「学納金返還訴訟 受験生の弱い立場に配慮」(Asahi.com)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20061128ur01.htm
「学納金返還訴訟で最高裁が27日に言い渡した判決は、消費者保護の観点から、私立大が受験生から不当な授業料を取ることを禁じる初めての判断を示した。
(略)いったん納入された学納金は理由を問わず返還しない」。大学側が長年、学納金を一切返還しない扱いを続けてきた根拠は、入試要項などに記載された「不返還特約」だった。これに疑問を差し挟むきっかけとなったのが、2001年4月に施行された消費者契約法。解約時に不当に高額な違約金を取ることを禁じた同法の規定を武器に、全国約350人の元受験生を原告とする集団訴訟が起こされた。
(略)02年度入試以降の受験生であれば、3月中に辞退したことが立証出来れば、大学側に授業料の返還が認められることになり、今後、さらに提訴が相次ぐ可能性も高い。
(上記記事より)
最高裁でこのような判決が出ました。各メディアとも判決を支持し、大学側のこれまでの「不当な徴収」を批判する論調です。
マイスターも、このような判決が出たことは大学の将来のためにも良いと思います。
ただ、いくつかのメディアで以下のような指摘も。
判決後に会見した元受験生側の松丸正・弁護団長は「消費者契約法の威力をまざまざと見せつけた」と判決を評価した。一方で弁護団には「今回の判決で入学金の高額化が懸念される」(事務局長の塩谷崇之弁護士)との見方もある。
(「私大前納金訴訟 消費者契約法に沿い明暗」(東京新聞)」記事より)
一方で判決は、推薦入試などの例外ケースでは3月中の辞退でも返還を認めないなど、個別の事情を踏まえて返還の是非を検討するべきだという柔軟な姿勢を示した。私立大関係者の間では、「国公立大の中には、4月に入ってから大量に追加合格を出すところもある。有名私大はいいが、地方の私大がそこから欠員を埋めるのは非常に厳しい」との声も根強い。
(「学納金返還訴訟 受験生の弱い立場に配慮」(読売オンライン)記事より)
こうした意見も、確かに的を得ているところがあるように思われます。
今回、「3月31日までの辞退なら大学側は定員補充が可能であり損害は生じないから、3月末までの辞退者には授業料を返還すべき」という点が、判決の論拠となりました。そうなると受験生に逃げられた大学による、3月末~4月アタマの「駆け込み募集」が増加するでしょう。現在も国立大学後期日程の後、熾烈な追加募集合戦が繰り広げられています。この時期では合格を出しても、入試レベルの高い大学から順に学生を確保していくため、その下にある大学がどんどん学生に逃げられていくという、ドミノ倒し現象が起きているようです。
もちろん合格者を出すところでそういったリスクを織り込めればいいのですが、入学金を値上げしたり、合格発表日をギリギリの3月31日に引き延ばしたりする大学も出てくるのではないでしょうか。かえって受験生の方にしわ寄せをするような事態にならないといいのですが。
ところで一連の報道を見ていて、特に印象に残った記述が↓こちらです。
医学部などの前納金は高額で、大阪医大の元受験生が入学前に納めた授業料は六百十四万円に上る。判決では、大学側は授業料を返還しなくてもいいとされたが、元受験生の辞退後に大学側は別の受験生を追加合格させて定員を確保しており、二重取りの感もある。
同大のケースについては、滝井繁男裁判官が反対意見で「辞退後に大学側が所定の入学者を得たにもかかわらず、授業料の返還を拒否するのは著しく信義に反する」と大学側を批判した。
(「私大前納金訴訟 消費者契約法に沿い明暗」(東京新聞)記事より)
考えてみれば、これまで大学は入学辞退者からも授業料を徴収していたわけですが、可能な限りその分の欠員は追加募集で埋めていたのですよね。それってこの記事で指摘されているように、授業料の二重取りではないでしょうか。大阪医大に限らず、多くの大学で同様のことが起きていたのではないかと推察します。うーん……。
新司法試験、難しすぎる?
