ニュースクリップ[-3/26] 「東大入試、後期は文理一本化…08年度から」ほか

マイスターです。

気づけばもう日曜日ですね。
年度末、時間の経つのが早いなと感じます。

それでは、恒例のニュースクリップをお届けします。

東大の後期試験が大幅に変わり、文・理が一本化されます。
■「東大入試、後期は文理一本化…08年度から」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060323ur02.htm
■「東大の後期試験の定員、08年度から大幅減」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200603220341.html

「敗者復活戦」の色が強い、国立大学入試試験の後期日程。後期日程不要論も強く、京都大学や東北大学は廃止の方針を打ち出していました。
東大は、後期は廃止しないが、今後は前期日程とまったく違う試験方式を採用するとのことです。

「後期存続」の方針決定について、古田元夫副学長(入試担当)は「受験機会の複数化を図り、(定員を前期と後期に分ける)分離分割方式を維持するとした、国立大学協会の考え方を尊重した」と説明。その上で、「前期の縮小版ではない、独自性を出したい」とし、06年度から拡充される同大の進学振り分け制度(入学後の成績によって文系、理系の垣根を越えた進路変更を可能とする制度)に連動した“文理融合”入試を行うことになった。さらに、古田副学長は「文科、理科の枠に早くから固定化されると、学生の様々な可能性をせばめることになりかねない。柔軟性を持った学生を求めたい」としている。
(上記記事より)

前期と違うねらいをもって、学生を集めるという戦略。マイスターは、大学入学前から「文系」「理系」に分ける教育には反対なので、こうした取り組みは支持したいと思います。
入学後の進学振り分け制度とあわせて、明確な総合的視野に立って計画されているというのが、素晴らしいですね。
こうした報道があると、
「東大だからこんな大胆な取り組みができるんだ。本学が同じことをしても受験生は受けに来ない。東大はズルイ。」
……なんてつぶやく大学業界人が大勢出てきそうですが、いずれにしても、前例に囚われずに自校の教育にあわせてベストな入試を立案する「攻め」の姿勢がなければ、いずれはジリ貧になってしまうのではないでしょうか。

今後、後期日程入学組の学生さん達が、入学後に優れた結果を出していかれるといいなと思います。

政府が少子化対策を進めるも、人々が働く現場では…
■「子育て支援税制など検討へ・政府・与党が少子化対策で初会合」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060323AT3S2300F23032006.html

政府・与党は23日午前、首相官邸内で少子化対策を検討する協議会の初会合を開いた。所得税を軽減する子育て支援税制や出産費用の無料化などの経済的な支援策の検討に着手。短時間労働の導入をはじめとする雇用環境の整備にも取り組むことで一致した。
(上記記事より)

…という政府の動きなのですが、

■「男の育休取得、3割超の企業がゼロ 主要100社調査」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0322/001.html?ref=rss

↑こんな結果を見てしまうと、実際には、日本人の労働観を変えない限り、抜本的な対策にはならないんじゃないかなという気がします。

男性の育休取得が難しい理由について、企業からは「代替要員の確保が難しい」「男性でも育休が取れることを社員が知らない」「男性の育休への抵抗感がある」などの意見があった。
(上記記事より)

…とありますが、「男性でも育休が取れることを社員が知らない」ってのはどう考えてもウソだろう!?と思います。
だってマイスターは高校生の時から、男性でも育休が取れることを知っていました。学校で教わったし、新聞などでも見たし、自分でも雑誌などでよくこうした記事に触れていたからです。
企業へのアンケート調査結果ということですが、一体、どの部署のどんな人が回答したのでしょうか…。

また、「男性の育休への抵抗感がある」という問題の裏には、
「例え仕事がなくても、残業を全くしないで帰ると、やる気がないヤツとみなされる」
という、日本社会に流れる謎の風潮と同質の原因を感じます。
どちらも百害あって一理無しの、不合理な発想で、企業人達が自己満足のために作り上げた、意味のないルールだと、マイスターは思います。

 「子供が小さいうちでも、男性社員には育休をなるべく認めない雰囲気にする」
→「女性の方に育児の負担がかかってしまい、仕事と育児の両立が困難になる。ひどい場合には、女性は仕事を辞めざるを得ない」
→「逆に男性社員は、経済的な負担を一人で担うことになる」
→「何があっても会社にしがみつく保守的な会社人間の男性と、社会への参加機会を制限された女性のできあがり」

…という流れになりやしないかと、マイスターはどうも、心配してしまうのです。心配しすぎ、考えすぎならいいのですが。
逆に女性は「寿退社」するものだと考える古い業界が、未だにあるみたいです(信じがたい話ですけど)。
これと「男性の育休取得が難しい」という問題は、言ってみれば鏡の裏表。
昔ながらのジェンダーの在り方しか認めないという意味で、セットである気がします。

