「教育実習、母校は避けるべき 中教審の協力者グループ」

教職免許、持ってないマイスターです。

建築学科に在学していた時は、まさか自分が教育業界に行くことになるとはおもっていませんでしたから、教職の科目はほとんどとっていません。今思えば、教員免許、とっておけばよかったなぁと思います。

現在、教務部門に勤務しているマイスター。自分では教職関係の業務にはタッチしておりませんが、教職の担当者が、とても忙しそうにしているのを見ています。
マイスターの勤務先は、他大を卒業した後、教職科目だけを受けるためにやってくる学生さんが少なくないのです。18歳人口が減少している昨今、ありがたいことでありますが、対応は大変みたいです。教員免許を取得するためにあとどれくらいの単位が必要か、という計算が、学生さんごとにバラバラですからね。カスタムメイドなサービスです。そんなわけで教育実習の調整も、大変そうです。

ところで自分自身は教育実習を受けていないけれど、高校の時の同級生は何人か、大学で教職課程の科目を履修し、実習に行ってました。どこの学校で実習をしたのかはわからないけど、現在、そのうちの一人は、なんと母校である高校の教員になっています。
かつて学んでいた校舎の教壇に立っている、同級生。ぜひ一度、どんな授業をしているのか見てみたいものです。

さて、今日は、先日メディアに載っていたこんな話題を。

【教育関連ニュース】—————————————-

■「『母校で教育実習』禁止、学生の評価甘いと…中教審」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060608ur21.htm
■「教育実習、母校は避けるべき 中教審の協力者グループ」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/news/060608/sha104.htm
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教職を志す学生らに課せられている教育実習について検討してきた中央教育審議会の協力者グループは8日、学生が自分の出身校で一定期間教壇に立つ「母校実習」をできるだけ回避するべきとする検討結果をまとめ、報告した。「母校実習」は実習内容の検証や評価が甘くなりがちで、通過儀礼と化しているとの指摘があった。教員の資質向上が求められるなか、「教育実習」を内実あるように改善充実させることを求めた。
(略)
現在、学生の出身校で一定期間教壇に立つ「母校実習」について「評価の客観性などの点で課題があり、できるだけ避けることが適当」と提言した。
「母校実習」は一般的に行われているが、大学側は学生を送り出すだけで、実習中の細かなケアや専門的知識を身につける指導などがほとんどないのが実情。迎え入れる母校側も卒業生の教職志望者を厳しく指導する姿勢に乏しいという。
ただ、現状で母校実習を一斉に全廃すると、年間約12万人の教員志望者が都市部だけに集中したり、実習校の確保が困難な学生が続出する事態も想定される。中教審では報告書を踏まえ、母校実習の改善策についてさらに模索する方針だ。
産経web記事より)

教育実習は教職課程の一環で、学生は居住地近くの学校などで2~3週間程度の実習を受けるケースが多い。「大学と受け入れ校の連携が不十分なため、今も母校実習を受けている学生がかなり多いはず」(文部科学省幹部)という。
これに対し、報告書は「実習校は大学の付属校や同一都道府県内の学校が基本」と指摘。母校実習については「評価の客観性に課題があり、できるだけ避けるべきだ」とした。教育実習生の評価は実習先が行い、それに基づいて大学側が単位認定する仕組みだが、この日の部会でも、委員から「卒業生に厳しい評価をつけにくい」「『学校行事を手伝っただけで単位をもらった』という学生もいる」など弊害を指摘する声が相次いだ。
読売オンライン記事より)

このように、自分の母校で教育実習を受けるというのは、評価の客観性という点で好ましくない、という意見が多く出たのだそうです。

確かに、言われてみればそうかも知れませんね。

3年やそこらで教員構成ががらりと変わることって、そんなにないでしょう(特に私立校出身の場合は、10年経っても異動がないので、なおさら)。
となると、母校で実習をした場合、「自分に国語を教えた先生の下について、国語の実習をする」なんてことがわりと高い確率で起きうるのですね。そのとき果たして、厳しい指導をすることが可能なのか、ということです。

ついでに言うと、私立の場合、冒頭でご紹介したマイスターの同級生のように、「実習後、正式に職場の同僚になる」という可能性もわりとある気がします。「実は、母校であるここで働きたいなと思っているんです」なんて相談されたら、指導する教員の側も、ちょっと意識してしまうかも知れません。もし同僚になったら、へたすりゃ一生、同僚ですからね。

