「大學生力検定DS」というゲームがあるようですが

マイスターです。

突然ですが、今日はまず、以下の文面からご覧ください。

大学入試において推薦入試等の枠が、今年度半数を超え、大学に入学する事が難しくなくなった昨今、生徒のまま大学に入学してしまい、いわゆる「大学生もどき」や「なんちゃって大学生」が増え、大学でのアカデミズムの権威、知的学問の探求がおろそかになっている現状が見られる。
大学では、そのような「生徒」を経営上受け入れ、高校は入試が終われば関知しない方向であり、「知」への関心はますます薄れるばかりである。

のっけから何やら厳しい雰囲気……ですがこれ、マイスターが書いた文章ではありません。
では新聞の社説? あるいは最近流行している、大学関連の新書の帯?

いえいえ、これはゲームの宣伝コピーです。

【今日の大学関連ニュース】

■「大學生力検定DS」(ASK ONLINE)

その名も「大學生力検定DS」。
「脳トレ」がヒットしたと思ったら、今度はこんなソフトが登場したのですね。

「エデュケーション」と「エンターテイメント」を掛け合わせた、「エデュテイメント」という言葉があります。
楽しみながら学ぶ、あるいは学び自体を楽しめるような行為を指すようで、よく知られている事例は「脳トレ」や「キッザニア」などでしょうか。

■「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」(Nintendo)
■「キッザニア KidZania」

携帯用ゲーム機の「ニンテンドーDS」は、まさにこうしたエデュテイメントのためのツールとして認知されつつあるようです。
今ではTOEICでも英会話でも漢字検定でも、大人が飛びつきそうな(そして資格などに結びつきそうな)学びの多くが、DS用ソフトで展開されています。

そこに今回、ついに「大学生力」を鍛えるソフトが登場したというわけです。

製品サイトにはアドバイザーとして、千葉大学教育学部の藤川大祐准教授のお名前が掲載されています。「脳トレ」に続き、産学連携の好事例になれるでしょうか。

■「藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ」

さて、この「大學生力検定DS」。
12月4日に発売されたということで、内容が気になるところですが、残念ながらマイスターはDSを持っていません。正確に言うと、持っているのですが、今は手元にありません。
実際にプレイしてみれば早いのでしょうが、これのためにDS本体を買い直すのもどうかと思うので、本日のところはサイトなどから特徴を抜き出してみます。

冒頭でご紹介した文言の後には、以下のようにコピーが続きます。

このような状況を鑑み、生徒から学生に移るべく、自学自修力の確認と「知」への探求を行うのに必要な「知識」と「知力」の養成をDSという「生徒」にとって身近で、UIに優れたハードウェアを使い、いつでも学習出来る状況を提供し、学修力をつけてもらう事がねらいである。
(上記サイトより)

最初はゲームタイトルから、「大学を卒業した人が身につけておくべき能力」なのかなと思いましたが、サイトを見る限り、どちらかというと、

「大学生として学ぶにあたり、最低限身につけておきたい基礎力」

……を扱うゲームという印象です。
つまり言い方によっては、「高校生力」だと言えなくもなさそうです。
(そうすると、製品のパッケージに記載されている、「DSで大学レベルの知識・教養を身につけろ!」というコピーは、ちょっと違うんじゃないかという気もしますが……)

だからでしょうか、対象ユーザーを見ると、

対象ユーザー:
* 推薦入試等で大学進学が決まった高校3年生
* 大学進学を目指す高校1・2年生
* 大学生・短大生・通信大学生・高専生(現役大学生)
* かつて大学生だった大人(一般)
「大學生力検定DS」(ASK ONLINE)より)

……と、「受験対策の一環として買って欲しい」という雰囲気も漂っています。

設問は、以下の4ジャンル。

【語彙・漢字】
【知識・教養】
【読解・要約】
【論理・批判】

ちょうど良いことに、webサイトでミニテストが公開されていました。

■「大學生力検定DSミニテスト」(ASK ONLINE)

これだけ受けると、「これは大学生力として適当なのかな?」という気もしますが、あくまでもこれはwebサイト用のミニテスト。
マイスターはどちらかというと、「読解・要約」と「論理・批判」の部分に興味を持ったのですが、あいにくミニテストではその辺りの設問が用意されていないようでした。

アドバイザーの藤川准教授も、ご自身のブログで

このソフトの中の「論理・批判の学習」は、ディベートを背景にした本格的なものです。大学生はもちろん、多くの方にお使いいただきたいと考えています。
「ニンテンドーDSソフト「大學生力検定」発売」(藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ)より)

……と紹介されていますので、おそらくこの辺りがウリなのだと思います。
気になる方は、実際にゲームを購入してみてください。

ちなみに、↓こんな報道もありました。

■「DSで『大学生力』検定/相模女子大でモニター授業」(カナロコ)

任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」を使って、大学生の国語力を試すモニター授業が四日、相模女子大学(相模原市文京)で行われた。ゲームソフト「大学生力検定DS」の発売に合わせたイベント。挑戦した女子学生らは、判定された自らの”大学生力”に一喜一憂していた。
同ソフトは「語彙(ごい)・漢字」「読解・要約」など大学の講義で必要とされる国語の基本的な技能を確かめる問題が出され、「小学生レベル」の五級から「有識者」の特級まで判定される。
(略)「一般大学生レベル」と判定された高山文さん(18)は「ことわざや四字熟語が難しかった。もっと勉強しなくては」と話していた。
(上記記事より)

実際に大学一年生にプレイしてもらうイベントが行われたようです。
どちらかと言うと、やはり語彙力などの部分が取り上げられているようですね。

ところで、ゲームの内容はさておき、個人的には、「大学生力」が売れるのかどうか、ちょっとわかりませんでした。
「このタイトルで、果たして大学生や高校生が買おうと思うのかな」とか、「個人ではなく大学や高校に売り込む戦略なのかな」とか思いながら、製品開発元のブログを見てみたら、

大学入試において推薦入試やAO入試等の枠が、半数を超え、大学に入学する事が難しくなくなった昨今、生徒のまま大学に入学してしまい、大学にて求められる学力不足の学生が見られるようになった。
「ニンテンドーDSソフト『大學生力検定DS』発売しました。」(企業内教育のアスクブログ)より)

……という製品コピーとともに、

大学生にこれからなるお子様や、大学生になりたてのお子様をお持ちの方は是非どうぞ。
「ニンテンドーDSソフト『大學生力検定DS』発売しました。」(企業内教育のアスクブログ)より)

……と書かれていました。

メディアがAO入試などを批判する流れに乗り、「あなたのお子様は大学生としてやっていけるのですか?」と焦らせつつ、保護者に買ってもらおうという戦略なのかな……? と、邪推したりも。
うーむ。

実際にプレイされた方は、ぜひ感想を教えていただければ幸いです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。