研修を終えて:情報のパイプを作るのはいいけれど

昨日は、結局早めにホテルに帰って、「ウォーターボーイズ」を観てしまったマイスターです。

考えてみたらマイスター、「飲む」「食べる」くらいしか、街での遊び方、知りませんでした。

ようやく研修が終わりました。

振り返ってみて思う。

うーん、やっぱり、お金と時間の使い方に、ちょっと疑問が。

結局、時間的には、1/3くらいが研修で、残り2/3は観光でした。

研修の内容の方に期待をしていた方は、がっかりされたかも知れません。

マイスターの他にも、「せっかく準備してきたのに…」とおっしゃっている方がいましたし。

確かに、観光自体は、とても目の行き届いた内容でした。

遠方から来たお客さんを、十分にもてなそう。
しっかり楽しんでいただいて、帰ってもらおう。

そんな心遣いが、随所に感じられる研修でした。
きっと、さぞ苦労されたことでしょう。

実際、マイスターも、大阪を楽しめました。

ただ正直なところ、その「おもてなし」の前提自体が間違っているような感じは、最後の最後まで、ぬぐえませんでした…。
(最後は「吉本新喜劇」を観て、新大阪駅までバスで送ってもらいました)

だって、常識的に考えればおかしいことですよ、これ。
2日目の午前で研修が終わっているのに、2泊3日する必要、ありませんって。

慣例化してしまったために、当事者のみなさんがそのおかしさに気づかなくなってしまったのでしょうかね。

コストも時間も、各大学、そうとう負担しているはずですし。

お世話していただいていてこんなことを言うのも心苦しいのですが、
やはり、おかしいものはおかしいですよっ!

たまーに、新聞などに

「○○省役人の、豪華すぎる海外研修!!
 常識はずれの宿泊費用!
 えっ、こんなレクリエーションのために税金が!?」

みたいな記事が、ちょこーっと載りますよね。
あれも、慣例化してしまったために、当人達だけおかしさに気づいてない例だと思います。

お役人や政治家の研修に税金が使われるのと、今回のケースは、問題の所在がまた違うでしょう。
(細かいことを言うと、大学職員の給料には年間一人あたり、最低300万円以上の公費が人件費補助として投入されているんですがね)

でも、研修の主目的が観光、っていううさんくささは、似てます。

ただ、誤解を招かないように書いておきますと、
全体として感じる疑問は、

「倫理的に許し難い!」

という問題意識から来ているものではない…気がするんです。
だって、公費が投入されてはいますが、大学だって基本的には営利組織ですもんね。

自分達の考えで、お金をどう使ったって、誰も文句は言いませんよね。

マイスター的には、それよりも

「お金と時間の使い方がヘタ」

ってところに、ツッコみたい感じなんです。

いかにリソース(ヒト・モノ・カネ)をうまく使って、最大限の成果を上げるか考えるのがマネジメント、ということになってます。

その「成果を上げる」という点からすると、研修を終えてみて、

「もったいないリソースの使い方をしてしまったあぁぁ!」

という気分なんです。

きっと、

「そんなことはない!
 こうして人脈を築いておくと、お互いに情報を交換したりして、
 何かあった時に助け合えるんだ!
 無駄な投資ではない!」

というご意見もありますよね。
そうしたやり方で業務をこなしてきた年配の方は、よく、こうおっしゃいます。

ライバル校からも、見ならうべき点はならい、自校の欠点は、改善する。
それは、確かに、高等教育全体にとって好ましいことです。
それには、大賛成です!

でも、そのための手法が、「観光」ってのは、いかにも前時代的な気がするんです。

また、得られる「効果」(=組織にとっての実益)のほども、ちょっと疑問です。

大変失礼で申し訳ないのですが、実をいうと、
「研修」部分も、あまり実のある内容ではありませんでした…。

紙にして書いたり、メーリングリストで流せば済むような、事務的な手続きについての説明をしあっただけでした。
しかもその内容のほとんどは、あらかじめ、資料として配付されているものです。

そのため、発言者も質問者もほとんど出ません。
仕方がないから座っている順番に発言してもらう。その繰り返しでした。

これは研修じゃない。
会議でも、ミーティングでもない…。

こんなもったいない時間の使い方をしていて、大丈夫なのかな!?
と、なんだかひとりだけ会場で悶々としてたかも知れません。

結局、あまり利益に直結しない、内々のおつきあいのためにほとんどの時間が費やされた気がして、やっぱりちょっと、すっきりしないのです…。

ちょっと話はズレますが、こんなんだったらいっそ、

「お互いに内々に情報を共有しない方がいいんじゃないか?」

なんて考えてしまいました。

ライバル校の動向を必死に伺って、それ以上の試みを自校で展開する。
ちょっとやそっとじゃ真似できないような取り組みを、自分たちだけで考え、本気で実行する

そういう関係も、大学業界全体を強くするためにはいいんじゃないか?
なんて、思いませんか?

第一、

「こうして仲良くなっておけば、いつか、電話で色々と教えてもらえるようになるだろう」

というのは、見方によっては一種の「甘え」を生み出しやしないでしょうかね?
どうも、健全な競争の緊張感をなくすデメリットの方が、大きいような気がするんですよね。

こう感じるのって、マイスターだけなのかなぁ?

実際、マイスターの大学にも、他大学の試みをパクった結果できた施設や制度がいっぱいあります。
でも残念ながら、今のところまだどれ一つ、有効に機能していません。

マイスターの大学だけではありません。
同じような規模、系統の大学は、みんな、同じような時期に同じような「改革」をしています。
で、思うように成果を上げられないでいます。

マイスターが思うに、それはきっと、
自分たちで必死でデータを集めて、理念から考え出した制度ではなく、
形だけヨソから借りてきたものだから、なんじゃないでしょうか。

きっと、

「あぁ、あそこの大学の○○課長とは仲がいいからさ、
 ちょっと、細かい仕組みなんかについて、個人的に聞いてみるよ」

という程度の意識で実行された「形だけの改革」なんかも多いんだろうな、と思います。
今回のような研修の成果が、裏目に出ちゃってますよね…。

一般企業の取り組みでも、大抵はそうなのですが、
本当に大事な部分は、他者から教えられてできるものではないんですよね、きっと。

情報のパイプは、持っていて悪いと言うことはありませんが、それで「安心」してしまっていると、大学職員は、どんどん自分のアタマを使わないようになってしまうのではないでしょうか。

というわけで、まとめ。

豪華な「観光研修」で仲良くなって、いざというときの人脈やパイプを作っておくのは、必ずしも悪いことではありません。

けど、それで安心し、自分で一からモノを考えない精神構造になってしまっているのは、大いに危険だと思われます。

本当に大学を強くしたいのなら、もっとお金や時間をかけるべきものはたくさんあるのですから、リソース配分をもうちょっとシビアに考えてみませんか?
それが、経営というものなんじゃないのかな、と思うのです。

…なんだ、これだけのことが発見できたのなら、今回の研修も、そう無駄ではなかったってことじゃないですか。

などと、大阪みやげの「お好み焼きせんべい」を食べながら考えたマイスターでした。