マイスターです。
■北京オリンピックと大学(3):「母校の誇り」を大学で応援
昨日に続き今日も、オリンピック代表選手の活躍を応援していた「母校の様子」をご紹介していきたいと思います。
北京五輪重量挙げ男子69キロ級決勝が12日、北京航空航天大学体育館で行われ、小浜市出身の新谷義人選手(26)=金沢学院大職員=はトータル310キロで試技を終えた。
緊張した面持ちの新谷選手。故郷から駆けつけた家族は、静かに競技の行方を見つめた。母の美雪さん(52)と弟の裕介さん(24)は、大学関係者から渡された寄せ書き入りの日の丸を手に応援。「踏ん張れ」「いけるっ」。バーベルを頭上に運ぶ新谷選手の動きに合わせるように、握る手に力がこもった。(「トータル自己記録に届かず 北京五輪重量挙げ、新谷選手」(中日新聞)記事より)
北京五輪柔道男子60キロ級に出場した平岡拓晃(了徳寺学園職)が勤める浦安市の了徳寺大学では9日、学生や教職員約100人が150インチ画面の生中継に声援を送った。金メダルが期待された平岡だったが、得意の攻撃的柔道が発揮できず、まさかの初戦敗退。学生らからは大きなため息が漏れた。
テレビ応援は決勝戦に合わせ、この日夜に予定されていたが、初戦から応援したいという学生らが午後1時前から次々と204号教室に集まった。ライブ画面に見入り、声をからした声援も北京までは届かず、応援団は肩を落とした。同学園職員からは金丸雄介(男子73キロ級)、小野卓志(同81キロ級)佐藤愛子(女子57キロ級)の3人が出場している。
(「北京五輪 悲喜こもごも、熱い声援」(MSN産経ニュース)記事より)
北京五輪で19日行われたトランポリン男子決勝に、稲敷市で小中学校時代を過ごした外村哲也選手(23)が出場し、見事4位に入った。また、トライアスロン男子に出場した大洗町出身の田山寛豪選手(26)は、48位だった。
(略)田山選手の母校で勤務先でもある流通経済大学(龍ヶ崎市)でも、学生や教職員ら約70人が教室に集合し、スクリーンを見ながら声援を送った。
(「トライアスロン田山選手 トランポリン外村選手 『よく頑張った』声援」(読売オンライン)記事より)
大学職員としてオリンピックに出場した選手の皆さんも、今回の大会にはたくさんおられたようです。
キャンパスの期待を一身に背負って戦い抜きました。
学生の指導をしながら、自らも日本代表としてトレーニングに励む日々は、楽ではなかったと思います。
大会では、競技で満足できる結果を出せた方も、残念ながら実力を発揮しきれなかった方もいると思います。
ただ、自分の力で国の代表にまでなり、オリンピックで世界最高レベルの戦いに参加したというその経験は、大学にとっても大きな財産になるはずです。
帰国されたらぜひ、世界の舞台で活躍された経験を、学生の皆さんに伝えてあげてください。
北京五輪で19日、女子走り幅跳びの池田久美子選手(27)=福島大卒、スズキ=は惜しくも予選敗退し、母校の福島大(福島市金谷川)では学生や教職員ら約100人が健闘をたたえた。
(略)19日は福島大生協が学生食堂に縦1・8メートル、横2メートルの大スクリーンを設置。競技がテレビ中継される午前11時前から教職員らが仕事を中断し駆け付けた。
池田選手が登場すると拍手がわき、助走に入ると手拍子で後押し。2回目の跳躍で1回目を上回る6メートル47を記録すると、「もう少し」「あと1回がんばれ」と声援が飛んだ。
池田選手は3回目がファウルとなり、決勝進出は果たせかった。池田選手は「オリンピックは甘くない」などと話した。
観戦した今野順夫学長は「初の五輪で緊張したのかもしれない。世界は厳しいが、強豪にも見劣りしないジャンプだった」とねぎらった。
経済経営学類3年、及川晃哉さん(21)は「残念だが、大学の先輩がオリンピックの舞台に立っていることがすごい」と感動していた。
