大学の教育・研究内容をもとに進学指導する塾 (読売新聞「教育ルネサンス」で紹介されました)

マイスターです。

既に読んでくださった方も多いかと思いますが、読売新聞にて、私達の取り組みが紹介されました。

【今日の大学関連ニュース】
■「教育ルネサンス:大学選び(3) 教育・研究内容で評価」(読売オンライン)

出会いの場づくりで、行きたい大学をつかませる。
教室に集まった高校3年生約80人が、真剣な表情で読売新聞社が作った「大学の実力」調査の冊子の一覧表に見入る。
予備校「早稲田塾」が10月中旬、東京・池袋校で開いた出願校決定説明会。教壇に立つ講師が表に記された大学別の学習支援策の見方を説明しながら、「勉強をサポートできる大学かどうか必ずチェックを」と呼びかけると、高校生の目は一層、険しくなった。
早稲田塾は10年以上前から、教育・研究内容による大学選びを提唱。一昨年からは「高校生と大学の出会いの場の提供」(相川秀希代表)を目的に、大学と連携し、最先端の研究を体感できる授業も展開する。連携先は立命館アジア太平洋大など9校に増えた。
(上記記事より)

記事では、私のことも取り上げてくださっているようで、恐縮です。

内容の中心になっているのは、早稲田塾で毎年、10月に実施している「出願校決定ガイダンス」。

「さて、これまで色々と準備もしてきましたね。大学のことも知ってきましたね。
各大学の試験日や出願日程も発表されていることだし、最終的な確認も含めて、いつどの大学を受けるか、決めていきましょう」

……ということで、文字通り、出願先を決めるガイダンス。
早稲田塾の高校三年生は、全員必修となっている説明会です。

早稲田塾各校で実施しますが、志望する学部や学系ごとにしっかりシナリオを作り込むので、同じ名称のガイダンスなら、基本的には全校で同じ内容が話されます。

ここでどのような説明をするかによって、本当に塾生の出願先が変わります。
塾生達の出願計画に対し、非常に大きな影響力を持つガイダンスです。

このガイダンス、いわゆる「受験戦略」を伝えるものですが、予備校が行う説明会としては、ちょっと変わっていると思います。
受かりやすいかどうか、だけではなく、それと同時に「行く価値があるかどうか」も話しているからです。

例えば、どんな教授が、どんな研究を行っているのか。
早稲田塾には、こんな教授データベースがありますし、それこそ年中、スタッフが大学教授と話をしていますので、各大学で扱われている学術的なトピックについても情報が蓄積されています。
世間的には難易度が低いとされる大学だが、実はこんな研究チームがいる、なんてことも、この出願校決定ガイダンスの場で伝えます。

あるいは、学部学科名に惑わされるな、なんてことも伝えていきます。
例えば「心理学を学びたい」なんて言っている高校生に、単純に「心理学部」や「心理学科」を勧めるかというと、そんなことはしません。よくよく本人の話を聞いてみると、実は経営学科でマーケティング理論や消費者心理などを学ぶ方が、本人のイメージに近かったりすることだってザラだからです。
学部名や学科名と、そこで学べる内容と、高校生がイメージする学びとが、一致しているとは限らないのです。これは普段から伝えていることですが、最後の最後、出願校決定という山場の部分でも、しつこく伝えます。
(ちなみに最近では、学部名称を変えて受験生受けを良くしよう、なんて考えておられる大学もあるようですが、少なくとも早稲田塾に対してはあまり意味がありません。名前ではなく、内容を見ているからです)

受験戦術だけを伝えるようなことをしては、大学教育はもちろん、将来の日本がダメになる。
そんなわけで、「受験」の一番生々しい部分で、大学の本来の価値を同時に語るというのが早稲田塾のやり方です。

このように、もともと、大学の教育・研究成果を重視した進路指導を行っている早稲田塾ですが、今年からさらに、新たな視点を導入しました。

それが、冒頭の記事でも紹介されている、読売新聞社の「大学の実力」調査の結果です。
以前のブログでも、3回にわたってご紹介させていただきました。

■読売調査「大学の実力」(1):大学の教育方針を知るには、卒業率や退学率の数字が必要
■読売調査「大学の実力」(2):今後は自主的な情報公開が望まれる
■読売調査「大学の実力」(3):報道の後、大学内で何が起きたか?

