俺の職場は大学キャンパス…なのですが、最近、義務教育の話が多いですね。
この2日間に、さまざまな報道が入ってきているので、まとめてご紹介します。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「義務教育の構造改革」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/gimukyou/index.htm
■「義務教育負担金堅持で与野党議員そろい踏み 日教組集会」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200510250401.html
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まず、文部科学省webサイトにまとめられた、中央教育審議会の答申内容。
誰でも簡単に理解できる、ビジュアル豊富なパンフレットも、PDFで同時公開です。
地方六団体の案のどこに問題があるかを、懇切丁寧に説明していて、なかなかわかりやすい仕上がり。
いつもより気合いが入っています。
ちなみに、「国民の皆様からのご意見概要」と題された報告書も公開されています。
義務教育費国庫負担制度の在り方について、「ほぼ100%が『堅持』の結果となっている。」と記述されていますが、そもそも実は回答者の69%が教員、19%が公務員という罠。
(ちなみに3番目に多いのは「団体職員」です。♪ 会社員はなんとたったの0.4%です♪)
そりゃあ、制度を堅持せよっていうだろうよ、とマイスターは世界の中心でつっこみたい。
もしも仮に、教員の間で「文科省にみんなで意見を送ろう!」みたいな組織活動が行われていたとしても、それは正統な活動ですから誰にも文句は言えません。
ただ、その結果、
○教員免許更新制の導入、免許状授与の仕組みの検討
-本項目については、「教育現場における自主的な研修の機会保障等の条件整備を行うべき。」、「免許制度は、養成・採用・研修の抜本的・一体的改革を行うべきである。更新制で教育の資質、能力の向上に寄与する効果は薄い。」といった意見が多く、全体的に消極的な意見が多かった。-(「国民の皆様からのご意見概要」より)
…なんて結果にまとめられたこの文章が、今後「国民全体から寄せられた意見」として扱われるのかと思うと、ちょっと微妙です。
なお他にも、レポートには
「全ての子供を同じスタート地点に立たせるには、国庫負担制度は維持どころか拡充するべきである。」といった意見があった。
なんていう、分析者の都合のいい回答を選んで紹介しているようなフシの記述も見られます。
もちろん、こういった回答者および分析者の属性に注意して内容を受け取る分には、もちろん何の問題もない、有意義な資料です。
各自の責任で読み解いてみてください。
なおオマケですが、25日には、義務教育負担金堅持を掲げた日教組の集会があったようです。
さて、そんな動きはあったものの、政府はどうやら正式に、義務教育費国庫負担金制度について、全国知事会など地方6団体の要求通り、中学校教職員給与に対する8,500億円分を削減する方針でいくことが決まったようです。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「義務教育費の国庫負担、小中とも3分の1に削減」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20051028ur02.htm
■「義務教育費の国庫負担、中学分廃止へ 政府方針」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200510270235.html
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読売と朝日で、報道の内容に若干、違いがあるようです。
朝日の記事は全体を読むと、「8,500億円分を『制度的に廃止』する」という内容に受け取れます。
「小中学校分」の合計額に対する国の負担を引き下げる「負担率引き下げ」ではなく、廃止です。
一方、読売の記事には、「国と地方の負担を合わせた小中学校などの教職員給与の総額は5兆円余りで、負担割合の引き下げにより、8,500億円の削減を実現する。」とあります。
制度は廃止せずに残したまま、小中教職員給与に対する国の負担率を引き下げることで、8,500億円分の削減を実現するという内容です。
どっちが正しいのか、これではわかりませんね。
いちおう読売の記事の方が、日付が1日分、後なのですが…。
どーなってんだ? 読売さん、朝日さん。
まあいずれにしても、政府は従来からの予定通り、8,500億円削減の方向でいくようですが…。
ちなみに、Asahi.comでは、上記の記事の「関連記事」として、以下の記事にリンクを貼っています。
■「『国際学力調査』上位のフィンランド、学校に権限移譲」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200510240073.html
つい読んでしまったではありませんか。
こうした、紙面にはない情報編集力が、webならではの魅力ですね。
最後に、どうしても掲載しておきたい記事を、ご紹介します。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「財政制度審議会の教員給与優遇,校長年金、次官上回るとの報道について」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/10/05102101.htm
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「教員の給与が、一般行政職より高い」という報道について、文部科学省が公式にwebサイトで説明しています。
・平均年齢の違い(教員が0.7歳高い)、
・給与決定の基礎となる学歴区分の違い(教員は全員が大卒、短大卒であるのに対し、一般行政職員は高卒が38パーセント)
など、非常に論理的で、わかりやすい説明です。
確かに、先日の報道で示された数字には、こうした点は加味されていなかったように思います。
また、「校長経験者の年金額が事務 次官経験者を上回る」という件についても、
・掛金も次官経験者より教員の方が多く払い込んでいる。
・事務次官経験者は、定年前に退職し、組合員期間が短い
など、説得力のある根拠を示しています。
誰が見ても、「ああ、なるほど、確かにそうか」と理解できる主張で、あいまいな答弁ではありません。
国民の疑問に明快に答えるものであり、こうしたプレスリリースは非常に好ましいと思います。
ただ残念ながらこのプレスリリース、マスメディアからは黙殺されてます…。
「国民に義憤を覚えさせる」方向の記事はセンセーショナルに取り上げるけど、その逆は無視するということでしょうか。
新聞といえども、結局は売り上げにつながる紙面編成が重要ですから、あり得る話です。
事件報道などでも言えることですが、皆様もご存じの通りマスメディアは、アフターフォローは基本的にしません。
それ対して、このブログはどの勢力にも属してませんし
(というより、すべての組織を批判的に見ようと努力しております!)、
残念なことにお金もまったく絡んでいないので、
このマスメディアには報道されない、しかし極めて良質なプレスリリースをご紹介しておきたいと思います。
そんなわけで、今日はいくつかの報道をご紹介しました。
教育政策をめぐっては、まだしばらくはあわただしい日々が続くようですね。
おかげで毎日、報道をチェックするのが面白いマイスターでした。
こんにちは、朝日と読売の記事について、私なりの推測をエントリーしてみました。廃止論と負担率削減論の両方をわざと流したという見方もできます。