(「北京五輪:「強豪に見劣りせず」 母校福大、池田選手の健闘たたえる /福島」(毎日jp)記事より)
学食に応援会場を設けた福島大学。
女子走り幅跳びの日本代表、池田久美子選手の母校です。
こちらも学長を始め、学生、教員、職員が一体となっての応援。
教職員の皆さんも、仕事を中断して応援に駆けつけたとのことです。
お昼どきのキャンパスに生まれた、素敵な風景です。
池田選手の健闘をたたえ合いながら、みんなでそのままお昼ご飯を食べたのでしょうか。
北京五輪の競泳・男子二百メートル自由形で7位に入った奥村幸大選手(25)の母校・近畿大学(東大阪市)で12日、パブリックビューイングが開催された。会場は水泳部員30人ら学生約100人でギッシリ。水泳部の板野祥子さん(21=法学部3年生)は「日本人が自由形で決勝に行くだけでもすごい」。門利幸広報課課長補佐(39)は「さわやかで在学中は女性職員にも人気があった」と話していた。
(「200自由形7位・奥村の母校・近大、PVで応援」(スポニチ)記事より)
競泳・奥村幸大選手の母校、近畿大学でもパブリックビューイングを実施。
広報課長のコメント、おそらく他にも色々なことを話されたのだと思いますが、記者の方には「さわやかで在学中は女性職員にも人気があった」という、内輪っぽい部分だけが使われてしまったようです
水泳部の学生さんが言うとおり、決勝を戦っているという時点でとてつもなくすごいことです。
北京五輪陸上女子五千メートルの予選に、岡山大マッチングプログラムコース2年の小林祐梨子選手が出場した19日、大学のスポーツ教育センターでは教授や職員、同コースの学生ら約60人が集まり、大型テレビを前に声援を送った。
大学側が、赤地に白抜きで「小林祐梨子選手」と印刷され、裏は白地に「がんばれ!」と赤や青で縁取られたうちわを配布。参加者は「小林ガンバレ」と声をあげながら、北京での力走を見つめた。
予選通過はならなかったが、小林選手が入学する際、面接をした同センターの千田益生准教授(スポーツ医学)(51)は「はきはきと話す知的な学生。五輪に出たことは誇りです」。同コース3年の名井唯さん(20)は「世界を舞台にしても、彼女らしい力強い走りをしていた。すごく格好いいです」と感激していた。
レース後、小林選手の4年後の活躍を期待し、全員でエールを送った。
(「岡大生ら60人 TV応援」(読売オンライン)記事より)
岡山大学マッチングプログラムコースで学びながら、見事に五輪代表に選ばれた小林祐梨子選手。
入学時に面接をしたという教員の方の、「知的な学生」というコメントが印象的です。
この小林選手については、ぜひ、↓こちらのページをご覧ください。「五輪に出たことは誇りです」と関係者が語る理由がわかります。
■「岡山大学マッチングプログラムコース:小林祐梨子さん北京五輪代表に決定!!」(岡山大学)
在学生の方の「すごく格好いいです」というコメントも素敵。
同世代に「格好いい」と言わせる学生は、キャンパスの宝だと思います。
8月8日午後8時8分に開幕した北京五輪は競技開始の9日、競泳陣のトップを切り女子100mバタフライ予選が行われオリンピック初出場の山梨学院大加藤ゆか(商学科4年)は6組7コースで夢舞台のレースに臨んだ。山梨学院大学ではレースの開始時間に合わせキャンパス内のカレッジスポーツセンター4階研修室で“パブリックビューイング”が行われた。会場には加藤選手が所属する水泳部の部員ら約150人が詰めかけ、生中継の映像を映し出す大型スクリーンを見つめた。画面にレース直前の加藤選手が映し出されると、会場では円陣が組まれ「ニッポン・チャチャチャ、カトゆか・チャチャチャ」と北京に届けと大声援でエールを送った。予選敗退で終わった加藤選手が「不満が残りました、悔しいです」と答えるインタビュー画面が流れると、この日までの人並み外れた超人的な努力を身近で見て来た後輩の水泳部員たちは貰い泣きしながら「先輩よく頑張りました、御苦労さまでした」とその健闘を称えた。
