バージニア工科大学で、再び銃撃事件が発生

2007年、32人が死亡する銃乱射事件が起きた米国バージニア工科大学にて、再び銃撃事件が発生。
アメリカでは、メディアがこれを大きく報じているようです。



バージニア工科大学は、正式名称「Virginia Polytechnic Institute and State University」。
通称「Virginia Tech」です。

アメリカには、「land-grant university」と呼ばれる大学群が存在します。
農・工および軍事分野の教育研究を行う大学の設立のため、各州政府に連邦政府所有の土地を供与する「モリル・ランドグラント法」の適用を受けている大学のことです。

バージニア工科大学も、そんなland-grant universityのひとつ。
Times Higher Educationの世界大学ランキングでは300位以内にランクされている、評価の高い大学です。

そんな名門だったこの大学ですが、2007年の銃撃事件によって、その名前が一般にも広く知られることになりました。

(過去の関連記事)
■バージニア工科大学で発砲事件 32人が犠牲に

今でも同大のWebサイトには、そのときの追悼ページがあります。

■「We Remember」(Virginia Tech)

マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、1999年にコロンバイン高校で起きた銃乱射事件を扱ったドキュメンタリー映画として有名ですが、アメリカでは、しばしばこのような「School Shootings」が発生します。
その中でも、コロンバイン高校とバージニア工科大学の乱射事件は、多くの犠牲者を生んだ最悪のケースとして知られています。

そんなバージニア工科大学での銃撃事件ということで、メディアも特に大きく報じているのでしょう。
この事件を報じるメディアはいずれも、必ず
「2007年の乱射事件で32名が犠牲となったバージニア工科大学」
……といった紹介の仕方をしています。

2007年に32人が射殺された銃乱射事件があった米バージニア工科大学で8日、再び発砲事件があり警官1人が死亡した。惨劇を思い起こさせる事件の発生で、学生や保護者らにも衝撃が走った。

同大のチャールズ・ステッガー学長は「バージニア工科大学でまた悲劇が起き、普段通りの仕事をこなしていた警官が殺害された。言葉ではわれわれの気持ちを言い表せない」と悲しみをあらわにした。
「米バージニア工科大で悲劇再び、避難学生「恐怖に包まれた」(ロイター)」より)

警察と大学の発表によると、1人は大学の警備にあたっていた警官で構内で撃たれた。もう1人は白人男性で銃創を負って駐車場で死んでいるのが発見された。事件発生後、大学は数時間にわたり閉鎖された。
「米バージニア工科大でまた銃撃、2人死亡-2007年にも惨劇」(Bloomberg)より)

同大のWebサイトTOPページは日本時間12月9日現在、緊急時の情報発信用にレイアウトが変更され、様々な情報を掲載しています。

■Virginia Tech

キャンパス構内での事件ということもあり、大学からメール等で学生の安全を確保するための緊急告知がなされたようです。

2年生のフラー・ホープナーさんは、学校側から「発砲事件発生」との警報メールを受け取ったと語り、その後は「動かなかった。ニュースを1日中見ていた」として、アパートから一歩も外に出なかったと話した。
「米バージニア工科大で悲劇再び、避難学生「恐怖に包まれた」(ロイター)」より)

こうした素早い対応には、前回の反省も活かされているのかも知れません。

2007年の事件では、大学側の対応のまずさが、事件の被害を拡大させてしまったと言われています。

前回は、二度の銃撃のうち、最初の発砲が起きてから、大学が学生達に警告のメールを送信するまでに2時間かかりました。
その上、大学側は特にキャンパス閉鎖などの措置もとらず、授業も通常通り実施。その結果、多くの学生達がそのメールをチェックする頃には、第二の事件が起きていたのです。
最初の事件が起きてからの間に、大学当局が適切な対応を取っていればそれ以上の被害は食い止められたのではないか、と見られています。

また大学側の対応によっては、そもそもこのような事件を起こさせずに済んだかも知れない、という指摘もありました。

■「Report of the Virginia Tech Review Panel(英語)」(Official Site of the Governor of Virginia)

上記は、事件に関するバージニア州調査委員会の報告書です。
これによると、犯人となってしまった学生が以前から異常な行動を見せていたことを大学や警察当局は認知しており、にもかかわらずプライバシー保護を理由に、本人への対応や家族への通報を怠っていたとのことです。
しかし、情報を収集して対応するためのメカニズムが、大学になかったのです。

バージニア工科大学の事件が起きた後、しばらくアメリカでは学校での銃撃事件が相次ぎました。

しかしその中には、適切な対応を行い、被害の拡大を防いだ事例も見られます。
例えば、2007年9月にデラウェア州立大学で起きた発砲事件では、銃声がした深夜、大学のスタッフ達があらゆる手段で情報を発信し、学生寮のドアを叩いて学生を起こしてまわったそうです。

恐怖とパニックに支配される夜のキャンパスで、スタッフや学生達が迅速な行動を取れたのは、バージニア工科大学という前例があったからだと言われています。

今回、不幸にも再び銃撃事件が起きてしまったバージニア工科大学ですが、前回よりもWebサイトTOPページの情報が、整然としているような印象を個人的には受けました。

「Counseling Resources」
「Information for the media」

……といった必要情報がリストされているのはもちろん、
犠牲となった警官の遺族を支援する基金への連絡方法や、
バージニア州警察による公式説明のライブストリーミング映像のリンクなど、
大学「外」の動きでも、事件に関連するものは積極的に知らせていく姿勢が、見て取れます。

事件発生から1日しか経っていない時点での、この情報発信のスピード。
(日本の大学のガバナンス体制では、こうはいかないかもしれません)
こうしたところにも、前回の経験が活かされているのかな、と想像します。

犠牲になった方へ、心から哀悼の意を表します。

犯人とおぼしき遺体が見つかっているようですが、大学内はまさに今も、様々な対応に追われていることでしょう。
一刻も早く、学生と関係者の皆様が、もとの落ち着いた日常を取り戻せることを、お祈りいたします。

以上、バージニア工科大学での、銃撃事件についてでした。