津田塾大学にて、学生の皆様に講演をさせていただきました。
タイトルは、
「学力」ってなんだろう?〜大学を取り巻く現状から考える〜
です。
1年生を中心に、多くの学生さんに受講していただきました。
今回の講演は、津田塾大学の公開講座「総合」の一コマとして実施されたものです。
■「『総合2011』 現代の危機〜みつめる、みなおす、みはらす〜」(津田塾大学)
この「総合」は、単位が出る正規の授業ですが、一般の方々にも公開されています。
ですので今回も、津田塾大学の学生の皆さんだけでなく、様々な年代の方にお越しいただきました。
この「総合」、実は大きな特徴があります。
毎回、様々な講師を学外から呼んで行う、オムニバス形式の授業なのですが、
講師の選定から、講師との交渉・連絡、授業までの準備、当日の司会まで、
すべて学生が運営しているのです。
今回の、私の回を担当してくださったのは、なんと1年生の方でした。
担当してくださった学生さんは非常に優秀で、心配りも素晴らしく、様々なご案内も非常に親切・丁寧でした。
自分が大学生のときには、こんなことはできなかったなぁ……と感心させられることが何度もありました。
講義依頼のご連絡をいただいてから、当日の講義が終わるまで一切、
学生さん以外の方とはやりとりがありませんでした。
ですので、先生方や職員の方は、必要な際のアドバイザー役に徹しておられるのだと思います。
講義の後に伺ったら、先輩達からの、ノウハウなどの継承もあるようでした。
入学直後から、「自分たちが学ぶべきことは何か」を考えさせ、
運営の責任を委ねて、自分たちで取り組ませる。
大学教育のひとつのあり方として、非常に素晴らしいと思います。
しかもこの「総合」、30年前から続いているそうです。
初年次教育をはじめ、大学の教育は以前よりもきめ細かく、
よりケアの行き届いたものになってきています。
大学への進学率が上がり、大学がユニバーサル化した今、それは必要ですし、正しいことです。
いま必要な教育は何かと考え、そういう教育をされている大学は、素晴らしいと思います。
ただし、色々な事例を見ていると、たまに思います。
学生を「消費者」として扱ってしまうのは、あまり良いことではないんだよなぁ、と。
もし、大学生が昔と比べて変わってしまったのだとしたら、
一般に言われるような、ゆとり教育による「学力の低下」などが原因なのではなく、
生まれてから社会に出るまで、社会から「消費者」として扱われてしまった結果なんじゃないかと
私はいつも感じているので、そんなことをたまに思うのです。
そんなわけで今回、1年生に授業のプロデュースをさせる「総合」の取り組みに触れて、
「あぁ、この方法は素晴らしいなぁ」と感じた次第です。
特に運営に関わった学生は、非常に多くのことを学べるでしょう。
他の大学でも、実験的にこうした取り組みをされてみてはいかがでしょうか。
あらゆる大学にとって、参考になる授業だと私は思いました。
ところで高校生の教育を担当しているときにも、似たような驚きを感じることはしばしばありました。
「お客様」ではなく、「物事を起こす主体」として、生徒達に責任あるミッションを担わせると、
意外と、大学生や大人と同じようにこなせてしまう、といったことです。
そういうときほど、彼らはこちらの想像以上に、大きな成長を遂げていました。
「まだ高校生なのだから」、とか、「1年生には、まずこれを与えてあげよう」とか考える発想が、
生徒や学生を「消費者」にしてしまっているかもしれません。
自分も含め、教育に関わる人ほど、注意しないといけないな、と思います。
以上、津田塾大学で行った講義について、でした。