企業のこうした風潮を変えるのは難しいのですが、企業のトップが徹底して施策を打てば、案外素直に受け入れられて、数年で変われることもあるようです。
本心ではみんな、男性でも育休を自由にとれる方がいいと思っているってことなのでしょうね。

大学が、専門的なプログラムで教員の研修をサポートします。
■「大学が教員研修に協力 新年度18件、教委へノウハウ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200603210133.html

教職大学院を始め、ここ数年、大学と小中学校教員との連携に関する取り組みが増えてきていますね。
上記は、教育委員会が行う在職教員への研修に、大学がノウハウを提供するという話です。

北海道教育大は、大学院レベルの校外研修を実施して、教育実践に対する自己評価に重点を置く。信州大は、先生の「研修カルテ」ともいえるポートフォリオを作成し、教科指導力の伸び方を分析する。岐阜大は、ゼミ形式で「自らデザインする研修」を目指す。この3大学に対する2年間の委嘱期間に、教員は、各大学のカリキュラムに基づいて10年研修を受ける。北海道、長野市は小中学校の、岐阜県は全校種のすべての教員が対象になるという。
教員研修センターは、採択されたプログラムの実践をホームページなどで紹介する考えだ。
(上記記事より)「

…と、様々な試みが行われているのがいいですね。この各地域の実践についてまた情報を交換しあうことで、よりよい教育が実現されていくといいですよね。

起業家教育を積極的に受ける学生達が増えてきているようです。
■「学生にも起業家教育 大学発ベンチャー、低年齢化」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200603200085.html

米国などと比べて日本では、大学生が起業する数が少ないということで、ここ数年、大学院生に対して起業家教育を施す取り組みが出てきておりましたが、それが学部段階でも広まってきたという内容の報道です。
マイスターは、起業家教育には賛成です。

ただこの記事では、「低い成功率に開設見送りも」という見出しで、↓こんな意見も紹介されていました。

しかし、検討した学生向け起業家講座の開設を見送る大学もある。ベンチャー企業の成功率は極めて低く、危険性を十分に理解しない学生に起業を促すことは問題、との判断があったようだ。
青山学院大学の港徹雄教授(産業組織論)によると、開業5年後の新規製造業の生存率は49%。10年後は34%で3分の2が消滅した(00年時点の調べ)。
大学教授などが独自技術を生かして起業しても4割程度は赤字に苦しんでいるのが実情だ。大学生は「技術がなくてもIT(情報技術)とアイデアを組み合わせて起業しているケースが多い」(大学関係者)と冷めた見方もある。
(上記記事より)

ベンチャー企業の成功率が低いから起業家教育をしない、というのは、なんだか順序が逆であるようにも思えます。
「開業5年後の新規製造業の生存率は49%。10年後は34%で3分の2が消滅した」とありますが、おそらくこれは、ベンチャー全体の成功率より高いのではないでしょうか?
少なくとも、米国の成功率はもっと低かったように思います。(なぜなら、チャレンジする学生の母数が日本よりはるかに多いから)

危険性を十分に理解しない学生が多いなら、起業家教育の一環として、危険を理解させてあげればいいだけの話だと思います。
記事を読む限り、起業家を目指す意欲のある学生は少なくないようです。であれば、「どうやったら失敗の確率を減らせるか」を教えてあげればいいのではないでしょうか。
失敗する確率が低いから学生にチャレンジを勧めない、というのは、なんだか間違った親心のように、マイスターには感じられます。

また、「技術がなくてもIT(情報技術)とアイデアを組み合わせて起業しているケースが多い」というのは確かに、確固たる技術に裏打ちされたビジネスと比べると不安要素もありますが、だからって別に悪いことではないと思います。情報技術とアイディアを組み合わせてこれまで満たされなかったニーズやウォンツに応えたり、人々の不満足を解消する事業を興すことは、むしろまだまだ社会から望まれていることですから、これはこれで、うまいやりようを見つけられれば問題はないのです。

松下電器産業創業者の松下幸之助さんなどは、特別な技術ではなく、お客さんの要望に徹底的に応えていく商売人の行動で成功した典型例だと思います。(最初のヒット商品「二股ソケット」なんて、別に技術的には特別でも何でもないですよね)
逆の例は発明王のエジソンです。彼は蓄音機に関して世界トップの技術力を持っていましたが、蓄音機を単なる「音声の記録装置」としてしかとらえていなかったので、商売的には失敗しました。ライバル会社は、「一流音楽家の演奏を家で聴ける装置」として蓄音機(とレコード)を売り出したので、世間の人々の支持を集め、商売で大成功しました。音質ではエジソンの蓄音機の方がずっと高性能でしたが、お客さんのニーズを理解しているかどうかで勝負が付いたのです。

