マイスターです。
・YouTubeで大学をPRしてみる?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50239750.html
以前の記事で、「YouTube」についてご紹介しました。簡単に言えば、「誰でも無料で好きな動画を自由に投稿・公開できるサイト」です。
元々YouTubeの良さは、個人が好き勝手に、ゲリラ的に映像をアップできること。
最近では、↓こんなコンテンツを見つけました。
★「Departure」
https://www.youtube.com/watch?v=NbWEp13FYJk
★「わからないATC」
https://www.youtube.com/watch?v=MP0ZEPo6e5E
★「空猿」
https://www.youtube.com/watch?v=mEY1dp91SIQ※注:すべて音が出ます
これ、実は全部、航空大学校の学生が作った「手作り学校紹介映像」なんです。でも、飛行機の操縦訓練や、学寮での生活風景、実際に勉強している様子などが伝わってきて、なかなか良くできてます。(撮影にあたっては、職員の許可も得ているようです)
マイスターはこの学校のことをほとんど知らなかったので、この映像で「へぇえ、航空大学校ってこんな感じなんだ」と、イメージが掴めました。
内容は青春ど真ん中な構成で、正直、広報映像として洗練されているとは言えません。しかし手作り感いっぱいで、嘘くささを感じさせないのはいいなと個人的には思えました。
公式の広報映像のほかに、こういう手作り紹介映像がたくさん流通していると、大学生活のイメージが豊かになっていいのではないでしょうか。
と、このように元々YouTubeは、個人が楽しむサイトでした。
しかし今では、このYouTubeをPR活動に利用する企業や組織が増えております。
一例ですが、ちょっと前、アメリカ政府が麻薬撲滅広告をYouTubeへ投稿したことが、話題になりました。既にご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
■「Public Videos // ONDCPstaff」(YouTube)
https://www.youtube.com/profile_videos?user=ONDCPstaff
投稿者の「ONDCP」は、国家薬物取締政策局(Office of National Drug Control Policy)のことです。ONDCPはこれまでも、麻薬撲滅のためにブログやポッドキャストを利用してきた実績があります。麻薬撲滅という目的のために、新メディアを積極的に試しているわけです。「新メディアに飛びつく層と、麻薬に興味を持ってしまう層は重なっている」という判断が働いた結果ではないかと、マイスターは思っています。
このONDCPのように「資金力はないけど社会的な信頼は持っている」という非営利組織はありますよね。実はそんな非営利組織ほど、こういうサービスを使うメリットが大きいのではないでしょうか。
大学も当然、その一つに挙げられます。冒頭でご紹介した記事では、大学のPR活動にYouTubeが使えるのではないか? ということを提案しました。
……なんて考えていたら、PRどころか、授業そのものを動画投稿サイトで配信する大学が出てきてしまいました。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「UCバークレイの授業が無料でGoogle Videoに!!!」(My Life Between Silicon Valley and Japan)
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060928/p1
■「Go to UC for free, on Google Video」(siliconvalley.com)
http://www.siliconvalley.com/mld/siliconvalley/15629527.htm
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『ウェブ進化論』でおなじみ、梅田望夫氏のブログで紹介されていました。
大学、大学院の教育内容はどんどんオープンアクセスになっていく時代で、多くの大学がこの流れに乗ってくるだろうと、UCバークレイの関係者は言う。
CNET Japan連載時代から、MITのオープンコースウェアというプロジェクトに感動し、その後色々な形で進展・推移を報告しつつ、MITのこのプロジェクトが、その初期の志が薄れてやや官僚的なプロジェクトになってしまったことを「ウェブ進化論」の中で少し触れた。
でも高等教育のオープンアクセスという大きな流れに変化はなく、未来はきっと、世界中の誰でもが、勉強したいと思えば世界最高の教育に無償でアクセスできるようになる時代が来る。世界中の図書館の本をスキャンし、有史以来の知へのアクセスを世界中の人に開こうとするグーグル・ブックサーチのプロジェクトも含め、これからが本当に楽しみだ。
(略)
