この4校、いずれも非常にすばらしい学校であると、胸を張って言えます。
学生に提供している教育の内容、研究のレベル、教職員の資質、卒業生の活躍、どの点でも成果を上げている大学でした。
マイスターはこれでも愛校心が強い人間だと思っておりまして、この4校に関しては、学園創設者の経歴から創設期の時代背景と学園の様子、その後の沿革まで、結構知っているつもりです。
まず受験生向けのパンフを一文字残らず精読(既にその学校に通っている場合、本来なら受験生用パンフを読む意味はないのですが、でも、つい読んじゃうんです)。そして、学校図書館の資料集巡りと、webサイトでの調査。そんなことをしていると、あっというまに大学の歴史は大体わかります。
高校生の時には、系列大学の歴史が気になって調べましたし、
大学に進学したらやはり、通った大学の歴史を興味深く読みました。
大学院でも、同じように、学園の歴史を事細かに知ろうとしました。
もはや、
「学園のことが好きだから、歴史を調べた」のか、
「歴史を知ったから、学園が好きになった」のか、
自分でもわからない状態です。
ですので個人的には、自分が卒業した学校のいずれにも、愛着があるのですね。
しかし、周囲はそうでもなかったようです。
学校によって、「大学の歴史」に関する関心には、大きな温度差がありました。
どの学校でも、学生や教職員には、
「これまでの歴史も大学のことが好きな人」
「大学の現在の環境はわりと好きだけど、過去の歴史とか、創設者の遺した精神とか理念とかは、どうでもいいと思っている人」
「大学には多くを期待しない人」
と、様々な人がいるわけですが、こうした「学校大好き」から「学校どうでもいい」までの人数分布が、なんていうか、学校によって圧倒的に違うのです。
キャンパスで過ごしていて、それが肌でわかるのですね。
マイスターが卒業した大学付属高校、大学、大学院それぞれでの、学生および教職員の「母校の歴史に対する思い入れ度」は、以下のような感じでした。
■A大学付属高校(マイスターが出た大学の附属高校)
付属校教職員の、大学の歴史への思い入れ:★★☆☆☆
生徒の、高校の歴史への思い入れ:★★★☆☆
生徒の、大学の歴史への思い入れ:★★☆☆☆
社会における、大学の歴史の知名度:★☆☆☆☆
■B大学(マイスターが出た大学)
教職員の、大学の歴史への思い入れ:★★★☆☆
教職員の、学科の歴史への思い入れ:★★★★★
生徒の、大学の歴史への思い入れ:★★☆☆☆
生徒の、学科の歴史への思い入れ:★★★★☆
社会における、大学の歴史の知名度:★★★☆☆
■C大学大学院(マイスターが出た大学院)
教職員の、大学の歴史への思い入れ:★★★★★
生徒の、大学の歴史への思い入れ:★★★★★
社会における、大学の歴史の知名度:★★★★★
上記は、マイスターの主観により、独断と偏見でポイントをつけた結果です。
(あくまで個人的な主観ですので、明確な根拠はありません)
A大学付属高校の教職員や生徒は、大学の付属とはいうものの、あんまり大学自体の歴史には興味がありませんでした。生徒が、授業やHRなどで、大学の創設期に関する話やその後の沿革についての話を教員から聞くこともありませんでしたし、課外活動としても、歴史を知る機会はほとんどありませんでした。
もしかすると、大学の創設者の名前も知らないまま、高校を卒業していく生徒も少なからずいたかも知れません。
(それでも、全体の3割くらいの学生は、推薦で系列の大学に進学していきました。さすがに推薦組は、大学の歴史くらい自分で調べていったと思いたいですけれど)
B大学の教職員や学生は、自分達の「学科」に対しては熱く語るものの、大学全体に対しては総じて無関心でした。
で、大学院に通ったC大学は、前の二校とは比較にならないくらい、母校愛の強い学校でした。
○授業やゼミなどで、教員が、創設者の言葉を引用する
○学生も引用する
○パンフやwebサイト、学内イベント、その他外部メディアの記事などで、大学の歴史が幾度となる取り上げられるので、そうしたものを目にする機会が多くある
○自分達の大学の歴史を、結構みんな知っている
○タテヨコのつながりが強い。卒業生の同窓会組織も強固である
○わりとみんな、なんだかんだいって自分達の大学が大好きである。
そこに通う自分や、同じ大学に通った同門の方のことも好きである。
……という感じだったんです。
A大学(付属校)、B大学の雰囲気を知っていたつもりの自分としては、同じ「大学」という組織で、学校に対するメンバーの認識がこうも違うのか! と、体感できて面白かったです。
