入学金値下げ、将来的に全廃へ 慶應義塾大学

マイスターです。

この2、3月の間、「入学金」に悩んだ受験生は、どのくらいいたでしょうか。

第二志望の大学に合格し、入学金の振り込み期限が迫っている。
期限日までに振り込まないと、入学資格は取り消されてしまう。
しかし、第一志望大学の合格発表はその期限日の後。さて、どうする!? 
……というシチュエーション。

最近は国公立大学との併願をする方などのために、申請すれば手続き期間を延長してくれるような大学も増えていると思いますが、どうにもならないときもあります。
結果的に入学しなかったとしても、一度振り込んだ入学金は、戻ってくることはありません。
昔から、受験生(とその親)にとっての、悩みの種です。

なお以前は、入学金の他、「授業料(学納金)」も、一度振り込んだら戻ってくることはありませんでした。入試要項には、「いったん納入された学納金は理由を問わず返還しない」といった記述がありました(これを「不返還特約」なんて言います)。
しかし、それが変わるきっかけになったのが、2001年4月に施行された消費者契約法。同法では、解約時に不当に高額な違約金を取ることを禁じています。この法律を根拠に、全国の元受験生達が複数の大学に対して学納金返還を求める集団訴訟を起こし、勝訴。
今では3月中に大学に入学辞退の連絡をすれば、学納金は戻ってくるようになりました。

(参考)■「判例検索システム:不当利得返還請求事件:平成17(受)1158」(裁判所)

こうして、より高額な学納金についての心配は要らなくなりましたが、それでも「入学金」は戻ってきません。入学金も決して安くはありませんから、受験生の側にとっては大きな負担になるはずです。

そんな中、こんなニュースを見つけました。

【今日の大学関連ニュース】
■「慶大が入学金40%削減、近く全廃 『優秀な学生集めたい』」(MSN産経ニュース)

慶応大学(東京、安西祐一郎塾長)は21日、平成21年度から入学金を約4割引き下げ体育実習費を廃止するなど学費の抜本見直しを発表した。安西塾長は「国際的に優秀な学生を集めるため、諸外国にない入学金を近く廃止する一歩としたい」と説明。徴収趣旨があいまいとの指摘もある入学金廃止を視野に、世界標準の学費制度で人材を集めるねらい。
文系学部では授業料が引き上げられ、4年間の学費総額はアップするが、奨学金制度の拡充や家賃補助の創設で支援する。
現行34万円の入学金を20万円に引き下げ8000円の体育実習費も廃止する。ただ、文系学部の場合、年間73万円の授業料を78万円に、施設設備費8万円を18万円に引き上げる。在籍基本料6万円を創設し、留学などで休学した場合、施設設備費と、現行の授業料に代わって在籍基本料を払えばよい。
初年度納入金は122万円(20年度比4・3%増)、4年間の納入額は428万円(同17・8%増)となるが、項目を簡素化し、「グローバルな学費体系にした」(安西塾長)。
一方、学生の負担軽減のため、20年度から1人当たり年12万円の家賃補助を開始。1学年当たり約400人、総計約1600人に4または6年間支給する。また、留学生を対象に10億円の奨学基金を創設する。
慶大では現在約870人の留学生を27年度までに1500人に増やしたいとしており、優秀な留学生を集める“切り札”に、との思惑もある。
6年後には約25億円の増収になるが「教育内容などで学生に還元したい」としている。
(上記記事より)

慶應義塾大学が、入学金を大幅に減額。近く、全廃するとの報道です。

でも実は、上記の記事の通り、最終的な学費総額は上がりますから、学生の負担が軽減されるわけではありません。というか、4年間の学費が「17・8%増」だそうですから、結構な幅の値上げです。
ただ、入学金が減り、授業料が増えるというように、内訳が変わるだけです。

しかし入学金が減ることで、確かにわかりやすくはなります。
各国から留学生を集めるのであれば、この方が理解してもらえるのかも知れません。

またこの場合、合格しても、実際に入学しなければ、受験料以外のお金が発生しないわけですから、国内の受験生も、受験しやすくはなるのかも知れません。

でも、結論としては値上げ。
この点については、

慶大は「これまで格段に安かったのを妥当な水準にする」(安西祐一郎塾長)としているが、大学人気が二極化する中、ブランド力を生かした強気の“価格設定”ともいえそうだ。
(「慶大が授業料引き上げ・09年度から」(NIKKEI NET)記事より)

……と報じているメディアもあります。
むむぅ。

「6年後には約25億円の増収になるが『教育内容などで学生に還元したい』としている。」と、ひとつめの記事にはあります。
どんな風に教育内容が良くなっていくのか、それによって、今回の学費変更の評価が決まってくるかも知れません。

あと、「入学金ゼロ」というのは、先に申し上げた通り、受験生にとっては魅力に映るかも知れません。
となると今後、他の大学がこの動きに追随する可能性があります。
大学への入学金というのは、賃貸アパートの「敷金、礼金」と同じで、どういう理由で発生するのか分からない、日本独特の習慣とされてきましたが、これから少しずつ無くなっていくのかも知れません。

ただ、もしそうなると、入学金の収入が財務上の割合として高いような大学では、入学金の廃止は結構な減益につながります。その場合、その分をどのような形で埋めるかが、大学の経営戦略になるのでしょう。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。