計画性のない子供だったせいか、いまでもこの時期になると、なんだか落ち着かないマイスターです。
全国の児童生徒のみなさんは、宿題大丈夫でしょうか……。
さて、今日も、一週間分のニュースクリップをお届けします。
医師の偏在・不足を解消するための対策が進められています。
■「医学部定員を一時増員」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060819ik01.htm
医師の不足や偏在の問題に対応するため、厚生労働、文部科学、総務の3省で検討していた「新医師確保総合対策」の原案が18日、明らかになった。
医師不足が特に深刻となっている都道府県に限り、大学医学部の定員増を暫定措置として認めるほか、離島やへき地で勤務する医師を養成している自治医科大学の定員も増員する。また、都道府県の要請に基づき緊急避難的に医師を派遣・紹介するシステムを構築する。3省は近く最終的な対策をまとめ、可能な施策から実施に移す。
医学部の定員は、1986年以降、削減傾向が続き、97年に「引き続き医学部定員の削減に取り組む」ことも閣議決定された。定員増が認められれば約20年ぶりの方針転換となる。
原案では、定員を暫定的に増やす条件として〈1〉県が奨学金拡充など卒業後の地域定着策を実施する〈2〉定着する医師が増えた場合に限り、暫定的な増員が終わった後も以前の定員数を維持できる――こととした。
また、医学部が地元出身者の入学枠を拡充することや、山間へき地で活動する地域医療の志望者を対象に特別入学枠を設けることを推進するとした。卒業後の一定期間は地元の医療機関に勤務することを条件に、都道府県が奨学金を設けることも盛り込んだ。
政府も、医師が特に少ない都道府県を対象に、医師確保のための補助金を重点配分する。
(上記記事より)
「医師不足が特に深刻となっている都道府県」に限って、医学部の定員を増加させる方針が採られるようです。
医師数が増えると医療費も確実に増加することから、政府はこれまで医学部の定員を厳しく抑制する政策をとってきた。部分的にせよ、政策の転換を決めた背景には、医師の大都市への流出・偏在が看過できないほど深刻になっている事情がある。
と、上記の記事では解説しています。今回の定員増は、事態の深刻さの裏返しと言うことですね。
ただ、医学部の定員を増やしても、卒業生が地域に定着しなければ意味はありません。大学側にも、地元学生に対する優先枠をもうけるなどの動きが増えてきていますが、地元の病院や、自治体の方でも、卒業生に対するリクルート活動を活発に行う必要があるかと思います。
在学中から、医学部と地域とが連携した教育プログラムを実施するなどの対策も考えられそうですね。
■「定年医師の再就職を支援 山形大、研修機関設置へ」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006082401003711.html
山形大学は24日、医師不足を解消しようと定年退職した勤務医らを研修し、地域病院への再就職を支援する「リフレッシュ医学教育センター」を来年4月にも設置すると発表した。同大によると、定年後の医師を対象とした研修機関は全国で初めてという。
センターは北海道や東北地方を中心に全国から受講者を30人程度募集。専門分野で働いていた医師に幅広い医療の知識や技術をもってもらい、地域医療に必要な「一般医」を育成する。
こちらは発想を変えて、定年後の医師に再教育を施し、地域医療を担ってもらおうという試み。社会全体が高齢化していく以上、若い医師だけで医療を担っていくこと自体、困難になってくるわけです。ですからこうした取り組みも必要になってくるのでしょうね。
薬学を学ぶ学生さんが増え続けています。
■「薬学生は約5万人‐3割が大学院へ進学」(薬事日報)
http://www.yakuji.co.jp/entry984.html
薬学部に今年度在籍している学生数は4万9666人で、全大学生の約2%に当たることが、文部科学省の「学校基本調査速報」で分かった。調査では今年3月に薬学部を卒業した9071人の進路も調べており、約3割が大学院等へ進学したことも明らかになった。
薬学部学生の内訳をみると、▽男女別では男性が2万2278人、女性が2万7388人▽学年別では、1年次が1万3588人、2年次が1万3392人、3年次が1万1976人、4年次が1万0710人――であった。
全大学生に占める薬学生の割合は、全体では1.98%だが、女性の場合は2.71%に達する。また年次別の学生数では、学年が低いほど学生数が多い傾向にある。1年生と4年生では3000人近い開きがみられ、近年の急速な薬学部新設を物語っている。
(上記記事より)
薬学部が6年制になったことで入試にも大きな影響があったとされていますが、実際には結構な人数の学生さんが現時点で大学院進学、つまり6年間の学習を選択しているのですね。いや、もしかすると「現役の薬学部生達は、6年制に移行していく中で、4年間しか学んでいない自分が後に不利になるのではないかと考え、大学院への進学を選択した」という可能性も考えられます。この記事では、今年3月の進学率しか紹介されていませんので、そのあたりの詳細はわかりません。