(略)同じ100mバタフライの後輩で日本選手権5位の松下絵里奈(1年・豊川)選手は「加藤先輩のような世界に通用する選手になりたいと強く思いました、インカレで1分を切って世界の大会に出れるよう頑張りたい」と心を熱くしていた。
(「北京オリンピック 水泳女子100mバタフライ ~加藤ゆか選手をパブリックビューイングで応援~ ~山梨学院大キャンパスから北京に向けて大声援~」(山梨学院)記事より)
バタフライの日本代表で、山梨学院大学の加藤ゆか選手。
競技当日は、大学内でパブリックビューイングが行われました。
「悔しいです」という先輩のインタビュー映像に、「先輩よく頑張りました、御苦労さまでした」と涙する、水泳部員の後輩の皆さんの姿がとても印象的です。
普段の努力の様子を身近に見てきたからこその、この言葉と涙なのでしょう。
ご本人にとっては満足のいく競技結果ではなかったかもしれませんが、形にできない多くのものをキャンパスに残されたのではないかと思います。
以上、マイスターが見かけたニュースの中から、オリンピック代表を応援する「母校」の大学の話題をご紹介しました。
ちなみに、大学と同じかそれ以上に、高校や中学の応援会場もあったようです。
その選手の生徒・学生時代を知っている教職員達の、教え子に対する想いが、そういった場を作らせたのだと思います。
それに加え、教育的な効果を期待してという部分も大きいでしょう。
「同じ学校から巣立っていった先輩が、自分の力で頑張って世界の頂点に届いた」という事実。普段、教職員がどれだけ言葉を重ねてもなかなか実感を持ってもらえないことも、先輩の活躍ぶりを目の当たりにすることで、生徒や学生にすぐに伝わる……ということもあると思います。
全国民の期待というプレッシャーに負けず、努力を重ね、己に勝って栄光の舞台にあがった先輩。教育機関として、これ以上のロールモデルはありません。
大学を始め、多くの学校が全校をあげて母校出身の選手を応援する背景には、そんな理由もあるのだろうと思います。
ところで、「母校での応援風景」は、どうしてこんなにも多くメディアに紹介されているのでしょうか。
それはメディアの側が、「そういう映像」を求めているからです。
マイスターも今回、多くのニュースを読みながら、何度か感動で目が潤みましたが、後輩達が声を枯らし、時には涙を流しながら先輩を応援する姿や、かつての恩師達がシャツの腕をまくり、学生達と手をたたき合って教え子の活躍に喜ぶ様子は、無条件に人を感動させます。
「母校の仲間」という意識に乗って、感動や共感が伝播していく様子は、感動的です。「先輩のようになりたい」「誇りに思う」といった言葉にも、嘘くささがありません。
そんな「つくりものではない感動」が現代では貴重だからこそ、メディアは選手の母校での応援風景を積極的に取材しているのだとマイスターは思います。
「テレビ局の数字集めのために利用されているのか」なんて見方もできなくはありません。
……が、ここは建設的に考えて、選手達と心を一つにしている後輩や恩師達の様子を、そのまま広く全国に伝えていただけばいいのではないかと個人的には思います。
学校の仲間が、想いを一つにしてみんなで先輩や同級生の活躍を応援するなんて、素敵なことではありませんか。そんな風景が大学には実際にあるのだということを、高校生や世間に伝えましょう。
「大学って結構、粋な場所なんだな」とか、「自分もあんな感じにみんなと盛り上がる大学生活を送りたいな」なんて思ってもらえたら、選手達の活躍も、さらに活かされるのではないかと思います。
以上、マイスターでした。
システムの動作エラーにより、記事の更新予約がされておらず、アップが遅くなってしまったようです。大変失礼いたしました。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。