仕事の手順に関する記録に埋もれて、日々の雑感や、気づいたことなども、けっこう書き留めています。(それが、このブログのネタになっていたりします)
今日見直したメモには、
「大学職員には、ベテランはいても、プロはいない」
と書かれていました。
転職して、まだ一週間も経たないうちのメモでした。
読んで、ちょっと、勤め始めた頃の気持ちを思い起こしました。
そこで今日は、この業界で1年半過ごし、正直ちょっと「慣れて」きてしまっている自分に活を入れるためにも初心に帰り、「大学職員はプロかどうか」について、今一度厳しく考えてみたいと思います。
このブログを読んでくださっている方には、ご存じの方も多いかと思いますが、日本の大学職員は基本的に、ローテーション人事に流されながら一生を終えます。
新卒一斉採用で入職後、学生課に配属され、
5年くらい働いて経理課に移動し、
また7年くらい働いて、今度は就職支援課に配属。
そこで7年過ごしたら、付属高校の事務室に入り、
その後、広報課の管理職を努めて、
最後は研究支援センターの次長を務めて退職……みたいな感じです。
当然、大学によって、人事の仕組みは違うと思います。
あんまりローテーションはない、という大学もあるでしょうし、ある程度範囲を絞った人事異動(教学部門、法人部門、情報システム部門、など)を行う大学もあるでしょう。
また、同じ大学でも個人差はありますから、入ってイキナリ10年くらい同じ部署にいるという人もいれば、最初は部署を転々とする人もいることでしょう。
しかし、多くの大学は「色々な部門を横断的にローテーション」する人事システムを採用しているように思います。
大学職員になってから知り合った方々から、「今度、○○課に異動になりました」なんてメールをいただいたりしますし。
そう、大学職員というのは、超・ゼネラリスト志向な集団なのです。
大学職員のキャリアパスについて尋ねたとき、
「大学職員は、ゼネラリストであることが理想だと思う」
と答える業界人は、少なくありません。
ただ、この「ゼネラリスト」という言葉も、注意して使わなければなりません。
企業で言う「ゼネラリスト」と、大学職員の在り方は、似て非なるものだとマイスターは思っています。
* * * * *
ゼネラリストであることを極めた先の到達点は、なんでしょうか?
色々とご意見はお有りでしょうが、一般的に想像されるのは、「プロのマネージャー」でしょう。経営者、管理者ですね。
ゼネラリストというのは、スペシャリストの対義語です。
スペシャリストが、木を見ることに特化したプロだとすれば、ゼネラリストは、森を見ることに特化したプロだと言えます。
おそらくこの「森を見ることに特化したプロ」というのが、全国津々浦々の大学がこれまで考えてきた、大学職員の理想形だったんじゃないかと、マイスターは想像します。
一方最近では、「大学職員は、専門性を身につけなければならない」という主張も聞かれるようになりました。
現在も、情報システムや図書館部門、学生相談室などには専門職と呼ばれる方がいますが、それだけではなく、キャリアセンターやアドミッションズオフィス、研究支援センターといった部門や、奨学金、海外交流、企画・広報、財務、カリキュラム設計など、大学の多くの部門で、専門的知識を持ったスペシャリストを育成しようというのですね。
マイスターも、専門性を持った職員を増やすことに、大賛成です。
2、3年程度で身につけた知識&スキルでは、今後、高度化する大学管理業務は担えないと思うからです。
ただ、もちろん全員がスペシャリストになるというわけではありません。
ゼネラリスト育成コースに乗って、森を見る経験を積み重ね、
「プロの大学マネージャー (=アドミニストレーター)」
を目指す方だって、当然必要になってくると思います。
どちらか片方だけでは、最高のスタッフ集団にはなりません。
スペシャリストとゼネラリスト、両者がともに混在しながらレベルの高いチームを組んで、高度なプロジェクトを立案・実行していくというのが、マイスターが想像する理想の大学スタッフ像です。
このチーム像に異論を持たれる方は、あんまりいないんじゃないかな……? と思いますが、いかがでしょうか。
さて、今日申し上げたい内容は、実はここからなんです。
ゼネラリストを目指すにしても、
スペシャリストを目指すにしても、
まずは「プロフェッショナル」であるということが、条件なんですよね。
そんなの当たり前だと思われるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。あなたの周りに、「この人はプロだ!」と思える方、いますか?
(1)プロの、ゼネラリスト
(2)プロの、スペシャリスト
(3)アマチュアの、ゼネラリスト
(4)アマチュアの、スペシャリスト
社会人を、強引に上記の4タイプに分類したとしましょう。さて、あなたの大学にはどのタイプの職員が多いですか?
