女性を研究者に!

マイスターです。

今年も男女共同参画白書の新しいのが公開されていましたので、さっそく見てみました。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「男女共同参画白書 - 男女共同参画の現状と施策 – (概要版)」(内閣府男女共同参画局・平成18年6月)
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h18/gaiyou18.pdf
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PDFの25ページから、「第8章 教育分野における男女共同参画」という項があります。

まずは、大学進学率から。

(女子の大学進学率は上昇傾向)
学校種類別の男女の進学率をみると,高等学校等への進学率は,平成17 年度で女子96.8 %,男子96.1 %と,若干女子の方が高くなっている。大学(学部)への進学率をみると,17 年度で男子51.3 %,女子36.8 %と男子の方が15 ポイント近く高い。しかし女子は,全体の13.0 %が短期大学(本科)へ進学しており,この短期大学への進学率を合わせると,女子の大学進学率は49.8 %となる。近年,大学(学部)への女子の進学傾向が上昇している一方で,短期大学への進学率は6年の24.9 %をピークに,ここ数年激減している。
大学(学部)卒業後,直ちに大学院へ進学する者の割合は,男女ともに年々上昇し,平成17 年度では男性14.8 %,女性7.2 %となっている。
「男女共同参画白書 平成18年6月発表版」より

四年制大学で比較すると、女子36.8 %で、男子の方が15ポイント近く高いのですね。

よく耳にする話ですが、

短期大学への進学率は6年の24.9 %をピークに,ここ数年激減している。

というのは、短大関係者にとっては大きな問題ですね。

大学院への進学率は、男性14.8 %,女性7.2 %だそうです。以下でも述べますが、医学や工学など大学院進学率の高い学部は、いずれも日本ではまだ女性比率が低い学問領域ですので、そういった点が影響していると思われます。

(男女の専攻分野の偏り)
大学(学部)における学生の専攻分野をみると,女子学生が最も多く専攻している分野は,ここ数年は社会科学が一番多くなっている。平成17 年では,社会科学分野を専攻している全学生の約3割が女子となった。また,工学を専攻する女子学生は,17 年には工学専攻の全学生の10.5 %となっており,男女の専攻分野の偏りがみられる。
また,女子学生の大学院における専攻分野については,修士課程では人文科学,社会科学が並んで多く,これに次いで工学,教育の分野が多くなっている。女子学生の近年の増加が特に著しいのは社会科学,工学,保健,人文科学の分野で,社会人学生においても平成17 年では45.2 %を女子が占めている。博士課程では,保健,人文科学の分野での専攻が多く,また,16 年4 月より設置された法科大学院では,30.2 %が女子となっている。
「男女共同参画白書 平成18年6月発表版」より

というわけで相変わらず、工学専攻の女性は少ないです。
ただ、近年増加が著しいとも書いてありますし、今後に期待です。
法科大学院の学生は3割が女性なのですね。今後、法曹における女性の人数比が高まっていきそうです。

さて、今日の目玉は↓こちら!

(上位の職に少ない女性教員の割合)
初等中等教育について女性教員の割合をみると,小学校では教諭の6 割を女性が占めているが,中学校,高等学校と段階が上がるにつれて低くなっている。校長及び教頭に占める女性の割合は,小学校の校長で平成2 年の4.1 %が17 年には18.2 %と大幅に上昇しているのを始め,長期的には上昇傾向にあるが,その割合は教諭に比べて依然として低い。
大学,短期大学の全教員に占める女性の割合をみても,短期大学では4 割を超えているが大学では1 割台にとどまっており,特に教授,学長に占める女性の割合は低い。
「男女共同参画白書 平成18年6月発表版」より

リンク先のPDFには、グラフも掲載されています。

グラフの数字の中から、高等教育の部分を引っ張ってきました↓。

本務教員総数に占める女性の割合

<大学>
学長:7.6%
教授:10.1%
助教授:17.0%
講師:24.1%
助手:24.2%

<短大>
学長:14.2%
教授:33.9%
助教授:47.4%
講師:57.4%
助手:85.8%

「男女共同参画白書 平成18年6月発表版」第33図より

この通り、上に行けば行くほど女性が少なくなるという構図が明らか。

短大は、さすがに女性教員が多いのですが、でもやっぱりいびつな部分もあります。例えば短大教授の1/3は女性なのに、「学長」となるとなぜか女性比率は14.2%までガクンと落ちるのです。これは何故?

