マイスターです。
大学では、様々な方が働いています。
職種や業務は違っていても、学生のことを考えている点は同じ。
それぞれに、それぞれの関わり方があります。
今日は、こんな話題をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「“あいさつ警備員”名物に 静岡産業大の後藤さん」(中日新聞)
「おはよう」「お疲れさん」-。静岡産業大藤枝キャンパス(藤枝市)の正門前で、学生に積極的に声を掛ける警備員の男性がいる。学生から恋愛や友人関係の悩みを打ち明けられることも。ゴールデンウイーク明けで5月病になる新入生がいる中、元気いっぱいのあいさつで応援している。
警備員は、後藤英次さん(60)=藤枝市岡出山。
7年前に静岡産業大で働きだし、自発的にあいさつを始めた。初めは、きょとんとした様子だった学生たちだが、数日たつと、あいさつが返ってくるようになった。
今ではすっかり日常の光景に。「就職できるかな」「彼女ほしいんだけど、うまくいかない」などと相談を持ちかけることも多い。「いつもあいさつしてくれる。部活のことも気にして聞いてくれます」と情報学部4年、池田美穂さん(21)。
(略)1週間に1回ぐらいしか大学に来ない学生も。見かねて「もったいない。親が汗水垂らして稼いだ金をどぶに捨てるものだぞ」と諭した。しばらくすると、学生は「心を入れ替えます」と話し、登校するようになった。
後藤さんは語る。「最近の学生は人間関係がドライと言われているけど、本音では、もっと人と深く付き合いたいはず。きっかけがほしいだけなんだ」
入試広報課の川合孝弘さん(35)は「1000人いる学生の顔を全員知っているようで、CMに出演する学生を探す時に紹介してもらったこともありますよ」と頼りにしている。
警備員といえば、厳しい表情で不審者の侵入を防ぐこわもてのイメージが強い。「あいさつをしていると、すぐ顔を覚えるんです。本業に余分なことではないですよ」。後藤さんはにこやかに話してくれた。
(上記記事より)
静岡産業大学で警備員を務めていらっしゃる、後藤英次さんの話題です。
警備員の業務としてあいさつをする決まりになっているわけではないでしょうから、後藤さんが個人的な取り組みとして、自主的に始められたのでしょう。
記事にあるような影響を学生さん達に与えるわけですから、さぞや素敵なあいさつなのだと思います。
コミュニケーションというのは、相手に真剣に向き合うことから始まると思います。
あいさつひとつとっても、相手に対する姿勢や想いが表れるもの。
この後藤さんのあいさつが学生を動かすのは、そんな真摯な姿勢があるからなのでしょう。
自分は普段、人に対してこれだけ真摯に向き合えているだろうか……と反省すると同時に、あらためて、教育の原点ってこういうことだよなぁと思います。
教育機関では、様々なスタッフが、様々な職務を担って働いています。
大学でも高校でも、中学校や小学校でも、もちろん塾・予備校もそうでしょう。
そんな、人と向き合うことがミッションの教育機関であっても、大きな組織になればなるほど「自分の仕事は○○」とか、「自分は○○担当」とか、いわゆる「業務」に基づいた考え方や振る舞いに陥ってしまいがちです。
最近の学生(生徒)って元気ない子が多くて困るよね、と語る人には、「自分が元気にさせる」という視点はありません。
それは自分の役割ではなく、学生の指導を直接担当する教員の役割だ……といった、他人任せの発想が生まれてしまっているから。
でも本当は、あいさつひとつで、これだけ人に影響を与えられるのですよね。
見習いたいと思います。
こういう姿勢が通底されている組織というのは、企業でも学校でも、きっと魅力があるでしょう。
大学で言えば、「キャンパスの教育力」とでも言うのでしょうか。
パンフレットやwebサイトに、こうした方が登場されることはほとんどありません。
オープンキャンパスに出かけても、会えないかもしれません。
でも実は、このような外に表れない魅力が、大学の底力を形成する大事な要素だったりするのだろうと思ったりするのです。
以上、記事を読んでそんなことを感じたマイスターでした。
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※「あいさつ」を正式に教育に取り入れている学校はいくつかあります。
首都圏で言えば、例えば「全人教育」を掲げる玉川学園や、いくつかの伝統ある女子校などがそうでしょうか。
やはり、人としての基本を身につけさせると同時に、「人と真剣に向き合う」ことを学ばせることが目的なのかな、なんて思ったりしますが、どうなのでしょうか。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。