大学に恋させよう! 「ウォンツ」にこだわるオープンキャンパス

マイスターです。

・オープンキャンパスのサービスあれこれ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50222759.html

↑昨日の記事で、オープンキャンパスについて

「まずはどんな手を使ってでも来てもらおう」という発想は、大事です。

広報やPRを企画する際に大切なことは、「世の中の人間のほとんどは、自分達に興味なんて持っていない」という前提を持つことです。

……と書いたばかりだったのですが、言ったそばから、さっそく↓こんな報道を見つけてしまいました。

■「函館市内の8高等教育機関が合同学校説明会と模擬講義を開催」(ブレーン・ニュース・ネットワーク)
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_genre=17&news_cd=H20021023332

<高校生を対象にするも、来場はほぼ皆無。>

17日、函館市内の大学、短大、高専の計8高等教育機関による合同学校説明会「アカデミック・フライトinはこだて」が、函館市中央図書館で開催された。函館市高等教育機関連携推進協議会の主催で、市外に目を向けがちな市内の高校生に、市内の高等教育機関に進学してもらおうという意図によるもの。各校のパンフレットや過去の入試問題などを取り揃えた学校説明・進学相談コーナーが設けられたほか、3つの大学の教授らによる各30分の模擬講義が行なわれた。
また、FMいるかでパーソナリティーを務める山形敦子氏が「イマジネーションと進路」と題して、自らの歩みを振り返りながら講演した。
(略)
だが、肝心の聴衆には高校生は皆無。大人ばかり約40名が耳を傾けていただけで、山形氏も「今日は高校生が多いと聞いていたのに・・・」と戸惑った様子。各校の説明コーナーにも訪れる人はほとんどおらず、「3連休の最終日だし」「昨日学校祭があったから」などと関係者が互いに慰めあう声ばかりが聞かれた。

もともと函館市高等教育機関連携推進協議会は、市内の高校生が市内の高等教育機関に進学したがらないなどの理由から、この2月に市内8高等教育機関と函館市によって設立されたばかり。今後も高校生へのPRのためさまざまな事業を計画しているが、図らずも今回の失敗は計画の甘さと、高校生の動向を把握する難しさを露呈した格好になった。
(ブレーン・ニュース・ネットワーク記事より。強調部分はマイスターによる)

言わんこっちゃない!

「高校生が来ず、大人ばかり40名」ってのは、失敗以外の何物でもありません。市場の方を見ず、業界関係者の反応ばかりを気にしている広報担当者が仕事をすると、こういう結果になるという良い例です。
関係者同士慰め合っているのではなく、まず「大失敗でした」ということを早く認めて前に進まないと、何にもなりません。せっかくの連携事業なのに、広報担当のせいで台無しになっていて、もったいないです。

……っと、この話はこのくらいにしておきまして。
今日の話題は、

【オープンキャンパスを効果的に「結果」につなげるには、漫然と実施するだけではなくて、高校生の想いを惹きつけるような内容にすることが大切】

ということでしたね。

ところでその前に、マーケティングでよく使われる言葉をご紹介します。
それは、「ニーズ」「ウォンツ」。ニーズの方は、皆さんも普段から何気なく使ってらっしゃると思います。

(実はこの二つ、マーケティング用語として様々なところで紹介されているのですが、人によって「ウォンツ」の説明がまちまちです。ですのでここではマーケティングの権威であるコトラーによる定義をご紹介しますね)

マーケティングの基本となる最も重要な概念は、人間のニーズである。
「ニーズ」とは、欠乏を感じている状態を指す。食べ物、衣服、保護、安全への生理的ニーズ、帰属・愛情への社会的ニーズ、知識、自己表現への個人的ニーズなどがあるが、こうしたニーズは、マーケターが作り出すものではなく、あくまでも人間の性質の基本にあるものである。

「ウォンツ」とは、人のニーズが具体化したもので、文化や個人の性格によって異なる。例えば、アメリカ人は空腹になれば、ハンバーガーやフライドポテト、コーラが欲しくなるだろうが、バリ島の人が空腹になれば、マンゴー、干豚の丸焼き、豆などを求める。つまり、ウォンツとはニーズを満たす特定の対象のことである。
(以上、『コトラーのマーケティング入門』より)

いかがでしょうか。ニーズとウォンツの違い、イメージしていただけたでしょうか。

例えば、こういうことです。

炎天下の中、一日中、営業まわりをしてきたビジネスマンが、
「あ~、のどが渇いたなぁ。何か冷たい飲み物が飲みたいなぁ~。」
とつぶやく、これは「ニーズ」です。
ニーズとは、漠然とした欲求です。この例の場合、「どうやって満たされてもいいけれど、とにかく、のどの渇きを潤したい」ということですから、冷たい飲み物があれば、欲求は満たされることになります。