もちろん、母校実習は、悪い面だけでもないと思います。
以下に、「母校実習のメリット」を、思いついた限り、挙げてみます。

【母校実習のメリット】
○突っ込んだ相談や質問をしやすい
母校の恩師になら、突っ込んだ質問や相談をしやすいです。他の教科の教員とも顔見知りですから、色々な教員に意見を聞くことだってできるでしょう。

○時間を有効活用できる
教育実習は、多くの場合2~3週間です。教師としての適性を測る期間、教師として一生を送ることを決断する期間としては正直、あまり長いとは言えません。教師から他業種に転職したり、他業種から教師の世界に入ってきたりということがほとんどない現状では、教育実習は、自分の将来を考える上でも、とても重要なのです。
そういう視点で見れば、貴重な2~3週を活かす上では、やはり母校の方が有利でしょう。縁もゆかりもない学校で実習生活を送る場合は、まず、人間関係をゼロから構築していかなければなりません。人にもよりますが、突っ込んだ相談をするのは、実習がある程度終わってからではないでしょうか。

○実習が終わっても、つながりが途絶えにくい
母校の場合、もし教育実習が終わって他の学校に勤めることになったとしても、「恩師と教え子」という関係がありますから、学校とのつながりを保ちやすいと思います。前述したように、私立だと、何年経っても教員が異動しません。ふらりと学校を訪れても、知っている教員が誰かしら残っています。そうした教員陣が、生涯を通じてのメンターになってくれるというのは、魅力だと思います。

以上のようなメリットが、ぱっと浮かびました。
もちろん、冒頭の記事の通り、デメリットも多いはずです。

結局、どちらがいいのかマイスターにはわかりませんが、もし「母校での実習を禁じる」となった場合、当然、大学の対応も変わってきますよね。

「大学と受け入れ校の連携が不十分なため、今も母校実習を受けている学生がかなり多いはず」

と、産経の記事にはありますが、むしろ実態としては、

「母校にツテがあるなら、積極的に母校で受けなさい」

と指導している大学が少なくないってことじゃないのかなぁ?
なんて、マイスターは思うのですが、いかがでしょうか?
(※マイスターの勤務先がこう指導しているというわけではありませんのでご注意を)

どのような方針を採るにしても、政府と大学がハッキリとした方向性を打ち出して、教育現場を混乱させないようにしなければなりませんね。

以上、今日は、教育実習についてのニュースをご紹介しました。

ところで余談ですが、マイスターは、教育実習というシステムには、ものすごく大きな可能性が眠っていると考えています。

学生が、大学で学びながら定期的に地元の学校を訪れて実習を行うという仕組みは、教育上のメリットだけでなく、大学の地域貢献モデルと結びつけて計画することが可能なのではないでしょうか。

・用語解説:「コーオプ教育」とは?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50206451.html

例えば先日、↑上記記事でコーオプ教育についてご紹介しましたが、これの学校派遣版ができたらいいですよね。

現在、小・中・高校を訪れる学生のほとんどは、教職履修生です。
でも、学校で何かを教える、あるいはサポートする体験が必要なのは、むしろ教員志望者ではなく、将来全然違う職業に就いていく学生達なんじゃないか、と思ったりします。

そんなわけで、コーオプ教育の一環として学校を定期的に訪れ、3、4年生頃になって教職を志すことにした学生は教育実習に参加する、なんていうカリキュラムがあったらいいのになと思うのです。

教職志望者は、より自分の将来をじっくり考えることができます。毎年、同じ学校を訪れれば、自分の関わった生徒達が少しずつ成長していく様を、(部分的にではありますが)感じることができるでしょう。それは教育の、最も根元的な喜びだと思います。

一方、子供に関わる経験をして、結果的に他の職業に就いた学生達も、今後の日本の社会の中で、大事な役割を果たしてくれるはずです。少子化を食い止める政策が色々と審議されていますが、マイスターは、「大学時代に必ず地域の学校に関わる」というのを、必修カリキュラムとして提案します。
教育は人作り。どんな職業に就くにしても、その経験は必ず活かされるはずです。

以上、教育実習について考える、マイスターでした。