記事では、薬学部生の急増ぶりも指摘されています。これまでも何度か、薬学部の新設ラッシュに関する報道を本ブログでご紹介してきましたが、需要供給のバランス、大丈夫でしょうか? そろそろ心配になってきます。
医学部や工学部ほどではないにしても、薬学部を作る際の設備投資額は小さくなさそうに思えます。後で廃止するのは大変ですから、くれぐれもご慎重に。
※↓この大学も薬学部を新設するそうです。
■「【立命館大学】2008年に薬学部設置へ」(薬事日報)
http://www.yakuji.co.jp/entry1011.html
臨床医学の研究成果を活用しよう。
■「大学に眠る研究成果『発掘』チーム設置へ 医・薬学系」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0820/005.html
大学に眠る医学・薬学系の研究成果を発掘し、新たな治療法開発につなげよう――。文部科学省は来年度、成果を探し出す「目利き」や実用化に向けた計画の立案にあたる人材など約10人からなる専門チームを、5~10の大学に置く方針を決めた。基礎研究が重視され、臨床応用の軽視が目立つ大学の意識改革を図る狙いもある。
日本の医療分野では基礎研究で論文を書くことが評価され、治療などに役立ちそうな成果が出ても、実用化に至らない例が少なくない。日本は基礎研究で欧米と競り合いながら、実用化に向けた取り組みでは後れを取っている。
文科省が置く専門チームは、実用化のための支援機関と位置づけられ、知的財産の管理や、薬事行政に沿った研究計画立案、統計分析などに詳しい人たちを集める。製薬企業で開発に従事したり、新薬の承認審査に携わったりした人、弁理士らを想定している。こうした専門家の下で経験を積む人材を、国内外から招くことも考えている。
(上記記事より)
日本の研究者達が抱えている問題の一つが、これです。聞くところによると、大学によっては、臨床研究に手を出した研究者に対して「あいつは研究者としてもう終わった」と評価するような空気すらあるのだとか。
アメリカの「メディカル・スクール」と、日本の「『医学』部」の名称の違いが、こんなところにあらわれているのかなぁという気もします。
今週は医療系の動きを報じる記事が多かったですね。
大学を市のシンクタンクに。
■「官学連携の街づくり強化へ/八戸」(東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/20060816152537.asp
八戸市が九月にも、同市内にある八戸大学、八戸工業大学、八戸高専、八戸短期大学に呼び掛け、新たな支援・協力体制の構築を目指すことが十六日、分かった。学校側との協議の中で支援・協力できる内容を具体化させていく。また、市活性化につながるアイデアを学生から引き出したい考えで、市と学生が意見交換する交流会の開催についても併せて協議する。
今年五月現在、四校には合わせて教員約二百三十人と学生約三千五百人が在学している。小林眞市長はこれらの高等教育機関を「市のシンクタンク」と位置付けており、今回の取り組みは「学」と「官」との連携を一層深める狙いがある。
市総合政策部は、支援・協力体制について「まずは学校側が何を求めているか話し合う」考えだが、財政的な支援ではなく、学生が八戸に定着するための就職の場の拡大・確保などソフト面での施策を模索することになる見通し。
地元の大学を「市のシンクタンク」と考える市長。こうした認識がもっと日本中の自治体で広まれば、大学と社会との関係は変わっていくんだろうなと思います。
市長の権限は、その自治体では結構、強力です。市長がその気になれば、「市町村」のレベルでも、大学と様々な取り組みが行えるのではないでしょうか。八戸市にはぜひ、全国のモデルになるような「学・官」連携のあり方を見せていただきたいと思います。
(もっとも自治体としては、「学生が八戸に定着するための就職の場の拡大・確保」という部分への期待もやっぱり大きいんだろうと思いますけれど)
東京都教育委員会が、大学の教職大学院と連携。
■「都教委、新設の教職大学院と連携…プロ教師育成目的で」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060824ic25.htm
こちらも、行政と大学との連携に関する報道です。
指導力のある“プロ教師”を育成しようと、東京都教育委員会は24日、2008年度から教職大学院の設置を目指している六つの大学と連携するプランを打ち出した。
都教委が作成したカリキュラムを大学側に提示したうえで、都内の公立学校で教育実習生を受け入れる一方、現職の中堅教員を派遣して学んでもらう。
都道府県教委と教職大学院の連携は全国でも初めてという。
