今でこそ自分が理系だか文系だかわからず、半端者だの赤魔道士だのと言われてしまっているマイスターですが、
高校3年生の時は純然たる理系進学コースにいたので、文系の学問分類なんてほとんど知る機会がなかったのです。
大学生になって卒論を書くときに読んだある社会学者の本が非常に面白かったので、社会学も楽しいかな、と今は思います。
高校生で社会学に興味を持っている人がいたら、応援するかもしれません。
さて、そんなマイスターが最近知り、思わず一気読みしてしまったサイトをご紹介します。
■スタンダード 反社会学講座
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/index.html
このサイト、非常に面白い!です。
面白いのですが、ご紹介するにあたり、お断りしておくことがあります。
著者自身がおっしゃるには、この「反社会学講座」は、とにかく「おもしろい」ことを追求しています。
決して、真面目に世の中をよくしようとか、社会の問題に警鐘を鳴らそうとかいう思いで作られているサイトではありません。
うっかり、「なんだ、このサイトの作者は不真面目だ!」とか、「こんな失礼な学説が認められるか!」とか、
怒って苦情のメールを送ったりしないように。
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警告!
反社会学は社会学の手法や論理を誤用し、無意味でくだらない結論をみなさんに押しつけようとします。当サイトの内容を読んで笑う人は、正常な頭脳と自由な精神の持ち主です。反対に、怒り出す人は、学力低下および判断力停止の末期症状であるおそれがあります。(「スタンダード 反社会学講座」webサイトより)
全般的なことですが、当講座ではほとんどの場合、承知の上で、あやしげな論理をつむぎ、ズレた結論を導き出しているつもりです。話の展開をおもしろくするために、心にもないことをいうこともあります。しかし、そういう場合でも、ネタとして使っている資料やデータは本物です。資料そのものを捏造することはありません。ただ、データの一部だけを見せたり、どうでもいいデータをむりやり比較したりするだけです。(「御意見無用2~アフターサービス」より)
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…と、サイトにも皮肉っぽく書かれています。
普段、マイスターのブログでご紹介しているデータや専門書の類とは、こうした姿勢の点で、一線を画します。
しかし。
この「反社会学講座」は同時に、
世の中でまことしやかに語られている言説や通説などを、きわめて鋭い視点で斬っており、私たちに知的刺激を与えてくれると思います。
※世の中で語られている通説の例:
・少子化で社会性を身につけられない子供が増えた。
・少年の脅迫犯罪も増えた。
・欧米の大学生は日本の学生に比べて立派だ
こうした「まことしやかに報道されている説」を作り出し、世間に流布する社会学の手法に疑いのまなざしをむけ、
正確なデータとユーモアとで、ぶった切っているのが、この「反社会学講座」なのです。
まずは、第1回のページを読んでいただければと思います。
■第1回 なぜ社会学はだめなのか
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson1.html
上でご紹介した「当講座ではほとんどの場合、承知の上で、あやしげな論理をつむぎ、ズレた結論を導き出しているつもりです。」といった作者の言葉は、実は作者が批判する「社会学」にも当てはまる…ということなのでしょう。たぶん。
実際に「反社会学講座」で引用されているデータ類はすべて実在の、正確な情報ですし、かなりの文献も参考にされていて、文献リストも公開されています。おそらくこの著者自身、社会学者です。
教育の世界は、こうしたあやしげな通説が特にいっぱい流れているように思いますので、本ブログでこのサイトをご紹介する価値があるかと思った次第です。
鋭い皮肉がきらりと光る、ちょっとだけ知的なエンターテイメント、だと思って読んでみてください。
では、そんな「反社会学講座」の中から、教育関係者にもかかわりのあるトピックをいくつかご紹介いたします。
いずれも、エンターテイメントとしておもしろい文章ですが、
それだけにとどまらなず、社会的な通説に対してのちくりとした皮肉が含まれています。
■「第2回 キレやすいのは誰だ」
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson2.html
マイスターも教育産業に属しているので、犯罪が低年齢化しているとか、凶悪な少年犯罪が増えているとかいったニュースは気にかかります。
で、自分では、テレビや新聞の報道を冷静に分析しているつもりでいても、知らず知らずのうちに
「昔に比べて、子供は、どんどんおかしくなってきているんだよなぁ」
なんて、メディアが作ったイメージをそのまま心の中にコピーしてしまっていることに気づきます。
しかし。
子供の凶悪犯罪が気にかかるのは間違いないのだけど、過去と比べて今が最悪なのかといわれると、実はそうでもないんじゃないかってことですね。
