用語解説:テニュアとは? (終身在職権、Tenure)

「Yジェネレーション」という言葉には自分も入っているのだと思っていましたが、周囲からは強く否定されるマイスターです。
条件的にはギリギリ入っているはずなのに…なぜ? orz

先日ご紹介した村上義紀氏の講演で、「あなたはこれを知っていますか?」といった100問の小テストが配布されました。

自分の大学の女子学生の割合、専任教員の平均年収など、みなさんはパッと答えられるでしょうか?

「エラスムス計画」「ソクラテス計画」、説明できますか?

マイスターは、かなり自分の無知を知りました…。

「一度は見たはずなのに…」とか、「あいまいにしか知らない」という知識が多かったです。
反省し、色々と勉強しなおしているところです。

というわけで自分の勉強の意味も含めて、大学関連用語をたまに紹介していこうかと思います。
ブログで書いたら忘れません。
(以前ドイツの記事を書いたので、テストで「アビトゥーア」はわかりました。マニアックです)

そんなわけで、今日のワードは、「テニュア(終身在職権、Tenure)」です。

tenure
[n] the holding of an office
[v] give a permanent post to. ▶[as adjective tenured] having or denoting such a post.

(Concise Oxford English Dictionaryより)

■「テニュア制度について(案)」文部科学省 大学の教員組織の在り方に関する検討委員会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/008/04010801/002.htm

テニュア(終身在職権、Tenure)制度とは、教員の自由な教育研究活動を保障するため、心身に障害を負い、教育研究活動の継続が不可能になった場合を除いて、終身(定年まで)、当該大学の教員としての身分を保障する制度である。
約9割の大学がテニュア制度を有する。
(上記文科省の報告書より抜粋)

文科省の説明は簡潔でわかりやすいです。

テニュアとは、終身雇用を受ける権利だと考えればいいでしょう。

日本では一般的に、専任教員として雇用されたら、20代からでも自動的に終身雇用に組み入れられます。
それだと、競争が起きない、地位に安住してしまう、研究者として自立しないなどの問題が起きます。

かといって民間と同じように100%市場原理を適用すると、学問の自由が侵害されることがあるわけです。
やりたい研究が政治的な理由で認めてもらえなかったり、お金を集められる人が簡単に教授になったりと、別のモラルハザードを起こす可能性があるのですね。

というわけで、考えられたのが、テニュアの制度です。

研究員として研究を積み、大学に認められると、テニュアがもらえます。

文科省の報告書では、わかりやすくデータと解説がつけられています。
アメリカでは准教授(Associate Professor)あたりからテニュアを受ける研究者が多いようですね。

これはなかなか、よくできた制度だと思います。

日本だと、雇用されたときから、

  教授
   |
   助教授
    |
    専任講師

という体制に組み入れられていることが多いです。
(マイスターが卒業した大学のひとつは、典型的なこの例でした…)

これですと、若い講師は、なかなか自分の研究ができません。
教授のアシスタント的な役割を負わされてしまいがちです。

講師の方もそれで生きていけますから、積極的に激しい競争に飛び込もうという人が増えません。

でも2~30代くらいに、テニュアという超えるべきハードルが設定されていれば、いやでも若い研究者はがんばります。

そうしないと、この先の人生が、保障されないわけですから。

(ノーベル賞受賞者の功績は、若いうちに出したものが多いと言われますね。
その影には、こんな制度の存在もあるのではないかと思います)

一方、研究成果を積み上げ、晴れてテニュアを手にした研究者には、文字通り「学問の自由」を追求できる生活が待っています。

国策に反する大胆な提言や、論争を巻き起こすような試みも、テニュアのおかげで行うことができるわけです。

市場原理と戦う昔からのアカデミックな研究者タイプも、思う存分、学問の自由、独立のために働けます。

自分は定年まで身分が保障されますから、後進の指導にも安心して力を注げます(笑)

最後に、これが上手いと思うのですが、テニュアは雇用は保障しても、給与は保障しません。
さぼっていたら給与が下がることだってあります。

テニュアを獲得するような優秀な研究者ですから、逆に、他大学から高給で引っこ抜かれることだってあります。

アメリカは、給与で人を動かす社会です。
したがってテニュアの制度があっても、人材の流動化を妨げることにはなっていないのですね。
おそらく、若い研究者を、「テニュアをあげるよ」といって引っぱってくることもあるのでしょうね。

文科省文書によると、アメリカとイギリスはテニュア制度が機能しているようですね。

フランスとドイツは日本に近く、定年まで身分が保障されています。
おそらく、国立、私立の大学の比率も関係していると思います。

テニュアが絶対の正解ではないと思いますが、人事戦略の参考の一つとして、知っておくのもいいのではないでしょうか。

今日のワードは、テニュア(終身在職権、Tenure)でした。

1 個のコメント

  • Tenureについての記事を読ませていただきました。とても参考いなりました。ありがとうございます。
    質問なのですが現在外国人にtenureを容認している国立大学はどこがあるかご存知でしょうか?
    突然ですいません