都教委と協議しているのは東京学芸大、白百合女子大、聖徳大、創価大、玉川大、早稲田大の6大学。都教委では、優秀な新人教員の確保や現職教員の指導力向上を狙い、特別枠で大学院修了者を採用したり、授業力向上のために開いている「東京教師道場」修了者などの教員を1年間派遣したりすることを検討している。
(上記記事より)
専門職大学院というのは本来、こういった連携事業にどんどん取り組んでいくべき機関なんだろうなと思います。優秀なプロフェッショナルを育成して社会に貢献するのが学校の役目。都教委のこうした取り組みは、全国で参考にされてよいのではないでしょうか。
全国のほぼすべての教育委員会、法廷の障害者雇用率を満たせず。
■「教育委員会で障害者雇用、基準下回る」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20060826ik02.htm
全国の47都道府県の教育委員会のうち京都府を除く教委で、雇用する職員に占める障害者の割合が法定雇用率(2・0%)を下回っていることが25日、厚生労働省の調査で分かった。
2005年6月現在の同省の調査によると、障害者の雇用割合が高い教委は、京都(2・12%)、和歌山(1・89%)、大阪(1・88%)の順だった。一方、ワーストは山形の0・77%で、高知(0・87%)、茨城(0・91%)と続いた。
同省は、教委の障害者雇用が他の組織より少ないのは、教職員免許を持つ障害者が少ないためだ、としている。ただ、教員以外の事務職員も法定雇用率の対象であり、同省は「都道府県教委の独立性の高さから、国として強い指導を猶予してきた」ことも認めている。
(上記記事より)
これはちょっと恥ずかしいニュースです。教育委員会は、障害者にやさしくない組織であることが判明してしまいました。独立性の高い組織であるからこそ、逆に障害者を率先して雇用する方針だってとれたと思うのですが、実態は、法定基準もクリアしていない状況のようです。
特に企業(正社員56人以上)に求められる「1.8%」にすら達していない組織は、早急に何らかの対策をとった方がいいのではと思います。
定年後のシニアに義務教育を?
■「シニア向け義務教育の提案–高齢化社会へのひとつの対応策」(ITMedia News)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060824/246296/?ST=govtech
ちょっと過激な意見で、すぐに実現するという類のものではありません。しかし「このままでいけば、いつか、そういう教育機関が必要になるかも」と思わせる内容ではあります。
今後の日本が、「これまでの社会とは全然違った条件におかれる社会」であるということを、改めて考えさせられます。
最後に、海外の話題をいくつか。
オン・デマンド印刷で大学の出版部が復活。
■「ライス大学、出版部門を復活 全デジタル化で再出発」(usfl.com)
http://www.usfl.com/Daily/News/06/08/0821_018.asp?id=50107
ライス大学(テキサス州ヒューストン)は、採算が取れず10年前に廃止した出版部門「ライス大学出版会」(RUP)を、全面的にデジタル化することで復活させる。大学による出版活動の新しい試みとして注目される。
>ウォールストリート・ジャーナルによると、新しいRUPは書籍をすべて同大学のウェブサイトに掲載し、利用者が全内容を無料で読めるようにする。従来通り製本した書籍も販売するが、注文に応じて印刷するオン・デマンド方式で行うため、経費が最小限に抑えられるという。
(略)
129大学で構成される米大学出版協会によると、読者層が限られる専門分野の書籍を発行する出版会の中には、大部数を印刷する従来型の出版を廃止して、少量注文の少量印刷が可能なデジタル出版に移行するところが増えている。
(略)
著者が出版後自作に手を加えたり、作品と資料をリンクさせたり、読者とのチャットが可能になるのもオンライン出版の利点。しかも絶版になる心配がない。ライス大はさらに、ウェブ書籍を基にした「派生商品」の出版許可も著者に求める方針。
(上記記事より)
これは日本の大学も参考にできそうですね。
大学の出版部は採算をあわせるのが大変です。そのため小さな大学では、なかなか独自の出版事業を手がけるのは難しいです。しかしデジタル出版やオン・デマンド方式などの工夫で経費を抑えれば、規模は限定的だとしても、ある程度の出版活動は可能になるのですね。
日本の大学でも、人材さえいれば、こうした活動はすぐにできるんじゃないかと思います。
中国の小学校数、20年で半減。
■「過去20年で小学校が半減、教育機会の格差が生む弊害」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0821&f=column_0821_001.shtml
――中国の学校教育の現状は。
