大学と大学院のものは100%とってあります。
高校の教科書や参考書類も、主要教科については、家庭教師のアルバイトをしていた関係でほぼすべて残っています。
世界史の図表は今でもたまに手にとりますし、数学も、ふと気になった内容を確認するために、ページをめくることがあります。
高校生のときは物理が好きで、授業中に聞いた「ニュートリノ」の話は、面白かったという印象が強く記憶に残っています。
東大の小柴教授がノーベル賞を受賞したときは思わず、かつて使っていた参考書を引っ張り出し、あれこれ読み返して懐かしんでしまいました。
(詳細な知識は、もうアタマからほとんど抜け落ちてましたが)
中学校より前の教科書となると、さすがに、ほとんど捨ててしまいました。
(記念品的な意味合いで、音楽や国語の教科書だけは捨てずに持っています)
しかし高校や中学の教科書なんて、社会人になったら、大抵の方はもう保管してないんじゃないでしょうか?
何年も前に学んだ知識の引き出しを、ふとあけなければならなくなったとき、
引き出しがすでにない。
そんな風に困ること、たまにありますよね。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「Wiki、教科書業界に宣戦布告–新プロジェクト「Wikibooks」を立ち上げ」(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/svc/nlt2?id=20087874
・フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks):日本語版
http://ja.wikibooks.org/wiki/
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オンラインの百科事典「Wikipedia」を運営する「ウィキメディア財団」が、
幼稚園から大学までの教育課程で使われる教科書の内容を、すべてオンラインで無料利用、自由配布させるプロジェクトをスタートさせた
という報道です。
思えば、インターネットが世の中に普及し始めたとき、
「将来は、あらゆる知識や情報がネット上に公開され、誰もが自由にそれを利用できるようになる!」
なーんて未来予測が、様々な専門家から出されましたね。
ウィキメディア財団はそんな未来の実現を目指し、多言語でのフリーコンテンツの作成、開発、配布を行っている、国際的な非営利団体です。
この財団が、今回、学術的知識の集大成たる「教科書」の公開に挑むというわけですね。
未来社会の予想図は、こんなところで、着々と実現に向かっているわけです。
-「Wikibooksプロジェクトの目的は、『自由利用』の一語に尽きる。つまり、さまざまな言語を操る世界のさまざまな人々が利用でき、どんな用途であっても複製/再配布/修正が可能なカリキュラムを無料で実現するということだ」-(冒頭記事より)
Wikiのすべてのプロジェクトは、この「どんな用途であっても複製/再配布/修正が可能」というところです。
どうぞご自由にコピー&ペーストしてお使いください、ということですね。
もちろんその際、出典がwikiであることはきちんと書くべきですが、それにしても引用自由というのは、大変便利です。
特に教育現場にとっては、重宝されることでしょう。
今回プロジェクトがスタートするwikibooksは言ってみれば、
世界中の人々が、世界中の人々のために、
ボランティアで作成するロイヤリティ・フリーの教科書なわけです。
私達も管理者として立候補し、オンラインでユーザーのみなさんに信任されれば、誰でもボランティアでこの教科書の作成に関われます。
あらゆる人々の目にさらされながら、情報の編集が繰り返され、
最新の情報が書き加えられ、内容が洗練されてバージョンアップされていく、
それが、wikiの教科書の作られ方です。
すでに、日本語版の教科書も、作られ始めています。
・フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks):日本語版
http://ja.wikibooks.org/wiki/
まだプロジェクトがスタートしたばかりですので、
記述が不足していたり、情報が偏っていたりする部分も非常に多いです。
マイスターも、さっそく高校物理の教科書で「ニュートリノ」の内容を調べようとしましたが、まだ、この部分は書き込みが十分でなく、未完成でした。
高等学校理科 物理II 原子と原子核
出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
書き込みが充実するまで、この部分の情報をこのページから得ることは難しそうです。
しかし、このwikibooksに先駆けてスタートしている百科事典「wikipedia」には、「ニュートリノ」について既にかなりの量の情報が積み上げられています。
wikibooksの「物理学」の目次ページには、こうしたwikipedia(百科事典)や、Wikiquote(引用集)、Wiktionary(単語辞典)へのリンクが紹介されていました(画面右端)。
この横の連携が、インターネットの特性を生かしたwikiプロジェクト全体の強みでしょう。
さっそく、wikipediaで「ニュートリノ」を調べてみたところ、いくつかの専門的な情報が得られました。
ニュートリノ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
このように相互補完的に、情報がダイレクトにリンクされているのがすばらしいですね。
こうしたリンクをたどっていけば、かなりの情報を得ることができるわけです。
いずれは、あらゆる知識や情報について、
百科事典 ⇔ 教科書 ⇔ 引用集 ⇔ 用語辞典
のリンクが張り巡らされることになるでしょう。
インターネットを使って、世界中のあらゆる言語で繰り広げられる、壮大な知識編成の試みです。
結果、今から10年もたてば、
少なくとも現在の初等、中等教育の教科書は、情報の充実度と検索のしやすさではwikibooksに抜かれてしまうんじゃないかと思います。
<何も知らない子どもに、順序だてて知識を教えていく>
という従来の教育スタイルでは、印刷物テキストの補助的な役割にとどまるかもしれませんが、
<社会人が一生、自分のニーズに合わせて学び続ける>
という成人の学習スタイルにおいては、このwikiの教科書が、より多くの機会で活用されるようになるのではないでしょうか。
もちろん、紙のテキストがまったく不要になるということも考えにくいので、
しばらくはそれぞれ、相互補完的な役割を担うことになるのでしょうね。
こうした動きが、学術に与える影響は少なくないと思います。
大学レベルの学びでは、知識や情報の構築作業において、wikiプロジェクトが大いに活用されることでしょう。
30年前の自著を、教科書として学生に売りつけている場合ではありません。
自信のある研究者こそ、積極的にwikiのデータベース、ナレッジベース構築に参画して欲しいと思います。
「wikiのこの分野は、ワタシが書いた。
よくまとまっているから、みんな、これを教科書として使ってくれ。
間違っていると思うところがあったら議論しよう。書き直すから。」
くらいのことを授業で言える教員がいたら、かっこいいですね。
学ぶ側の学生さんも、せっかくですからユーザーとして活用するだけでなく、情報を編集するボランティアスタッフとして参加してみてはいかがでしょうかね。
それもこれからの社会での、学び方の一つだと思います。
たまには、wikibooksで、昔に習ったことを復習してみようかと思い立ったマイスターでした。
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※ただ、このwiki、自然科学についてはかなり有効に活用されると思うのですが、人文科学、特に今話題の「国家の歴史」なんて分野では、果たしてどう機能していくのか、まだなんとも予測できません。
他の国の言語が読める方は、諸外国のwikibooksの記述もご覧になってみると、面白いかもしれませんね。

