マイスターです。
以前から機会がある度に書かせていただいているのですが、マイスターは、
「本人にその気があれば、自分のペースでいつでも学べる社会が理想だ」
という想いを持っているのです。
(※世の中の全員が学び続けなければならない、という意味ではありません。念のため)
そのためのステージの一つとして、大学にしかできない役割もあるのではないかな、なんて考えています。
しかし現実には、大学がそのための機関になれているとは、まだまだ言えない状況です。そう思う理由は、学費や時間、場所などいたるところにあります。
日本の会社員で、ほぼ定時に帰れるという人は非常に希だと思います。通学制の場合、そもそも授業に通い続けられません。
通信制だとしても、仕事が忙しい時期というのがあるでしょう。時間のある時期は学び、忙しい時期は働く、そんな学び方が、日本では難しいのです。
高校卒業したてのフルタイム学生なら「1年間に3~40単位。それを4回繰り返したら卒業」なんてめども立つでしょうが、仕事をしていると、なかなかそううまくはいきません。順調なときはがんばって多くの授業を履修し単位をもらうことも可能でしょうが、仕事が忙しい時期はゼロ単位なんてことだってあると思います。仕事を持っているとどうしても、長期にわたって在学し続けることになるケースが多くなると思います。
しかし日本ではまだ多くの大学が、学費を学期単位で請求しています。忙しくて2単位しか取れなかった学期でも、通常と変わらない学費を請求されます。また、1単位が足りずに卒業できない場合でも、次学期は学費をフルで払わなければなりません。
「放送大学」はさすが、従量課金制のシステムをとっていますが、放送大学で学べない専門の教育を受けたいと思ったら、なすすべがありません。
(※最近では、仕事を持っている方のための長期在学制度を備える大学も出てきました。大学院修了までに3年かかっても、2年分の学費で済んだりします。ありがたいですね)
こんな状況では「自分のペースでいつでも学べる社会」にはほど遠いなぁと、いつも感じているわけです。
さて、今日の本題はここからです。
■【サイバー大学(3)】 料金体系は? じっくり自分のペースで学べるの?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50269332.html
新しく開学した「サイバー大学」について、以前↑このような記事を書かせていただきました。
サイバー大学の構想を最初に聞いたとき、マイスターは「これだ!」と思いました。冒頭で申し上げたような、それぞれのペースで学びを積み上げられる大学がついにできるのかー! と期待しました。インターネットなら、場所も時間も問いません。
それにネットのオンデマンド配信ならロングテールよろしく、これまではなかなか学べなかった分野の講義を用意することも可能です。うまくすれば、これまでの大学とは違うミッションを持った、とてもユニークな教育機関になるのではないだろうか、そう思ったのです。
そんな風にマイスターは一方的な期待を寄せていたのですが、いざふたを開けてみたら
本学は半期ごとの最低履修単位を15単位と設定しております。半期で最低でも15単位分の授業料(315,000円)をお支払いいただきます。
(「募集要項」(サイバー大学)より)
と募集要項に書いてあったので、実は結構ガッカリしたのです。これじゃ従来の大学と全然変わりません。ブログ記事では、4年間で卒業した場合と6年間で卒業した場合の、学費シミュレーションまでやりましたが、「やっぱり4年間で卒業しないと、学費が跳ね上がる」という結果でした。個人的には期待するところが大きかっただけに、残念でした。
(授業配信サーバーへの負荷が一定時期に偏らないようにするための措置かな、なんて想像しましたが、さてどうだったのでしょうか)
ところが!
本ブログを読んでくださっている方からメールで教えていただいたのですが、どうやらいつの間にか、サイバー大学の学費算定方法が改訂されたらしいのです。
えぇ!と思って見てみると……
本学は単位制であり、授業料は履修される単位数に応じてお支払いいただきます。
原則として半期ごとの最低履修単位を15単位と設定していますが、個々の学びのスタイルに応じて履修単位を設定することができます。
(「募集要項」(サイバー大学)より)
って……ほ、ほんとだ、先ほどご紹介した部分の表記が、確かにいつの間にか変わっている!
しかも、
■「履修と支払いイメージ」(サイバー大学)
http://prep.cyber-u.ac.jp/02_NewEnt/sCreditPattern.aspx
新しいシステムで、学費のシミュレーションした結果が載ってる!!
コレだよコレ、マイスターが見たかったのは!!
ちなみにメールをくださった方によると、学生向けの履修登録案内では、「各学期の最低履修単位数は原則15単位としておりますが、学修に支障をきたすとご自身で判断された場合は、15単位未満でも構いません。」と書かれているそうです。
この方は、念のため大学事務局に口頭での確認を取られたそうなのですが、完全に従量制であるという回答だったとか。
もしかしたらマイスターに限らず、従量制を希望する声がたくさん本部に届いたのかも知れません。インターネットで授業を行うサイバー大学に入学を希望する方には、自分のペースで学びを進めたいという方も多いのではないかと思われますが、そういう方にとっては従量課金制の方が合っているでしょうし。
でも、それに対応して学費の算定方法を変えたということなんだとしたら、大学側の対応のスピードは、ものすごく速いですね。こういうところは従来の大学にはなかなか真似できません。ユーザーの声に反応して行動を起こす感覚の鋭さは、さすが生き馬の目を抜くネット産業のトップを走ってきたソフトバンクグループだと思います。
この急な転換にとまどわれる方もいるかも知れませんが、マイスターは感心します。
一度大学が始まってしまったら、学費制度の抜本的な改定はなかなかできません。先に入学した方との間で、著しい不公平が生じるのは好ましくないからです。
変えるなら、この数ヶ月間がベストのタイミングでした。
これが従来の大学なら、「今さら計画を変更することはできないから、数年やってからまた考えよう」という話になるはずです。でも繰り返しますが、この場合、どう考えても従量制の方が学生にとっては望ましいのです。何年も先送りして、いいことは何もありません。
結果的にはこれで多くの方がより自由に学ぶチャンスを得られたわけで、何よりです。
他にも、感心するところを見つけました。
■「科目等履修生・特修生:募集について」(サイバー大学)
http://www.cyber-u.ac.jp/entrance/nondegree/index.html
↑このページは以前はありませんでした(マイスターは自分でも何か授業を履修してみようかと考えたので、科目等履修生向けの情報を一所懸命探したのです)。
テーマ別・目的別の科目選択例を提示してくれるというのはとてもいいですよね。
本来、科目等履修生を考えている方には、こういったプラン提案型の案内があって良いとマイスターは思います。
フルタイムで学位を目指して学ぶほどではなく、しかしたった一科目だけというのも物足りない……そんな方々のニーズを掘り起こす、うまい案内です。
一般の大学にも「○○スタディーズ」といった名称の学科横断プログラムがありますね。ユーザーの興味に合わせてそれに近いことができるんですよ、とこのページは教えてくれます。「IT」「世界遺産」という学部名称だけではなかなか伝えられないところをカバーしています。
そんなわけで、実は計画発表後も進化を続けていたサイバー大学でした。
マイスターを含め他の大学の皆様も、こうした点の中で見習うべき部分は大いに見習うと良いのではないでしょうか。
以上、マイスターでした。
サイバー大学について調べていたとき,こちらのBlogを何度か訪れました。
今回,slashdot.jpに「サイバー大学の第1期生は516名」を投稿しました。
よろしければご覧になってください。
http://slashdot.jp/it/article.pl?sid=07/05/01/0720219