大学の歴史をアピールしよう!(5):実例で見る、大学の周年事業

小学生のとき、通っていた学校が10周年を迎えたのを覚えているマイスターです。

その10周年の記念式典が、近隣の他の小学校の「100周年」記念式典とバッティングするという珍しい事態になったのです。
行政を始め、地位の高い方々は、みんな100周年の方の来賓として呼ばれてしまったらしく、マイスターの小学校の先生が「100周年にはかなわないよねぇ」と苦笑いしたのを、覚えています。

そんな事態についてマイスターの学校の先生方は、ちょっと申し訳なさそうな顔をしてました。いずれにせよ小学生としては、来賓が誰であろうと関心をもてないことには変わりがなく、その、そんなに気に病まなくてもよかったですよ>当時の先生方

さて、気づけばもう5回目になる、「大学の歴史をアピールしよう!」シリーズですが、今日は周年事業についての実例をご紹介していきたいと思います。

この業界に入って面白いと感じたことの一つが、この周年事業。

会う人会う人、みんな名刺に「本学は20○○年に、○○周年を迎えます!」みたいな文字を入れているのです。
中には、3年以上先の「予告」を名刺にプリントしている大学も。

大学業界はこういうのが好きなのかなぁ、
大学にとって「歴史が長い」ってのは、ブランド的にすごく価値のあることとされているのだろうなぁ、

…なんて、しみじみ思いました。
「○○周年事業準備室」みたいな部署を作るのも好きですよね、大学。

個人的にも「歴史がある」というのは組織として大切なポイントになると思っておりましたので、大学業界のこういう面は、いいんじゃないかなと思っています。

創設100年を数える組織がゴロゴロある業界なんて、そうはありません。

 学内外の著名人を呼んでシンポジウムを開催するとか、
 卒業生達に、イベントへの参加と、募金の依頼を広報するとか、
 「次の100年」に向けてキャンパスのマスタープランを計画するとか、

こうした大学の周年事業というのは、企業には真似ができない、面白い仕事なんじゃないかなと思います。
数年間取り組んでいれば、ブランディングのプロになれるかもしれません。

というわけで、現在webで見つけられる、大学の周年事業を見てみました。

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■「KEIO 150」(慶應義塾大学)
http://keio150.jp/

■「学校法人同志社/130周年記念事業」(同志社大学)
http://www.doshisha.ed.jp/130kinen/index.html

■「お茶の水女子大学 | 創立130周年記念事業」(お茶の水女子大学)
http://www.ocha.ac.jp/130th/index.html

■「中央大学 | 創立125周年記念プロジェクト」(中央大学)
http://www.chuo-u.ac.jp/chuo-u/chuo125th/index_j.html

■「早稲田大学~創立125周年記念事業~」(早稲田大学)
http://www.waseda.jp/waseda125/

■「東京理科大学創立125周年記念事業」(東京理科大学)
http://www.tus.ac.jp/125/

■「関西大学120周年記念事業」(関西大学)
http://www.kansai-u.ac.jp/120/index.html

■「郁子学長の『ひとり100周年事業』」(中京女子大学)
http://www.chujo-u.ac.jp/chu2/temp/hitori100/index.html

■「東北大学創立100周年事業—The 100th Anniversary of Tohoku University—」(東北大学)
http://web.bureau.tohoku.ac.jp/100aniv/index.html
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100周年以上の大学を、ざらっと並べてみました。
ちょっとネットをうろついただけで、こんなに出てくるわけです。
上記は「○○周年」を近々迎える大学だけですから、歴史の長い大学は他にもわんさかあるのでしょう。やはりすごいです。
大学というのは、時間をかけて社会の中に根付いていくものなのだなぁと感じますよね。

総合大学が多い中で、125周年の理科大が目立ちます。
以前、キャラクター活用についての記事でもご紹介しましたが、「坊ちゃん」のキャラが活きてますね。
セレモニー「坊っちゃん、赤シャツ100年目の和解?」について
なんてのを見ると、ついクリックしちゃいます。
「Conscience」という言葉を使ったコピーもキレイです。

慶應義塾大学の「Open Oval」というコンテンツは、かなりアート的な趣向で制作されていますが、周年事業でならこういうのもアリでしょう。150周年が終わった後も、消してしまうのはもったいないので、キャンパス内の資料館などで閲覧できるようにしてはいかがでしょうか。

あと意外と忘れられがちな工夫ですが、カウントダウン表示の広報効果は大きいです。。
関西大学のサイトは、ヘッダーにカウントダウンのプログラムが組み込まれているほか、あらゆる箇所で日付が強調されていて、いいと思います。割と基本的なことだと思うのですが、徹底できている大学はそう多くありません。参考になると思います。

中京女子大学の学長による「ひとり100周年事業」は、ついクリックしてしまう不思議なネーミングのコンテンツですが、1日コラムを書いただけで終わってしまっているのが残念です。
名前の割に、2005年に一体どんな100周年を迎えたのか、本コンテンツではまったく触れられておらず、シュールというか、ある意味前衛的な事態になってしまっています。大学のトップページには、このコンテンツのバナーが今でもばーんと出ていますが、これならもう外したほうがいいですよ。>関係者の方