まず懸念されるのが、地方における義務教育機会の減少です。意外に知られていない事実ですが、中国の小学校の数は、1985年を100とした推移で見ると、04年は50以下になりました。つまり、わずか20年足らずで半分以下に減ってしまったのです。過疎地の小学校を統廃合したのが主な原因ですが、その結果、農村地域の小学校は激減してしまいました。
先日開催された中国経済学会全国大会の講演で小島麗逸氏は、日本では、過疎地の小学校を統廃合した場合、新しい学校への子供たちの送り迎えは行政が負担・補助しましたが、中国にはそのような制度はなく、結局貧しい子供たちは、ろくに学校にも行けなくなる可能性が高い、と警鐘を鳴らしていました。まったくその通りだと思います。
マイスターも知りませんでした。成長著しい中国で、こんな問題が起きていようとは。20年で半減というのは、すさまじいハイペースであるように感じます。基礎教育を支える小学校をこんなに劇的に減らして、大丈夫なのでしょうか。
↓一方で、こんな記述も。
――中国の高等教育の現状についてはどうか。
理工系大学への進学割合が高いのは、好ましい傾向だと思います。理工系離れが問題視されている日本では、05年の大卒・短大卒者に占める理工系の割合が22.4%でしたが、中国の04年の大卒・短大卒者に占める理工系の割合は45.1%にも達しました。中国政府が、国の技術力増強を重要目標のひとつに掲げていることも影響しているのでしょう。また英語教育にも日本に比べるとはるかに積極的です。
大学と製造業による産学協同や、研究成果の事業化など、教育界と産業界とが連携を深めているあるいは一体となっていることは、いささかやり過ぎの感がありますが、日本の大学も学ぶべき点が多いと思います。
こちらは高等教育についての記述。理工系の割合が45.1%というのは、工学部の受験者が減少し続けている日本と比較すると、実に倍以上。製造業を中心にした高度経済成長が今まさに進行中の中国と、既にそのフェーズが終わってしまった日本との違いなのでしょうね。
なんだか、初等教育と高等教育とで、現状評価が大きく分かれるといった印象ですね。
もちろん、いつまでも今のように工業中心の急成長を続けることはできません。中国社会の今後は、果たしてどうなるでしょうか。
少子化の影響を受ける韓国の大学。
■「小学生数、集計開始以来最低の392万人」(東亜日報)
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2006082506138
■「[オピニオン]大学大乱」(東亜日報)
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2006082620698
韓国の状況を伝える記事をご紹介しておきます。ご興味のある方はどうぞ。いつも思うのですが、これは日本のことか!?と思うくらい、我が国と状況が似ています。
米ニュース週刊誌ニューズウィークが調査した世界100の大学に東京大をはじめ5校も入っている日本がこうなのに、ましてやたった1校もランク入りできなかった韓国の大学社会はどうなのか。新入生の募集に頭を悩ませている短期大学を一般大学に統廃合しようとしても、消え去る学科の教授らが命がけで抵抗する。大学が生き残るための唯一の処方箋であることを承知の上で、「自分のポスト」を死守するのに精一杯なのだ。日本の名門私学である関西学院大と聖和大が、まったく異なる「血筋」にもかかわらず、2年後「統合新入生」を選ぶことにしたのは示唆するに富む。
(東亜日報記事より)
ちなみに、日本の教授達も命がけで抵抗してますよ。
以上、今週のニュースクリップでした。
この数日間、niftyの「瞬ワード」を観察していますが、「自由研究」という語がランキング上位にちょくちょく入っています。
■「瞬ワード」(@nifty)
http://www.nifty.com/shun/ranking.htm
(※niftyでどんなワードが検索されているかを、1時間ごとに集計・表示するサイト)
全国の子供達(とその保護者)が、すぐできる自由研究のネタを探して右往左往している様子が目に浮かびますね。
昔と違うのは、宿題のためのネタを、インターネットですぐに見つけられるというところでしょう。↓こんなサイトもあります。
「すぐできる!自由研究」(キッズgoo)
http://kids.goo.ne.jp/event/summer/jiyukenkyu/
こうしたサイトは便利で良いですが、ただ表示されたマニュアルの通りに作業をするだけでは、本来の自由研究の意味が失われてしまいます。参考にするのは結構ですが、「どうしてこうなるんだろう?」ということを、本人にちゃんと考えさせるようにしましょうね。
>サポートに追われる全国のお父様お母様
今週も一週間、本ブログをご覧いただきまして、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
マイスターでした。