このように、特別な技術なくても成功しているビジネスはあるわけですから、「技術の有無」だけが絶対的な評価基準だと考えない方がいいかと思います。要因の一つ、くらいにとどめておかれてはいかがでしょうか。
……あ、これって起業家を目指す学生だけでなく、ベンチャー企業を興して苦戦している大学研究者のみなさまにも同じことが言えそうですね。

新たに23校が、認証を受けました。
■「教育活動の「質」評価、対象の23校問題なし」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200603210088.html
■「大学など23校に“合格”、大学評価・学位授与機構」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/past
/honbun.cfm?i=AT1G2002M%2020032006&g=K1&d=20060320

国公立大4校、公立短大1校、国立工業高等専門学校17校、私立工業高等専門学校1校、計23校が、基準を満たしているといことで、大学評価・学位授与機構の認証を受けました。
今のところ認証は、ゴールではなく、「スタートラインに立つ資格がある」という意味合いで社会から受け止められているんじゃないかと思います
今後もぜひ、教育内容のすばらしさを、磨き上げていってください。


■都道府県立高、授業料減免11人に1人 文科省調査
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200603220374.html

ショッキングな報道タイトルです。
私立高校の学費を支払い、子供を予備校に通わせる保護者がいる一方で、学費を払えない家庭が増えてきたというのは、「格差の拡大」を思わせる内容で、教育機関の関係者としては重く受け止めざるを得ません。

ただ、

ただ、各教委や文科省は、生活の苦しい家庭の増加だけが要因とはみていない。かつてと比べて申請をためらわなくなったという「積極化」傾向や、減免を受けていながら、家賃十数万円のマンションに住んだり、外車に乗って申請に来たりする保護者もいるという指摘もある。
(上記記事より)

…という点は、なんだか気になりますね。
また他にも、
「授業料の減免基準が都道府県で違っており、従来よりも減免が広く認められるようになってきた」なんて可能性もありそうですし、自然災害等によって減免を認められた家庭が多かった、という影響もありそう。

しかしいずれにしても、学費負担に苦しんでいる家庭が増えているというのは、間違いではないと思います。

トヨタ、中国の大学生達を経済的に支援する試みです。
■「中国の苦学生千人に3億円支援 トヨタ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/business/update/0321/035.html

一方こちらは、中国の記事。

トヨタ自動車は21日、2000万元(約3億円)を投じて、中国の中西部に住む苦学生を経済的に支援する「トヨタ助学基金」を設立した。20大学から毎年10人ずつ新入生を選び、1人あたり年間5000元(約7.5万円)を4年間給付する。06~10年で合計1000人への支援を予定。学生の審査など基金の運営は中国宋慶齢基金会(北京)と共同であたる。
(上記記事より)

…と、さすがの支援規模。
中国の大学進学者は増えていますが、家庭の経済事情から進学を断念する学生もやはりいるわけですね。
そうした学生を支援するわけです。

トヨタは中国で天津、広州、四川省成都、吉林省長春などに工場を持つ。05年の販売台数は約19万台で乗用車全体の約6.4%で、06年は5割増を目指すと同時に、社会貢献活動にも力を入れている。
(上記記事より)

↑この点は外せないポイントです。
中国に対してこうした特別の配慮をする背景には、企業活動としてその行為にメリットがあると考えているからでもあるでしょう。でもこれは、責められることでは、まったくありません。企業ならある程度は当然です。(もちろん、何の意図もなく支援をする企業があったら、なお称賛に値すると思いますが)
このプログラムが、ちゃんと社会の中で一定の成果を上げ、結果的に若者の可能性を広げることになったなら、それはやはり素晴らしいことだと思います。

企業は、それぞれの意図で、社会に貢献する。
非営利組織は、企業が注目しない部分を中心に、社会を支える。
これもひとつの、パートナーシップだとマイスターは考えますが、いかがでしょうか。

以上、今週のニュースクリップでした。

もう4月は目の前ですね。
来週中にさっそく、新入生の皆様を迎える大学も多いことでしょう。

キャンパスはいっそうあわただしくなりますが、一番、活気にあふれた良い季節でもあります。
笑顔でいきましょうね。

というわけで、今週も一週間、本ブログを読んでいただきまして、ありがとうございました。
今後も、どうぞよろしくお願いいたします。
マイスターでした。