医学系大学×工学系大学のコラボレーション!

マイスターです。

プロフィール欄にあるとおり、マイスターは学士(工学)の学位を保有しています。
建築学科で学んでいたのですが、自分の興味関心に走った結果、デザイン領域や人文・社会科学系の授業ばかりを履修し、工学系統の単位は最低限しか取らずに卒業しちゃったので、とてもエンジニアだなんて名乗れません。

そんなマイスターでも、「工学を学んでいたおかげかな」と思えることは結構あります。
例えばマイスターが修士課程で行っていた研究は、アメリカの公立学校「チャータースクール」の教育と組織運営について、ソフトとハードの両面から検証するという内容だったのですが、そのときは政策系+工科系出身という視点が、結構役に立ったと思います。

工学技術は「何かを達成するための手段」ですから、理屈の上では、あらゆる学問と組み合わせられるのではないでしょうか。今や、テクノロジーが絡まない学問を探す方が大変だという世の中ですしね。
(話題の「サイバー大学」学長に就任されるエジプト考古学の吉村作治さんも、そう言えば、学位は工学博士です)

ただ、工学部というのは、実験施設などの設備投資にお金がかかることもあり、そう簡単に作れる学部ではなさそうです。

工学系学部とコラボレートしたら面白そうな分野はたくさんあるのですが、やりたくてもそういう取り組みを行えない大学は、少なくないのではないでしょうか。

というわけで、今日は↓こんな話題を。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「医学系大学と工学系大学の『医工連携』が関西で広がる」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20060523c6b2303a23.html
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医学系と工学系大学の「医工連携」が関西で広がってきた。大阪大学は関西大学、大阪電気通信大学などの学生を受け入れるための協議を開始。立命館大学は滋賀医科大学と共同で産学連携を進めることで合意した。医療費抑制が求められ、予防技術や健康機器のニーズが高まっている。学部の壁を超えた連携で医学と工学の専門知識を兼ね備えた人材を養成するほか、成長が見込める健康ビジネスを開拓し、特許など大学の収益源を育てる。(上記記事より)

このように、大学の垣根を越えて、工学部と医学部が連携するという事例が増えてきているらしいです。

<医学×工学>というのは、もともと関連が強い組み合わせの一つです。
医用生体工学なんていう学問分野もありますし、大きな総合大学では、学内に医工連携の研究組織を抱えていたりしますよね。

(医工連携研究機関の例)
■東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター
http://www.cdbim.m.u-tokyo.ac.jp/
■京都大学大学院医学研究科 医工学連携コース
http://www.med.kyoto-u.ac.jp/J/grad_school/
education/educational_course/ikougaku/ikougaku.htm

また、工科系大学の中には、医療科学×工学技術というコンセプトの学科を持っているところもあります。

(工科系大学が持つ「医学×工学」系学科の例)
■大阪電気通信大学 医療福祉工学科
http://www.osakac.ac.jp/dept/l/
■武蔵工業大学工学部 生体医工学科
http://www.bme.musashi-tech.ac.jp/

このように学問領域としては存在していたものの、まだ一部の大学にしか研究組織が無い分野だったのですね。

しかし、マイスターなどが今さら言うまでもないことですが、医療技術に関するニーズは年々高まっています。遺伝子工学や生命工学といった領域も、急激に進歩していますし、情報技術が医療の現場で果たす役割も、大きくなる一歩。
医学と工学の両方の素養を身につけた人材が社会から必要とされているのに、大学経営の都合上、そのための教育・研究組織が十分に作られなかったのだと思います。

そこで、「じゃあ、ウチの工学部と、そちらの医学部で協働しない?」という発想が出てきたのですね。

こういう発想、マイスターは大好きです。

社会にとって必要なものを、既存のコンセプトの組み合わせて創出する。

これは、大学の持つ可能性をいっきに拡げてくれる、なんともステキな考え方であるように思います。

病院を併設する阪大の臨床医工学融合研究教育センターが工学系の関西大と連携協議を始めた。まず阪大が大学院生や社会人を対象に、医療画像の扱い方や遺伝子情報の解析を教える講座を関大の工学系学生にも広げる。関大は阪大病院での実習を求めていく。 (冒頭NIKKEI NET記事より)

これまで大学病院で実習をするのは医師薬看護系の学生だけでした。
これからはそこに、エンジニアのタマゴも混じっていくのですね。考えただけで、わくわくするではないですか。

このように、これまで得られなかった教育体験を学生に提供できますし、また新たな価値を大学が生み出すという点で、社会にとってもメリットが大きい試みであるとマイスターは思います。

組み合わせは無限大。

<医学×工学>に続いて、テクノロジーと他の学問が結びついていくと、日本の科学技術はより輝いていくのではないかと思います。
(既に、金融工学、教育工学、情報工学、デザイン工学、福祉工学、経営工学などなど、工学技術のコンセプトと合体して新しく生まれた学問領域は多いですが、まだまだいくらでも出てきそうです)

もちろん工学に限らず、全然違って見えるいくつかの学問を組み合わせても良さそうです。

世の中が欲している研究分野というのは、おそらく私達が想像もできないくらい、たくさんあるのでしょうね。大学の学部学科という組織がそれに対応できないなんて事例は、これから嫌と言うほど出てくるんだと思います。
そんなとき、「新しい学科を新設する」というのも一つの手ですが、まずその前に、「他大学の学部学科と協働して、試験的に教育を行ってみる」なんていう選択肢もあるはず。

これからは、大学の壁、学問分野の壁を越えたコラボレーションが、より活発になっていくのかも知れませんね。楽しみです。

以上、マイスターでした。