マイスターです。
大学は、何かにつけてランク付けされる機関です。
様々なメディアや調査機関がそれぞれ独自の指標を用いて、大学を順位づけします。
最も身近なものは偏差値ランキングでしょうが、そのほかにも毎年、論文引用度や研究費の額、図書館の蔵書数などなど、様々な角度からのランキングが発表されています。
(朝日新聞社の『大学ランキング (2007年版)』など、皆さんもおそらく手に取ったことがおありでしょう)
偏差値のようなランキングがあまりに大きな意味を持ちすぎるのはどうかと思いますが、しかし何かの指標を元に比較評価されること自体は悪いことではありません。
社会にとって意義の大きいモノサシが使われれば、大学の健全な成長が促されるでしょう。
さて、「世界の大学ランキング」としては、「NEWSWEEK」や「TIMES」といったメディアによるものが一般に知られています。
両方とも世界的な知名度を持つメディア。それだけに影響力も侮れません。世界各国の大学経営者達が、これらのランキングの結果を見守っているのではと思います。
さて先日、そのうちの一つ「TIMES」の方のランキングが出たみたいです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「The Times Higher World University Rankings 2006」(THE TIMES HIGHER EDUCATION)
http://www.thes.co.uk/worldrankings/
※有料。ただしFREE TRIALも有り
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正確には「TIMES」ではなく「THE TIMES HIGHER EDUCATION」ですね。「The Chronicle of Higher Education」と並ぶ、大学人ご用達の高等教育専門紙です。
閲覧は有料なのですが、フリートライアルとしてログインすれば、ちらっとだけ読める……かも知れません。とは言え、やはりお金を取って公開している順位をブログでそのまんま引用するわけにもまいりませんので、ここでは調査の概要だけご紹介いたします。
詳細を知りたい方は恐れ入りますが購読されるか、図書館などで閲覧していただければと思います。図書館にない場合はこの際、購読をおねだりしてみてはいかがでしょうか。
(ちなみに桜美林大学の「大学アドミニストレーション専攻」大学院がある新宿のキャンパスには、「THE TIMES HIGHER EDUCATION」も「The Chronicle of Higher Education」も置いてあるようです)
というわけで調査結果です。
オンライン版を見た限り、学問分野別及び地域別に以下のようなランキングが発表された模様です。
【World rankings】
The World’s top 200 universities
The world’s top 100 science universities
The world’s top 100 technology universities
Top non-university institutions in science
Top non-university institutions in technology
The world’s top arts and humanities universities
The world’s top social science universities
The world’s top non-universities in social science
Top 100 biomedicine universities
Top non-university institutions in biomedicine【Geographical excellence】
Top 50 European universities
Top 50 North American universities
Top 50 universities in the rest of the world(「Internationnal Comparisons」(THE TIMES HIGHER EDUCATION)より
このうち、総合ランキングである「The World’s top 200 universities」の内訳をカウントしてみました。
アメリカ:55校
イギリス:29校
オーストラリア:13校
日本:11校
オランダ:11校
ドイツ:10校フランス:7校
スイス:7校
カナダ:7校
中国:6校
ベルギー:5校スウェーデン:4校
香港:4校
デンマーク:3校
オーストリー(オーストリア):3校
イスラエル:3校
インド:3校
韓国:3校シンガポール:2校
ニュージーランド:2校
ロシア:2校
マレーシア:2校
ノルウェイ:1校
メキシコ:1校
台湾:1校
タイ:1校
アイルランド:1校
フィンランド:1校
スペイン:1校
イタリア:1校(「The World’s top 200 universities」(THE TIMES HIGHER EDUCATION)を元に作成)
いかがでしょうか。
アメリカ、イギリスというアングロサクソン圏の強さが圧倒的なのが分かりますね。200校の中の「トップ10」は、実はこの2国が独占しています。
(もっともこれは、逆に言えばアングロサクソン的な価値観に基づく評価軸が設定されているということなのかもしれません)
さて日本は11校。
これを「立派な数字!」と考えるか、「経済力からすればもっとがんばれるはず」と考えるか。皆様はどう評価されますか。
(ちなみにマイスターは立派な数字だと思うのですが、「まだまだいけるはず」とも思います)
この11校が具体的にどこなのかは、実際に紙面をご覧になってお確かめください。
「こことここかな」と予想してから見ると面白いかも知れません。
さて、この200校を、エリア別に集計してみると、↓こんな感じになります。
ヨーロッパ:86校
北米:63校
アジア:33校
オセアニア:15校
中東:3校(「The World’s top 200 universities」(THE TIMES HIGHER EDUCATION)を元に作成)
ヨーロッパの大学は、地盤沈下していると言われることがあります。アメリカやイギリスに比べると存在感を失ってきたと。
でもこうしてカウントしてみると、(カウントされる国数が多いというのもありますが)エリア全体での層の厚みは流石だなと思います。
アジアもおそらくここしばらくの間、数を増やしてきているようです。
「Science」や「Technology」など分野別のランキングを見ると、さらにその割合は増えます。逆に人文科学系、社会科学系などでは目立ちません。
マイスターが思うに、英語で論文を発表することの有利・不利がこうした分野では比較的大きく出るという原因もありそうです。アジアの研究者達がもっと英語で論文を書くようになれば、ランキングが若干変わっていくのかも知れません。
そして……皆様もお気づきでしょうが、アフリカの大学は皆無です。
アフリカの大学がちょっとでも入ってくると、このランキングの印象がまるで違ってくると思うのですが。
同様に、中東の大学がイスラエルの3校のみという点にも考えさせられます。
学術研究や教育の力というのは、国の経済力にも大きな影響を受けます。
もちろん経済力だけですべてが決まるわけではありませんが、あまりに国が貧しければ、高度な研究や教育は困難です。
残念なことに、新たな知を生み出すのも、まずお金があってこそです。
こうした大学ランキングへの登場頻度を世界地図に色分けして塗ってみたら、少し変わった世界の見方が浮き上がってくるかも知れません。
もし「THE TIMES HIGHER EDUCATION」のランキングを見る機会がありましたら、皆様それぞれで、色々な読み解き方をされてみてはいかがでしょうか。
以上、マイスターでした。