■第12~14回「本当にイギリス人は立派で日本人はふにゃふにゃなのか」
~PART1・イギリスの若者に説教の巻~
~PART2・欧米の労働者よ、真面目に働けの巻~
~PART3・欧米の大学生は本当に自立してるのかの巻~
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson12.html
計3回にわたって書かれているテーマです。
欧米の大学生は、学費は自分で奨学金を借りて払うし、大学入学と同時にほとんど全員が自活するし、
アルバイトなんかしないで授業に専念している。
それに欧米の大学は、入学は楽だが、卒業は大変だ。
それに比べて日本の大学生は…。
というのが日本での通説。
でも、いくつかの統計データを見ると、実態はかなり違うようです。
アメリカでも、4割近い学生は、ローンや奨学金をまったく利用していないのですね。
親の援助を受けながら大学に通っている学生だって、少なからずいるようです。
欧州では学費がタダの国もあり、そのうえ書籍代などのための奨学金も日本よりずっと充実しています。
高額の学費がかかる上、仕送りだけでは金銭的に生活できない環境で暮らしている日本の大学生と比較してはいけませんね。
あと、これはマイスターもご紹介したことがありますが、欧米では「大学は4年間で卒業しなきゃいけない!」という意識が、日本ほど強くありません。
結構、のんびりだらだら、大学に通っています。だって、学費、タダの国があるんですもん。
結果、卒業時の平均年齢が27~29歳という国も、ザラなのですね。
対して日本では、1年留年すると「何を遊んでたんだ」とか、「ダメ人間」とか言われます。
2年留年したら、親が「なんでこんなことに…」と大泣きでしょう。
日本では学費のシステムが「1単位いくら」ではなくて、年間授業料として計算されていることも関係していると思います。
この章を読むと、そもそもヨーロッパの大学生と日本の大学生について、能力や学業意識の違いを単純に比較できないということがわかります。
■「第15回 学力低下を防ぐには」
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson15.html
これまで、新聞や書籍で扱われた、学力についてのおかしな言説を紹介しています。
早期英才教育などについても触れられています。
■「第17~19回 スーペー少子化論争」
~PART1・スーペーさんが語る少子化の神話~
~PART2・少子化のせいじゃないと、私、困るんです! 経済・労働力編~
~PART3・少子化のせいじゃないと、私、困るんです! 年金・働く女性編~
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson17.html
「超悲観主義者=スーパーペシミスト、略してスーペー」だそうです。
この3つの回は、特に皮肉がきいています。
で、ほんとにそうか?と思う箇所ももちろんあるのですが、ものの見方や捉え方という面で、やはりとても面白いです。
新聞やいわゆる「有識者」の方の、悲観的な主張に対し、いまより若干やわらかいアタマで接することができるようになると思います。
マイスターなどは、大学という、「少子化は悪だ!」みたいな見方が多勢を占める業界で働いているので、なおさら身にしみました。
まぁ、現在の日本では、少子化を目の敵にしていない業界の方が珍しいのかもしれませんが。
■「第22~23回 末は博士か叙勲者か」
~PART1・名誉博士への異常な愛情~
~PART2・賞より素敵な商売はない~
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson22.html
以前このブログでもご紹介した「ディプロマ・ミル」の話や、アメリカの大学院の人数構成比なんかも出てきます。
日本でも、ディプロマ・ミルと同じような機関が合法的に商売をしていたという事実が紹介されていて、興味深いです。
学位や「名誉博士」などの称号を、まるで勲章のようにありがたがる日本のエライ人たちのお話が紹介されていますが、なんとなくわかる気がします。
■「第24回 こどもが嫌いなオトナのための鎮魂曲」
http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson24.html
かつては、子供は社会の中でどう扱われていたか。
歴史学や民俗学などに興味がある方なら、一度は聞いたことがあるかもしれない話がまとめられています。
そうした分野に興味のない人にとっては、ショックな内容かも。
以上、つまみぐいのようにご紹介させていただきましたが、
最低限の情報リテラシーと批判精神、それに知的皮肉を楽しめる余裕のある方には、
他のどのページもオススメです。
あまり深いことを考えず、「こんな見方もできなくはないなぁ、はっはっは」くらいの気持ちで楽しんでください。
なおこのサイト、書籍にもなっています。

この本の内容は、サイトに掲載されている文章とほぼ同じらしいのですが、
近々、書下ろしを多く盛り込んだ2冊目が、新たに出版されるらしいですので、
興味のある方は、そちらもどうぞ。
んで結局、やはり社会学という学問は面白そうだという結論に達したマイスターでした。