■「新司法試験難しすぎる…法科大学院アンケート」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20061125ur01.htm
法科大学院協会は24日、今年初めて行われた新司法試験について、全国の法科大学院を対象に実施したアンケート結果を発表した。
それによると、問題の質や量については、回答を寄せた64校のうち6~7割の大学院が「適当」と答える一方、「試験が難しく、現在の授業内容では対応できない」などの声も相次ぎ、約半数の大学院が、「今後、授業内容の変更が必要になる」とした。
調査結果によると、試験内容が今後の授業に与える影響について、「多少の変更を要する」と答えた大学院が54・2%に上った。理由として「難解すぎて平均的な授業の内容では対応できない」「問題の傾向が実務的すぎる」などの意見があった。試験が日曜日を挟む連続4日間で実施されたため、「日程が過酷で、受験者の負担が大きい」という指摘も複数あった。
今回の試験は、大学で法学を学んだ法科大学院修了者(2年コース)が対象だったが、来年からは、法学未修者(3年コース)も加わるため、「法学未修者が今回の試験のレベルに3年間で達するのは難しく、別の形式の試験方法を考えるべきだ」との意見もあった。
(上記記事より)
このようなアンケート結果が出ているそうです。皆様はどう思われますか。
個人的には、6~7割の大学院が「適当」と答えているのであれば、難易度を下げる必要はないと思います。各校とも苦戦しているようではありますが、現に合格者を多数出している大学院はあるわけですし。
そもそも旧司法試験に比べて合格者を多くするわけですから、試験の難易度は妥協してはならない、司法制度の「生命線」でしょう。「法学未修者が今回の試験のレベルに3年間で達するのは難しく、別の形式の試験方法を考えるべきだ」という意見もあるようですが、法学既習者と未習者を同じレベルで卒業させることができないのなら、それは法科大学院の構想自体に無理があるという話はないでしょうか。
ただ、日程(四日連続で過酷)などについては、見直していった方がいいですよね。また問題の傾向が実務的すぎるというのは、合格者達の追跡調査の結果をふまえながら、法務関係者全体で今後も議論していくべきことなのでありましょう。
アメリカの大学、産業界からの支援金が減少中。
■「米大学の研究開発、産業界の支援減少・全米科学財団調べ」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20061127AT2M2501C26112006.html
全米科学財団の調べによると、米産業界による大学の研究開発への支援が縮小している。支援額は2001年をピークに下り坂にあり、04年まで3年連続で減少。全体の研究開発資金に占める割合も1999年の7.4%から04年は4.9%に下がった。財団は「30年以上続いた企業と大学の強固な関係が終わりを迎えたのかもしれない」とみている。
産業界から大学への支援額は01年に22億ドルに達するまで右肩上がりで増えてきたが、直近の数字である04年は21億ドルと3年間で5%減った。他方、米国の産業特許のうち科学・工学の学術論文からの引用は98年の9602件を頂点に99―02年は8000件台に減少。04年はピーク時より3割以上少ない6573件だった。
(上記記事より)
アメリカで、産・学の蜜月関係に陰りが出ているようです。一般にアメリカの大学では、大学の財政における産業界からの支援の比率が、日本のそれよりも大きいと言います。それが3年連続で減少となると、大学関係者にとっても大きな痛手でしょう。研究費の減額はもちろん、経営戦略を修正する必要も出てくるかも知れません。
ところでふと思ったのですが、こうなると「科学研究・開発費の増額」を大統領選の公約に掲げ、関係者からの支持を取り付けようとする候補なんてのが、やはり出てくるのでしょうか。日本では、選挙公約に科学研究費のことが出てくることは滅多にありません。せいぜい何十条もあるマニフェストのひとつに「一応入れてある」という程度であり、具体的なプランに落とし込まれたという話は聞きません。たぶん票にならないという判断からでしょうが、そのあたり、アメリカではどうなんでしょうね?
新たな競争的資金。
■「有力研究大学に資金を支給、文科省の新施策がスタート」(NIKKEI NET)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20061128/114516/
財務省が平成19年度予算を編成する時期が2006年12月に迫り、各有力“研究大学”は、文部科学省の新施策「グローバルCOE(Center Of Excellence)プログラム」向けの提案内容の詰めを急いでいる。グローバルCOEプログラムは文科省の平成19年度の目玉施策であり、概算要求 231億円に上る。内閣府の科学技術総合会議が「S」評価を下した、優先順位が高い施策である。
(上記記事より)
というわけで、ポスト「21世紀COE」という位置づけの、新たなプログラムがスタートします。
↓日本学術振興会のサイトに、プログラムの概要がまとめられています。
■「グローバルCOEプログラム〔文部科学省平成19年度概算要求の概要〕」(日本学術振興会)
http://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/01_gaiyo.html
現行のCOEが274拠点を採択したのに対し、グローバルCOEでは150拠点程度。支援規模は年間5千万~5億円で、数を絞ってより重点的に支援をする方針のようです。
基本的には新規の応募を優先するような書かれ方ですが、現行のCOEで満足のいく成果を上げた拠点は、継続的に採択される可能性があります。過去に配分された資金を生かせたかどうかが問われそうです。
以上、今週のニュースクリップでした。
最後におまけニュース。
■「教職員OBら 『広島大学マスターズ』設立」(TSSスーパーニュース)
http://www.news.tss-tv.co.jp/news_html/061202-040.html
広島大学が行う地元の街づくりなどに積極的に協力することを目的として、広島大学の教職員OBの皆様が「広島大学マスターズ」を結成したという報道です。
こういうの、すごくいいなぁ。
今週も一週間、毎回長~いブログにおつきあいくださいまして、本当にありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
マイスターでした。