キャンパスに漂うメンバーのエネルギーは、C大学が一番パワフルであるように感じました。
さて、この3日間にわたって、「大学の歴史をアピールする」というテーマで記事を書いてきました。
・「大学の歴史をアピールしよう!(1):企業の社史紹介コンテンツから学ぼう」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50171071.html
・「大学の歴史をアピールしよう!(2):歴史コンテンツの制作には、私立大学の方」が有利?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50171642.html
・「大学の歴史をアピールしよう!(3):学祖をもうちょっと活用した方がいい?大学」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50171944.html
歴史をアピールする対象として、「ステークホルダー」とか、「受験生」「一般生活者」なんて言葉を用いてきましたが、今回申し上げたいのは、
「在学生や教職員など、学校の内部にいる関係者達にアピールする」
ということの大切さです。
webサイトやパンフレットでいくら大学の歴史を懇切丁寧ドラマチックに紹介しても、学園生活を送る上で、周囲の人々とそうした想いを共有できないのではおそらく、生きた大学イメージとして根付きませんよね。
逆に、周囲の学生や教職員がみんな大学大好きで、大学の歴史について語るような人達ばっかりだったら、イヤでも自然に、自分もそうなると思います。他人と価値観を共有するというのは、非常に魅力的で、抗いがたい体験です。自分が好きな大学を、周りのみんなも大好き、という環境って、うれしいでしょう。
つまり、大学の歴史を広め、活かすなら、まずはキャンパスにいる人達に対して始めるのが効果的、ということになります。
歴史をアピールしてくれる人として一番大事なのは教職員と在学生ですが、歴史をアピールする相手として一番大事なのもまた、教職員と在学生なのですね。
マイスター個人の例で言うと、C大学ではそれがほぼ完璧に達成されていたのだと思います。
先日、入試に関わる仕事を専門にされている、ある大学スタッフさんとお話しする機会がありました。
その方が、
「人はみな、自分の出た(または在学している)大学を、好きになろう、愛そうとする性質を持っているんじゃないか」
とおっしゃっていて、マイスターもその通りだと思いました。
どうせ入ったのなら、好きになった方がいい、というわけですね。
そのとき話をしていてマイスターが思い出したのは、クルマメーカーのwebサイトのことです。
クルマメーカーが運営している、車種ごとのwebサイトにアクセスされる方って、どんな方だと思われますか?
「そのクルマを買おうか迷っている人が、情報収集のために訪れる」とか、「クルマ好きが、暇つぶしにやってくる」とか、もちろん色々あるのですが、実は
「そのクルマを既に買ったお客様が、改めて、製品の魅力を確認するためにアクセスしてくる」
というのが、かなり多いのです。
「俺の買ったクルマは、やっぱりいいクルマだ。うんうん」と、納得したいのですね。(この気持ち、マイスターにはよくわかります。みなさんも、こういう行動、とったことありませんか?)
そうして製品の魅力を何度も反芻しながら、その製品のファンになっていくのですね。
大学の歴史コンテンツにも、そんな役割がありそうです。
既に大学の関係者である在学生や教職員が、
「自分の所属する大学は、こんなに良い大学なんだ。
こんなに人間的に優れた創設者がいて、世界に誇れる素晴らしい理念に基づいて設立されているんだ。
今まで、多くの先達達が、この理念を受け継いできたんだ。他にはない歴史を持っているんだ。この大学のメンバーでよかった!」
と、納得し、自ら大学のファンになっていく。
そのために機能する装置して、「学園の歴史コンテンツ」があるのですね。
この視点、非常に大事だと思います。
みなさまも、改めて、ご自身の大学のwebサイトを見て、歴史コンテンツを探してみてください。
いまひとつ魅力的じゃないなぁ、とご自身が感じられたら、それは何らかの手を打たれた方が良いと思いますよ。
そもそも、関係者を惹きつけられないような歴史コンテンツなら、外部のステークホルダーに読んでもらうのは難しいのかも知れません。
そう言う意味でも、まずは教職員と在学生に、歴史コンテンツをアピールしてみてはいかがでしょうか。
以上、マイスターでした。