※今回の話とは関係ありませんが、中京女子大学は、webサイト全体がなんだか異様な雰囲気を放っています。トップページのデザインから、ページレイアウト、サイト全体のコンテンツの構成、書かれている文章にいたるまで、不思議系なサイトです。面白いことは面白いのですが、その手作り感が裏目に出てしまっているところも多いような…。

たまたまかもしれませんが、今回、理工系単科大学の周年事業サイトをわりと多く見かけました。

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■「東京電機大学創立100周年記念事業の概要」(東京電機大学)
http://www.dendai.ac.jp/web/100th/index.html

■「芝浦工業大学 創立80周年記念事業」(芝浦工業大学)
https://office.shibaura-it.ac.jp/bokin/80th/index.html

■「創立75周年記念事業」(武蔵工業大学)
http://www.musashi-tech.ac.jp/75th/

■「鶴学園創立50周年記念事業」(広島工業大学)
http://www.it-hiroshima.ac.jp/13tsurugakuen/00_0050th.html

■「大阪産業大学 開学40周年記念サイト」(大阪産業大学)
http://www.osaka-sandai.ac.jp/k40/
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創立70年~100年前後の工科大学が多いのは、戦前の産業構造や、富国強兵政策などにも関係がないとは言えないのかな?

あと、歴史が長い大学の中には、学部単位で周年事業を執り行う大学もあるのですね。へたな全学イベントよりも派手にやっているところもありました。

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■「関西大学商学部100周年記念事業」(関西大学商学部)
http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_com/blog/

■「理工学部創設100周年事業」(早稲田大学理工学部)
http://www.sci.waseda.ac.jp/riko-100/

■「商学部創設100周年」(明治大学商学部)
http://www.meiji.ac.jp/shogaku/100th/100th.html

■「農学部創立125周年事業」(東京大学農学部)
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/125/125.html
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学部単位の場合は、「この学問分野の中で本学が果たしてきた役割」といった観点を打ち出すことになるので、全学イベントとはまた違った意義や役割を持たせることができそうですね。

(ところで、大学の教員の中には所属する大学よりも、自分が活動する学会の方に帰属意識を持っている方が少なくないみたいですよね。
これはなんとなくの憶測ですが、大学の周年事業より、学部の周年事業に意欲を燃やされる方って、実は結構いるのでは…?)

最後にご紹介する事例が、こちら!

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「龍谷大学 創立370周年記念 Ryukoku Univ. 370th Anniversary」(龍谷大学)
http://www.ryukoku.ac.jp/370th/
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370周年ですか!

ヨーロッパでも、数百年の歴史がある大学はたいてい神学がルーツですが、宗教系はあなどれませんね…。
以前の記事でちょっとだけ触れたのですが、古来より仏教のお寺というのは、現代で言う大学のキャンパスとして位置づけられているのです。
それくらい、本来お寺と大学は区別が付けにくいものなのですね。
そう考えると、仏教の名門、龍谷大学の創立370年も納得です。

■「大学の沿革」(龍谷大学)
http://www.ryukoku.ac.jp/370th/history.html

せっかくですので、みなさまも370年の沿革をご覧下さい。非常に興味深いです。
1872年に洋学を開講していたりと、仏教を差し引いてもやはり歴史の長い大学です。

以上、大学の周年事業サイトを見てみました。

広報は、「誰に」「何を」「何のために」伝えるか、という点が明確でないといけません。

周年事業の場合は…

事業の対象としては、学内の教職員や在学生、卒業生など、大学の関係者が中心のようですね。

伝える内容としては、大学の「過去」と「今」と「未来」を包括的に見せる方法が多いようです。

目的は、寄付金募集と、学内のミッション共有が中心でしょうか。

いずれにしても、学外の受験生やメディアではなく、学内の関係者の間で、大学の歴史を共有するためのイベントであるわけです。

一期一会の一般生活者のみなさまに、「本学は創立○○周年です!」と訴えても、あまり響かないでしょう。
逆に、受験生にアピールする広告は、学内関係者には理解されないこともあると思います。
どちらも、目的に合わせてデザインするから効果的なのでしょうね。

・大学の歴史をアピールしよう!(4):アピールする相手として一番大事なのは、実は大学内部の関係者達
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50172642.html

前回、↑このような記事を書きましたが、まさに周年事業は、学内向けの強力なメディアの一つ。
記念日は、うまく活用してください。 

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 自分で補足です。
    中京女子大学さんのWebサイトについてあれこれと書かせていただきましたが、↓このコンテンツは必見です。
    ■「大学改革について」
    http://www.chujo-u.ac.jp/chu2/temp/kaikaku/index.html
    「職員総会」の資料をサイトで全部公開している大学って、あんまりありません。
    中身には、勢いのある言葉が並んでいます。今後、どんな成果が上がったかについても公開していただいたら、非常に参考になるコンテンツになりそうです。