この調査に関する個人的な考えや意見は、↑これらの記事ですでにお伝えしましたので、ご興味のある方はご覧ください。

早稲田塾は、大学受験の世界ではこういう評価をいただいています。
手前味噌ですが、このランキングが始まった3年前から、総合順位はもとより、「情報の充実度・的確性」で1位の座を譲ったことはありません。

今回は、大学のパンフレットにも載っていない、しかし進学先を知る上で非常に重要な情報であるこれらのデータを、出願校決定ガイダンスの素材として加えました。
早稲田塾の高校3年生およそ5,000人が、読売新聞の「大学の実力」の掲載情報を手にして、出願校を考えたことになります。
そして今後も、可能な限りこうしたデータを活用していきたいと思っています。

マイスターは元々、大学の教務課スタッフでした。
教務という点で言えば、アメリカで浸透している「エンロールメント・マネジメント」という概念が、日本の大学にも取り入れられつつあります。
詳細はまた別の機会にご紹介したいと思いますが、「大学の実力」の記事を見たときに思い浮かんだのは、まさにこの「エンロールメント・マネジメント」でした。
今思えば、「大学の実力」を塾の進路指導に活かそうと考えたのも、そんな教務課的、大学職員的な発想からくるものだったのかもしれません。

ちなみに以前の記事でも書かせていただきましたが、大学が自ら発信しているデータがあるなら、塾生にはそちらを参照させたいです。
実際には、退学率や標準修業年限卒業率といったデータは、学部や学科ごとに大きく違うはず。また、データを集計するタイミングによって、大学ごとに数値が違ってくる可能性だってあります。できるならそうした詳細なデータを、考える材料にさせたいからです。
しかしそこまでいくと、読売新聞が調査する範囲を超えています。だから、大学に期待したいのです。

倉部さんは2年前まで、「偏差値が低い」とされた都内の私大の職員だった。教職員まで劣等感を持つ姿に疑問を持ち、「大学は教育と研究で勝負」と、自分のブログで意見を発信し続けてきた。同塾への転職も、高校生に大学の中身を知ってもらいたいと考えたからだ。「大学選びは、自分の一生を決めることだとわかってほしい」
「教育ルネサンス:大学選び(3) 教育・研究内容で評価」(読売オンライン)記事より)

非常に素晴らしい研究を行っている大学。
真摯に丁寧に、学生を育てている大学。
世の中には、そんな大学がたくさんあります。

ただ、これまでの受験産業、あるいは高校や大学が作り上げてきた「入試難易度(偏差値)」という、たった一つの評価軸を頼りに、少なくない受験生が大学を選んでいるという現実もあります。
それは本来とてもおかしなことですし、また全員にとって、とても不幸なことです。絶対に変えなければいけません。

ただ、当の大学関係者が、「そうは言っても所詮ウチじゃなぁ」とか、「○○大学の改革が成功したのは、○○大学だからだよ。ウチじゃ無理だなぁ」なんてことを思っていたりするのも、ある程度は事実だと思います。
もちろん全員がそうではありませんし、愛校心の強い教職員の方も多いでしょう。が、やはり心のどこかで「そうは言っても越えられない壁があるのでは……」と思っている方は、少なくないと思います。

マイスターは大学で働いていましたから、そのあたりの感覚がちょっとわかります。
「本当はこういった教育がやりたい」とか、「こんな学力を受験生に問いたい」なんて考えていても、「でも受験者が減るから無理か」と却下される現実が、そこかしこにあります。
記事では「教職員まで劣等感を持つ姿」と表現されましたが、さらに言うなら、「教職員が入試難易度を理由に、色々なことをあきらめてしまう姿」です。

だから、塾・予備校の側から提案するのです。

さらに言うと、早稲田塾ではこういった理念で進路指導を行っていますが、例えば世の中の高校の先生が変わらないかぎり、日本全体の現実は変わりません。
だから日々、世の中に対して、一緒に提案してくれる高校や大学を探しています。早稲田塾を起点に、少しずつでも日本全体に影響を与えていければと思うのです。

以上が、元・教務課職員の予備校スタッフとしてマイスターが考えていることです。
コメントでもあるいはメールでも、色々な方からご意見やご感想をいただければ幸いです。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。