それに対し、
「あ~、のどが渇いたなぁ。駅前のビアガーデンでビールを飲みたいなぁ~」
とつぶやくのは、「ウォンツ」です。
こちらの例では、同じ「冷たい飲み物」という条件を満たしていたとしても、コーラやお茶ではダメなのです。ビールでなければならないのです。それも、「駅前のビアガーデンで飲むビール」を欲しているのです。
この例から、ウォンツで選ばれる製品やサービスが、強力な市場競争力を持っているということを、想像していただけるのではないかと思います。

また、こういう説明をされることもあります。

ニーズを満たしてくれる製品に出会う時という場面というのは、大体、消費者主導の展開です。
のどが渇いたなぁ~といってコンビニに行き、棚に並んだ飲み物の中から、その日の気分に合わせて適当にお茶やコーラを選び、買って帰って飲む、それだけです。どうしてもこのメーカーのお茶、というこだわりがあるわけではないので、ニーズを満たしてくれそうな製品なら、何でもいいわけです。

しかし、ウォンツを刺激し、指名されるような製品というのは違います。
他と比較できない、比較しようがないという状態だからこそ、ウォンツなのです。
消費者が選ぶというよりは、「どうしてもこれを選んでしまう」というくらいの独特の魅力を放っている状態です。(往々にしてそこでは、客観的な性能やデータよりも、フィーリングや思い入れがハバをきかせています。こうした比較できないポイントで勝負している製品は強いのです)

ビジネスの世界で、「ウォンツ」重視の姿勢を明確にしている典型的な事例は、Apple Computer社。
「初代iMac」や「iPod」は、世の中のニーズに合わせて開発されたものではありません。一般消費者にヒアリングをしても、「5GB分の音楽を持ち歩ける、ファッショナブルなハードディスク音楽プレイヤーが欲しい」なんて意見は聞けなかったはずです。でも店頭に登場した途端、バカ売れしました。
「これこれ、こういうのだよ! 俺が本当に欲しかったのは!」
と、皆に思わせることに成功したからです。iMacやiPodは、消費者本人も気づいていない潜在的な欲求を刺激し、他に代替手段のない「ウォンツ」に対応する製品になったのです。
今では似たようなスペックの、もっと安い音楽プレイヤーが電器屋に並んでいますが、iPodの優勢は一向に崩れません。「音楽を聴きたい」ではなく、「iPodで聴きたい」と思わせているからでしょう。

もっとも、ニーズとウォンツ、どちらがエライということはありません。
「ニーズをウォンツに変えることが大切」なんて言われますが、必ずしもウォンツに対応できなければものが売れないというわけではありません。
ニーズに沿った製品をこつこつ開発して、他社の製品と競争しながら売っていくことだって大切です。世の中に存在するほとんどの製品は、そうやって売られているのですからね。

より楽しく、ニーズとウォンツの違いをイメージしていただくために、もう一言。

マイスターは、よくニーズとウォンツの違いを、「お見合い」と「恋」の違いみたいなもんですよ、と説明します。

学歴はどうなんだろう、長男はなるべく嫌だな、一流企業に勤めているのかな、なんていって結婚相手を選ぶのが、お見合いのプロセスですよね。なるべく条件の高い人を選ぼう、という行為です。これは、いかに自分のニーズにあった商品を探すか、という発想だと言えるでしょう。

一方、「(理由は自分でもあまりはっきりわからないけど)この人じゃなきゃイヤ!」というのが、「恋」ですよね。(ぽっ)
同じようなタイプの人だからと言って、代わることはできません。これ、マーケティング用語で言えば、「ウォンツ」ってことなんじゃないか?とマイスターは思います。

我ながら、照れる説明です。でも、それぞれのニュアンスをよく言い表せているんじゃないかと思います。

本題に入ります。

大学の入試広報には、様々なアプローチの仕方があります。

きれいなパンフレットで大学のデータを詳細に公開したり、教育カリキュラムの内容を丁寧に説明したり、就職先の一覧をアピールしたりするのは、その方法の一つでしょう。こつこつと自分達の良さを説いていく、お見合いのようなアピールの仕方ですね。こうした行為は、言うまでもなく非常に大切です。

一方、大学のありのままの姿、活気のある学生生活の様子などをぶつけて、
「大学に対して恋をしてもらう」
というアプローチの仕方も、確実に存在しているように思われます。

就職率だの、カリキュラムだの、パソコンの台数だのといった情報は二の次で、
「あの大学が好き! 絶対にあの大学に行きたい!」
と言わせるためのアプローチです

上述した話で言えば、「ニーズ」をこつこつ満たすことで競合大学との競争に勝ち受験生から選ばれる、というのではなく、ウォンツになる、つまり他と比較不可能な存在になるという勝負の仕方です。
この両方の発想が、受験生に対する入試広報には大切だと、マイスターなんかは思うのです。

では、「オープンキャンパス」の役割って、何でしょうか?