あと、「助手」を今後、

 「助教」:若手研究者
 「助手」:教育・研究のサポート職

…と明確に区別するようになった時に、一体それぞれの女性比率がどんな風になるのか、個人的にちょっと興味があります。現在、短大の助手のうち実に85.8%が女性なのですが、これが「助教」となると、どのくらいになるのでしょうかね。

というわけで以上、今年の数字でした。

実はマイスター、一年前にも、同じ白書を使って、ほぼ同じようなことを書いておりました。一年くらいでは、なかなか状況は変わらないのですね。

・教育現場での、女性の比率
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/23597412.html

さて、このような状況の中、今後、高度な研究や教育に関わる女性達をいかに支援していくか。
最近、いくつかの取り組みが動き始めました。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「女性研究者:育児と両立へ『実験』 支援へ国が補助金、10大学でモデルづくり」(毎日新聞 MSNニュース掲載)
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/
kagaku/news/20060614ddm016040031000c.html

・「『女性研究者支援モデル育成』公募要領」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/12/05122702/008.pdf

・「『女性研究者支援モデル育成』採択課題一覧」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/koubo/06060127/002/001.htm
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「優れた女性研究者がその能力を最大限発揮できるようにするため、大学や公的研究機関を対象として女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、環境整備や意識改革など研究活動を継続できる仕組みを構築するモデルとなる優れた取組を支援する。」

…ということを目的に、文部科学省が始めた支援制度です。モデルとして採択されると、年間2~5千万円の範囲で、必要な経費が文部科学省から支給されます。
今回、お茶の水女子大学や東京女子医科大学といった女子大から、京都大、北海道大、東北大、早稲田大などの総合大学まで、計10校の取り組みが採択されました。

例えば、東京農工大学「理系女性のエンパワーメントプログラム」の取り組みは、↓こちら。

■「『理系女性のエンパワーメントプログラム』が採択(PDF)」(東京農工大学)
http://www.tuat.ac.jp/campuslife/career/josei.career.sien.pdf
■「文部科学省科学技術振興調整費 『若手研究者の自立的研究環境整備推進プログラム』 -『女性研究者支援モデル育成』が採択 -」(東京農工大学)
http://www.tuat.ac.jp/social/gakuho/2006/449/news-1.html

活動の一環として、↓こんな事業も行っているようです。「理系女性」をキーワードに、事業を展開しているのですね。

■「女子高生対象にサマースクール。東京農工大(東京)」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20060620wm01.htm

確かに、理工系の女性比率は学生、研究者ともに低いですから、このような取り組みでそれを是正しようとすることには意義があると思います。

女性には、出産など、女性ならではの問題があります。それらが研究者としてのキャリアにとって、極力障害にならないようにしなければなりません。
この点、まだまだ我が国では、支援の方法が未成熟です。上記のようなモデル校にかかる期待は大きいと言えましょう。

※ほか、「理系女性」に限れば、以下のような取り組みも見かけました。ご興味のある方はどうぞ。

■「科学の魅力伝える女性院生『サイエンスエンジェル』」
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060624ur21.htm
■「応援します理系の女性」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20050914ok01.htm

以上、日本の女性研究者・教育者の状況についてでした。

最後に、アメリカの状況について書かれた記事をご紹介します。

■「米大学教育年度報告:男子に追いついた米国人女子学生」(大紀元日本)
http://www.epochtimes.jp/jp/2006/06/html/d35558.html

米国の年度教育統計報告によると、大学教育における生物学や商業分野など、これまで男子が多く占めてきた領域において、現在では女子が半分以上を占めていることが分かった。また、法律、医学など難解な学問においても、女子は男子に追いついているという。
(略)
ビジネス、生物科学、社会科学および歴史等の学問において、学士を取得した学生のうち半分以上が女子であり、教育および心理学等の伝統的な領域においても、女子が優勢であることを示した。また、大学でもっとも人気の高い商業学科においては、学士取得者の半分以上が女子であるという。1980年では、女子は全人数の三分の一を占めるに過ぎなかった。
また、法律、医学および光学等の専門分野において、女子は入学者の約半分を占めているが、彼らの両親の代では22%だったという。さらに、数学、物理学および農業関係の専攻において、女子の大学・大学院の学生数は、男子に追いつこうとしているという。
(「大紀元日本」記事より)

アメリカの教育現場では、人数で見て、女性学生が男子学生に追いつき、そして追い越しつつあるようです。
ただ、

「女子政策研究機構(Institute of Women’s Policy Research)」の統計によると、正規雇用における女子の給与は男子の76%にしかすぎず、大学教授職においても、女子の占有率が低く、特に物理学、機械工学および数学等の領域において顕著であった。

という記述もありますので、やっぱりアンバランスな分野もあるのですね。

「物理学、機械工学および数学等の領域」に女性が少ない理由は何なのか。その理由によってはこういった分野でも、今後女性がもう少し増えていくことになるのかも知れません。
まずは男女比が不均衡な理由を調べ、必要であれば対策を考える。日本も、そんな感じでやればいいんだろうなと思います。最初は原因を知るところから、ですね。

以上、マイスターでした。

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(おまけ)

去年も書いたんですが……「男女共同参画白書」には、メディアにおける女性の比率も載っているのです。(PDFの23ページ以降)

これを見る限り、新聞記者における女性の割合って、たったの11.4%に過ぎないのですね。研究者の業界よりもひどいありさまです。

新聞はよく「日本の企業は遅れている。欧米に比べて女性役員が少なくて……」とか、「日本の大学は男性優位だ。もっと女性研究者を育成せねば、国の競争力が……」とかいった記事を書きますが、実は自分達の方が、よっぽどひどい状況なのです。マスメディアの構成員が著しく偏っているって、考えてみると、恐ろしいことですよね。

でもマスメディアは、決してその点には触れません。

新聞は社会の木鐸と言いますが…うーむ……。