多くの大学が、コース内容をネットで公開するも、一般向けにはアクセス制限を加えている。UCバークレイとGoogle Videoの提携は、その限界を突破する第一歩の試みとして高く評価すべきだと思う。MITを「他山の石」として、徹底的にすべての映像を公開する方向に狂気を発揮してほしいと思う。
(「UCバークレイの授業が無料でGoogle Videoに!!!」(My Life Between Silicon Valley and Japan)より)
マイスターも、「知的好奇心さえあれば誰でも、高等教育レベルの授業や資料に容易にアクセスできる世界になったらいいなぁ」と考えている点は梅田氏と同じですので、上記の文章には共感できました。
もちろん、なんでもかんでもばんばん無料で配信してしまうというのは問題です。
YouTubeの話題が出るときは必ずセットで著作権の問題についても言及されますよね。時間や労力をかけて情報を生み出しても、対価を得られずに無料で消費されてしまうだけなのでは、健全とは言えません。
かといって、ちゃんと議論をして社会を納得させるまで待っていたら、こういった取り組みは実現できないわけです。
これまでネット産業を牽引してきた企業や組織には、そういった数々の社会的な障壁を、勢いとパワーでぶっ飛ばしてきたところも少なくありません。
で、ぶっ飛ばした結果、社会があわてて付いてきて、結果的に世の中が少しずつ変わってきたという面はあるわけです。
ネットを活用する組織はしばしば、「まず、技術の力を駆使して革命的なサービスを実現させてしまい、ユーザーの支持を取り付け、それから社会常識を説得していく」というプロセスで社会を変えていこうとします。
人によって、こういった手法を容認できるかどうかは分かれると思います。
ただいずれにしても、梅田氏が言うような
高等教育のオープンアクセスという大きな流れに変化はなく、未来はきっと、世界中の誰でもが、勉強したいと思えば世界最高の教育に無償でアクセスできるようになる時代が来る。
……というダイナミックな動きはもう止められないところに差しかかってきているように思われます。
もっとも、「高等教育がオープンアクセスになること = 大学のシステムが不要になること」ではありませんから、個人的にはこういう動きについては、あまり心配していません。
ところで、インターネットによる授業の無料配信というと、「オープン・コースウェア」のことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
■日本オープンコースウェア・コンソーシアム(JOCW)
http://www.jocw.jp/index_j.htm
MITが始めたのをきっかけに、日本でもオープンコースウェアの取り組みは広まりつつあります。加盟校も、少しずつですが増えております。
個人的には、映像を配信するだけなら動画投稿サイトの方が、話題性や操作性、アクセスのしやすさといった面で勝っているように思います。
ただ、自分たちでオープンコースウェア用のシステムを構築しておけば、講義資料を配付したり、場合によっては教員に質問したりといったことも行えます。
ですので、
「オープンコースウェアとして授業映像や資料等をアーカイブ化し、それをさらに、必要に応じてpodcastや動画投稿などの様々な手段でも配信する」
というのが現状では一番いいのかな、なんて個人的には思います。
↓UC Berkeleyも、実はそういう形なんですよね。
■「webcast.berkeley | Courses | Schedule」(UC Berkeley)
http://webcast.berkeley.edu/courses/index.php
例えば、オープンコースウェアの授業リストにアクセスするときって、たいてい、
「学部 → 学科 → 授業」
っていう、大学ならではの「学問階層」を順に追う形になってますよね。
一方YouTubeなどでは、動画を閲覧した後、タグなどで関連付けられた類似の動画のリストが表示されますよね。あれはあれで、思わぬ関連映像を見つけられたりします。
どちらも、ユーザーにとってはメリットがあるとマイスターは思うんです。
このように、それぞれのメディアのいいところは享受する形で、試行錯誤しながらあれこれと試していけばいのではないでしょうか。
以上、特に結論も何もありませんが、今日は海外でのちょっとした動きをご紹介しました。
今はまだ小さな動きですが、近い将来に大きなうねりになりそうな気がします。
どんな動きにも対応できるよう、注意しておきたいところですね。
以上、マイスターでした。
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(過去の関連記事)
・『ウェブ進化論』は大学関係者にとっても刺激的だ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50181186.html
・Googleのサービスで、教育関係者もWeb2.0を体験してみよう
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50195017.html