色々ありますが、もし、オープンキャンパスをマイスターが企画することになったとしたら、その際の全体目標は明確です。

「受験生達が持っている漠然としたニーズを、本学への明確なウォンツに変えること」が、オープンキャンパスの一日で達成すべき目標です。
つまるところ、「大学に恋させること」が目的です。

マイスターなら、学科説明も、在学生との交流も、キャンパスツアーも、学食での食事も、そのすべてを「大学に恋してもらう」という目的のための手段として位置づけます。

ニーズを攻めるアプローチは、パンフレットやwebサイトといったメディアでもある程度、可能です。
でも、「この大学じゃなきゃ行きたくない!」と思わせる機会、大学に惚れさせる機会は、そんなに多くはありません。直接、キャンパスの空気を吸ってもらうことでしか、伝えられないものがあるわけです。(人間同士の恋愛だって、そうでしょ? ぽっ)

オープンキャンパスは、限られた時間の中、わざわざ受験生本人がキャンパスに足を運んでくれる貴重な一日。
だったらその時間は、「ウォンツを刺激する」部分に費やした方が得策だとマイスターは考えるわけです。

受験生に対して義務感で接しているような教職員なら、いっそいない方がいい。
あまりに客観的な事実しか伝えないような研究室紹介なら、やらない方がいい。

大学に恋させてくれるようなスタッフだけ、
大学に恋させてくれるようなイベントだけを用意して、
大学の魅力をアピールするのです。

夕方、キャンパスを去る受験生達の目がハートマークになっていたら、ミッション達成です。

書いてみると、当たり前のことを言っているような気もします。
でも実際には、どうですか? オープンキャンパスの位置づけとか目標とかって、結構どこもあいまいだったりしませんか?

とりあえず受験生をキャンパスに集めて、学科の説明して、キャンパス内を案内して、資料を渡して……と細かい段取りは決めていても、「この一日で、何を達成すれば、オープンキャンパスは成功したと言えるのか」ってことが、共有されていなかったりしませんか?

「オープンキャンパスで、受験生に、ウチの大学を好きになってもらおう!」と言いながら、実際にはパンフレットでもわかるようなことを説明しているだけだったりしませんか?

もちろん、考え方は色々だと思います。丁寧に情報を伝えることにこだわったオープンキャンパスもアリです。
ただ、マイスターはどちらかというと、ニーズとウォンツで言えば、オープンキャンパスが強みを発揮するのは「ウォンツ」の部分ではないかと考えるのです。
ですから、「大学に恋させること」を目標に設定するのです。
「他の大学ではなくて、ここの大学の大学にどうしても行きたい!」
そう思わせる体験を用意して、受験生の皆様をお待ちできるようにしたいなぁと思います。

では、具体的に、どういうことをすれば受験生が恋してくれるのか。
残念ですがそれは、お教えできません。人によって魅力のあり方が違うのと同じように、大学の魅力もそれぞれ違うからです。受験生に惚れてもらうための特効薬はありません。

ですのでそれぞれ、自分達の魅力を考えて、試行錯誤してみてください。
帰り際の表情を見れば「私、この大学に惚れました」という顔をしている人はわかります。
そういった方々に、その後も的確なアピールをしていけば、恋愛は成就するんじゃないでしょうか。

以上、恋だの惚れるだのといった言葉を連呼したため、今日はちょっと気恥ずかしいマイスターでした。

2 件のコメント

  • マイスター様、毎日ブログ楽しみに拝見させていただいております。
    今回のブログは背中に電気が走りました!
    私たち短期大学のマーケットでは四大に比べ、勝ち組・負け組が色濃くでている昨今、各短大が様々な施策を打っていることは確かです。しかし、短期大学の中には少ないマンパワーの中で毎日のルーティーンワークに追われ目標を見失いがちな短期大学もあり、このままいってもジリ貧になっていくことは目に見えています。入試広報とはマイスターさんが言われるとおり、オープンキャンパスやその他の学生募集に関する(「ウォンツ」=人間の欲求=心の働きが具体的になった自発的行動)いかに高校生の欲求に添えるものになるのかを(受動的)義務行為としてではなく能動的行為として行っていくかがキーになりますね。
    マイスターさんのブログはいつも勉強になります!!
    これからも期待しております!!

  • おっしゃるとおり、受験生の「ウォンツ」じゃなく大学・短大側の「デザイア」ばかりが目立つツール、イベントが多いですよね(>_<) あと、先日のシニア住宅の記事にトラバしようと思ったのですが、なぜかできなかったので、この場を借りてお知らせいたします。