残念ながらマイスターは、
○管理職になるまでは、アマチュアのスペシャリスト
○管理職になってからは、アマチュアのゼネラリスト
……という状態に甘んじてしまっている方が、実は大学職員業界の大半を占めているのではないかと思うのです。
大学職員の人事制度はゼネラリスト養成志向だと述べましたが、じゃあ、「森を見るプロ」が本当に育っているかというと、実態は怪しいものです。
マイスターが思うに、日本の大学には、ゼネラリストとしてデータを分析し、客観的な判断を下せるプロは、残念ながらあまりいません。(これは、自分の勤め先のみだけでなく、様々な勉強会や交流会に参加し、多くの大学のベテラン職員の方々とお話をした結果、感じることです)
こんなことになってしまうのは、大学職員一人一人に甘えがある……という部分ももちろんありますが、しかしそれ以上に、大学の人事戦略に問題があるように、マイスターには思えます。
先述したような、ローテーション人事システムでは、プロフェッショナルとしてキャリアを積み上げられないのも無理はありません。
「新卒一斉採用で入職後、学生課に配属され、5年くらいで経理課に移動し、7年くらいで就職支援課に配属。10年後、付属高校の事務室に入り、その後、広報課の管理職を努めて、最後は研究支援センターの次長を務めて退職」
このキャリアパスを見て、「木を見るプロ」や、あるいは「森を見るプロ」になれると思う方、おられるでしょうか?
実は、各部門の業務をつまみ食いしているだけなのですから、本当のスペシャリストは育てていないのです。
また、そんな半端なキャリアしか積んでこなかった方が、年功序列で管理職になった途端に、突然プロのゼネラリストとして森を見られるようになるというのも、無理があります。森を見る訓練も、実はあんまり、していないのですから。
このキャリアパスに沿って数十年働いたら、育つのは、
「とりあえず、関連はないけど色んな業務を数多く経験してきたので、体験知だけは持っている」
という、「ベテラン」さんなのではないでしょうか。
「ベテラン」さんは、学内の色々なことを知っています。
この申請はいつごろ誰に渡すといい、とか、
あの先生は気難しいから特別扱いね、とか、
時間割作成ワーキンググループは何月頃に招集すると後がスムーズ、とか、
この改革案は絶対に教授会を通過しないから出してもムダだ、とか、
とにかく、色々と細かなことを知っています。
その体験知のおかげで、業務がまわっている部分もあるので、教員も若手職員も、「ベテラン」さんにはアタマが上がりません。
でも、「ベテラン」は結局、ベテラン以上の存在ではないんです。
「ベテラン」さんであるだけの方に、森を見て判断することはできません。
「ベテラン」さんだからといって、財務や広報の戦略立案やカリキュラム改革、キャリアカウンセリングなどの、高度な専門業務ができるわけでもありません。
ベテランであるということは、何かのプロフェッショナルであるということとは、違うのです。
でも、日本の大学では、それが理解されていないような気がします。
もちろんベテランさん達だって、好きでアマチュアのままでいるわけではないと思うのです。長く経験を積んでいるのは強みなのですから、今からでも遅くありません、何がしかのプロフェッショナルになってもらったほうがいいと思います。
でなければ、せっかくの人的資産がもったいないと、マイスターは思います。
さしあたって、個々の職員もまず、「プロフェッショナルになるんだ!」ということを強く意識した方がいいと思います。単なる「ベテラン」ではなく、「プロフェッショナル」です。
そうやって、全国の大学スタッフが何らかのプロフェッショナルになっていかないと、本当の意味で、日本の大学改革は成功しないのではないでしょうか。
ただの「ベテラン」じゃあ、面白くありません。
さぁ、みなさん、この世界で本当の「プロ」を目指しましょう!
以上、今後の自分自身を引き締めるためにも、今日はちょっと初心に帰って考えてみた、マイスターでした。
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※マイスターは幸いにも、スペシャリスト、ゼネラリストそれぞれで、「この人はプロフェッショナルだ」と思える大学スタッフを何人か知っています。あふれ出る強烈なプロ意識が、彼らを支えるベースになっていると、いつも感じます。ただの「ベテラン」さんからは、プロ意識はあふれ出ませんよね。
(過去の関連記事)
・今後の、大学職員のキャリアを考えてしまう自分
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50185269.html
・webマスターでも広報担当でもなく
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50184906.html
・職員に対する教員の言葉から、思うこと
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50183805.html
今回の記事に賛成ですね。
ただ、どうすればプロを育てられるかというのは
今の大学風土を考えるとなかなか容易なことではない
と思います。
ツボを得てますねぇ!